当記事は、RPイベントのセッションを元に、
ストーリー風に物語を書き起こしたリプレイ兼、RPストーリーです。
苦手な方はご注意ください!
https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/12662472/blog/4686470/参加者
■参加者様:
Girouettaut Laurent(ヒュルベルト)
T'latte Tia(三つ凪の子),
Taniha Molkoh(カノ)
また、ver5.xシリーズのストーリー内容を含みますので、5.xパッチの上のストーリーが未プレイの場合はネタバレの可能性がございます、ご注意願います。
------------------------
前回 「……? やはり、とは…?」
「いや、流星騒ぎ以降、色々な目撃情報が出ていてね。 今の話でちょっと確信が持てた所さ」
ミツナギが怪訝な表情でこちらを見ていた。
私はと言えば、罪喰いのその名前の由来を思い出していた。
『傲慢』
奢り昂り、人を見下すこと。
この罪喰いはミツナギの話にも関係ある、"とある性質"から、そう呼ばれることになった。
――傲慢といえば、かつて、光の氾濫が起きた時、「光の戦士」を大罪人とした、光曜教の人々が言ったそうだ。
「闇を滅ぼすことが出来ると思い上がった、その傲慢が神のお怒りに触れたのだ」と。
そして罪喰いがその罪を喰いに現れたのだ、と。
(光の戦士、か)
先日の流星騒ぎ以降、「流星から予兆を見る力を得た」という人々が、こぞってこの世界を復興させるため、旅に出ている。
一部では彼らを「冒険者」と呼んで、重宝しているらしい。
そういえば、『七罪』の目撃情報が急に増えたのは、件の流星騒ぎの後である。
――先の逸話とこの罪喰いに直接の関係があるわけではなさそうだが。
特にこの『傲慢』は、とある事情から非常に目立つ存在であるため、各所で目撃されていた。
私は二人に、四使徒が現れて以降、七罪が姿を眩ませていたこと。
最近になって、その動きが活発になったことを伝えた。
「……どうして、今になって現れたのでしょう……」
ミツナギは考え込んだ。
――あるいは、自分たちが見たという、罪喰いの事を思い出しているのかもしれない。
「みんなたびにでた。だからかも」
と、ヒュルベルトがぽそり、と口を開いた。
「……旅に出た」
私はその言葉に妙に感じるところがあった。
『光の戦士』に憧れて、大勢の人間がノルヴラント中を駆けまわっている。
「潜んでいた罪喰いが、何か刺激されて、動き出したのか……」
あるいは餌が増えたからか。
鋭い所を、ヒュルベルトは突いたのかも知れなかった。
「光の戦士を目指す旅人の母数が増えたから…」
ミツナギも、あり得るかもしれない、といった表情で考え込んでいる。
「ぼすう…うん、ミツナギのそれ。たぶん」
ヒュルベルトは、『母数』という言葉自体は知らなかったのかもしれないが、ミツナギの言わんとする意図を理解したようだ。
なんとなく、二人の付き合いの長さや信頼関係が感じられる。
「……一つの可能性としてはあるな、好都合かも」
私はボソッと、と呟いた。
「こうつごう」
不思議な顔でヒュルベルトが私の顔を覗き込んで来た――ように見えた。
「ふふ」
彼は、私の言葉の意図は理解しているのだろうか。
すると考え込んでいたミツナギを口を開いた。
「何かに刺激されて……というのは放っておいていいものでしょうか。マリカの大井戸みたいに奥底にいてもあれだけ周囲が”罪喰いの巣”になっていたのに」
――罪喰いの巣。
「マリカの大井戸が罪喰いの巣になっていたと?」
私はその言葉を聞き返した。
「……あ、はい、辺りが一面真っ白になっていて…」
私は、先日の『虚飾』討伐の事を思い出していた。
廃棄された大灯台の中は、『虚飾』の強い光で満たされていた。
クリスタルは変質し、周囲の生物たちも凶暴化し、挙句、人の亡骸がその強い光の力で『罪喰いもどき』にされていた。
「はぐれ罪喰いは”基本的”に、そう呼ばれるだけあって、他の罪喰いと行動は共にしないんだ……だが、その強い力が周囲の生き物を罪喰いに変える事はある」
そう”基本的”には、だが。
「もし、その時の罪喰いが、そうだとしたら……強力な罪喰いであるのは間違いないね」
「……もし街の近くにでも来てしまったら……」
ミツナギがこちらを見る。
答えは自明だ。
ただでは、すまないだろう。
「実はこの間、七罪と思わしき罪喰いが見つかってね、その討伐に行ったんだ……君たちの見た罪喰いと同じ性質を持っていたよ」
「………討伐は、できたんですか?」
「なんとか討伐には成功したよ、七罪ではなかったが、かつてユールモア軍に多大な損害を出したやつだった」
私は、ミツナギに言った。
「……お強いんですね、シドゥルファスさん」
彼はそう返した。
その言葉には「自分たちには無理では無いか」という不安と、「自分たちも同じように出来るのではないか」という希望が入り混じっているように聞こえた。
「いく? だめ?」
「 ………行きたいですか、ヒュルベルト」
ヒュルベルトは、既に決めている様だ。
「うん。行ったら退治できる。ひかりのせんしになれる」
――光の戦士。
意外な事をヒュルベルトが言った。
「……そう、ですよね ………人の助けになるのが光の戦士…ですよね」
ミツナギもそれに返す。
そうか、彼らもまた、ここから旅立った多くの人と同じく、『光の戦士』になりたいのか。
「やっつけたら、喜ぶ?」
「……被害が出る前に…食い止めないと。…光の戦士なら…やり遂げないと。」
ぎゃはははは。
その時、頭上で声が聞こえた。
ユル=ケンが姿を消したまま大笑いしていた。
声も、私以外には聞こえないようにして。
『いいーじゃねえの! 俺様気に入ったぜ! こんなにイカした連中、他にないって、こいつらにしょうぜ! 万が一おっちんでも面白いしなぁーぎゃははは』
ふふ。
そうだね、私もそう思うよ、何故だか、心が昂るんだ、ユル=ケン。
私もまた、彼らに感じているものがあった。
彼らならば――彼らもまた――罪喰いを倒す私の武器になってくれるかもしれない。
ヒュルベルトの決意に促されつつあったミツナギに、最後の一押しをする為、私はこう付け加えた。
「夜が戻って以来、ヤツらの力も以前の様に無尽ではないという噂がある」
それは事実だった。
私は『虚飾』との戦いを思い出す。
ロストバン、ゴーシュ、レバット。
いずれも手練れだったが、ユールモア軍を恐怖に陥れたはぐれ罪喰いに、私たちの剣は思った以上に、確かに通じていた。
「先ほどの強力な罪喰いと戦ったとき、私は仲間と一緒だった。 今回だって私一人では無理だが、協力すれば倒せない相手では無い筈だ」
ミツナギの口元が僅かに綻んだ気がした。
そして、ヒュルベルトもまた、頬を緩めていた。
「周囲の生き物を罪喰いに変えて周りの環境も変化させていた……それはもしかしたらね、力を保つ為かもしれない」
かつて、”無尽の光”が世界を覆っていた頃の力を取り戻す為、その巣を光で満たす。
そして力を蓄える。
それが『虚飾』と戦い、その巣を見ることで私が得た確証だった。
つまりは、早く倒さなければ、七罪はどんどん力を取り戻すだろう。
急がねばならなかった。
だから、
「”逆に言えば”そうしなければならないほど、力が衰えている可能性がある」
私は誘惑した。
目の前の二人を。
「じゃ、やっつけよう」
ヒュルベルトが、ミツナギ言った。
ミツナギも、覚悟を決めたようだった。
ぎゃははは。
ユル=ケンがひときわ満足げに笑った。
「光の戦士、か……ふふ、 私もフッブートの騎士の末裔」
我ながら少し芝居が掛かり過ぎているかもしれない、だが――。
「罪喰いにおびえる人をこれ以上見ていられない」
七罪を倒せるならば、彼らの物語に花を添える者となろう。
私はマントを翻して言った。
だが、
「ふっぶーと、知ってる。たかい金だ」
そんな私言葉を意に介さず――本当に意に介してないのかはわからないが、ヒュルベルトはそんな事を言った。
「あはは」
私は自分が滑稽に思えて、思わず笑ってしまった。
「光の戦士になったらきっといっぱいもらえる」
それならば、と私は懐に仕舞い込んでいたあるものを出した。
「ほら」
私が差し出したものは、今は亡き祖先の故郷で流通していたという数枚の――フッブート金貨だった。
先回の『虚飾』討伐の報酬だ。
それを見たミツナギは目をまん丸にしていた。
「ひえっ…フッブート金貨なんて初めて見ました」
「ご先祖サマの使っていた金貨だと思うと、ふふ、なんだかありがたみが出るよね」
私はそれを仕舞い込むと「今回もユールモア政府から、同じ報酬が約束されてるよ」と付け加えた。
金貨という富もまた、光の戦士と言う名声と物語と共に彼らのものだ。
富と、名声と、力と、自由と。
旅に生きる者がそれを不要とすることは無い筈だ。
「ミツナギ、やった。おかねもち」
ヒュルベルトは笑顔で言った。
「……さすがユールモア…、……報酬、の為に受けるわけではないですけど…」
ミツナギはヒュルベルトをちらりと見た。
「……報酬、も大事ですよね…、…日々のご飯の為にも」
欲望、ではない。
私が二人に差し出したものは、夢だった。
「ひかりのせんし、なるといいことたくさん、おわったらユールモアであそぼう」
”ささやかな夢”は、より二人を後押しするはずだ。
するとミツナギが
「……シドゥルファスさんも、その、ユールモアの方から依頼を受けて罪喰いの情報を集めていらっしゃるのですか?」
「ああ?」
「……光の戦士になったらユールモアにも入れてもらえるのでしょうか…?」
私にそう質問した。
「ユールモアに?」
「入れないの?だってひかりのせんしなのに」
不思議そうにヒュルベルトが言った。
「……なかなか一般の旅人が入るのも難しいと以前は聞いていたので」
そうか、確かに私が堂々と入れるようになったのも極々最近の事だ。
彼らが事情知らぬのも当然。
「あそこは天国だって聞いた」
楽しそうにヒュルベルトが言った。
童子の様な顔にも、私には見えた気がした。
「……今なら、お金さえあれば幾らでも入れると思う」
今のユールモアは自由都市になっていた。
他国の人々も受け入れるし、新しい取り組みが始まっている。
だが、元々が富豪が集まって生まれた国、経済もまた、その価値観から始まっている。
贅沢を覚えた人々がいきなり質素倹約というわけにもいかず、今はユールモア元首代理が必死に頑張っている処だろう。
「光の戦士になれば、いくらでも自由に入り放題さ、きっとね」
「だって。ミツナギ」
ヒュルベルトが笑顔になった。
「…そうですね、罪喰いを倒せば、きっとユールモアの人もヒュルベルトのことを知ってくれる…」
ミツナギは頷いた。
「……? ミツナギのことも、だ」
そんなミツナギに、ヒュルベルトは不思議そうな顔で言った。
決まりだね。
「なら……よければ私と一緒に、七罪の捜索、そして討伐を行なってくれないか?」
私は、二人に最後の問いかけをした。
「……もし、はぐれ罪喰いを共に倒すことができれば、その時はシドゥルファスさんの名だって知れ渡ることになると思いますし」
名か……。
「考えた事も無かったけど、ふふ、それなら」
私は、眼帯に覆われてない右目を閉じた。
暗闇の中に浮かび上がるのは、あの人の顔。
「亡くなった姉も喜んでくれるかな」
私は眼を開けて破顔した
「……お姉さん亡くされていたのですね……罪喰いに…でしょうか」
「ふふ、まあね、よくある話だよ」
「うん、よくある」
あっけらかんとした笑顔で、ヒュルベルトは頷いた。
「ヒュ、ヒュルベルト……」
ミツナギが流石に言葉に窮する。
またも不思議そうな顔でミツナギを見るヒュルベルト。
ミツナギは気まずそうに咳払いをした。
ふふ、いいさ、本当に良くある話だ……。
だから
「姉の為にも、がんばらないとね……」
私にも、戦う理由がある。
二人にそう示すのは、悪い事ではない。
「……はぐれ罪喰い討伐、お受けしますか?ヒュルベルト…俺たちと、シドゥルファスさんの名の為にも」
最後の確認を、ミツナギがヒュルベルトに行う。
「うん、うん。受けたい。やっつける」
即決だった。
「……はい。 ……シドゥルファスさん、どうか俺たちも討伐に同行させてください」
決まりだ。
――こうして、私たち達は、傲慢の罪喰いに挑むことになった。
---------------
ヒュルベルトが剣士である事は知っていた。
ミツナギには術の心得があった。
だが。
「俺、癒しの術があまり得意ではなくて…、…どなたか、癒し手をもう一人雇っていただけると……」
ミツナギがそういった。
「そうだね、私もいくらか治癒魔法は使えるがそうなると攻め手が欠ける、あと一人……癒し手か補充の人員を探すのが賢明だろうね」
「……そうですね、はぐれ罪喰いだけじゃない、そこに向かうまでにも怪我をすることだってあるでしょうから…」
「分かった、そちらは考えるとしよう……それからヒュルベルトも私も大剣の使い手だが、罪喰いの巣となると乱戦になると思う」
私はヒュルベルトの方をちらりとみた、ヒュルベルトはまた菓子を口に放り投げる事に夢中になっていた。
「大剣二人では、距離を取って戦うことになる、些か具合が悪いかな? 私は片手剣の心得もあるが……」
「うん、うん。俺も細い剣に変えれる」
「……え、そうなのですか?ヒュルベルト」
ミツナギが驚いた声を出した。
「うん、うん。大きい方が安心だけど」
「こ、こんなに長いこと一緒にいたのに知りませんでした……」
ミツナギはちょっぴり落ち込んでいるようだった。
「うん、言ってないもの」
また、けろりとした顔でヒュルベルトは言った。
「あはは、それじゃあ、お二人は……アム・アレーンの時もそうだったけど……ずっと一緒に旅を?」
私はお茶を淹れなおし、菓子の追加をサイエラに注文しながら言った。
「うん、うん。ずっと一緒。これからも」
「…あ、はい。…仲間ですから。」
「うふふ、いいなあ」
なかま、うんうんッ。トテモイイな。 私には……縁遠いモノだ。
だが、悪い気分じゃない、私は二人に紅茶を勧めた。
「ふふ……でもシドゥルファスさんにもいるんですよね?オトモダチが」
「うん、とっても素敵なオトモダチなんだ、今度彼が許してくれたら紹介するよ とっても照れ屋さんでねェ」
私は気配を頭上に感じながら言った。
「彼……男の方なのですね、はい、……あの、その方は癒し手だったりはしない…のですか?」
ミツナギが、思わぬことを言った。
ああ、そうか、それも選択肢としては有り、なのか。
「そうだね、癒しの術は使えた筈だ、お願いしてみようかな!」
いいアイデアだ、ユル=ケンは、妖精流の治癒魔法が使えたはず。
私はふと、ヒュルベルトの方を見た。
ビーバーのクーケを抱えながら、運ばれてきたお菓子を1つ取ると口に投げ入れた。
今度はちゃんと口に収まっていた。
気を良くした私も、一つお菓子を手に取って真似してみた――が。
お菓子は口に入る――瞬間消えたように見えた。
『ふっざけんなよ、そこまでやるギリはねえぞ!!』
何もない空間から声がした。
声は、ミツナギとヒュルベルト、そしてクーケにも聞こえたようだ。
ああ、やっぱりまだ居たんだね、ユル=ケン。
きらりと、妖精の鱗粉を散らして、ユル=ケンが姿を現した。
「私のオトモダチ、ピクシーのユル=ケンだよ」
「ゆるけん」
妖精郷にいるジャイアントビーバーを連れているだけあって、二人はさほど驚かなかった。
それにしても、珍しい事もあるものだ。
人の前に姿を現すのを面倒くさがる彼が、こうして現れるなんて。
『契約外の事は俺は絶対やらないからな……!』
ユル=ケンはぷりぷりと怒って、私に苦言を言った。
そうか、お怒りだったのか、そういえばユル=ケンは自分のやりたがらない事は絶対やらない主義だった。
『まあ、面白いからついいくのはいいけど……おい、くるな、このっ』
と、ご機嫌ななめのユル=ケンだったが、何かにおびえるように高さを取った。
見るとジャイアントビーバーのクーケが嬉しそうにユル=ケンに駆け寄っていた。
「ともだちになりましょうって言ってる」
ガウガウ、と鳴き声を上げるビーバーの言葉を、ヒュルベルトが代弁した。
「あ、素敵です。大きさも丁度近いですし、クーケさんがこんなに嬉しそうにしているのを久しぶりに見た気がします」
クーケはじわじわとユル=ケンににじり寄り、ユル=ケンはそれから逃げ回っていた。
「クーケとオトモダチになればいいじゃないか」
『うるせーこのアンポンタン! うわわ、俺は契約の……それ以上でもそれ以下でもやらないからな!』
クーケの追従にこれ以上の苦言を諦めたのか、ユル=ケンはそれだけ告げるとどこかに飛んで行ってしまった。
「ざんねん…」
「……癒し手は別に探さないといけませんかね……」
これ以上、ユル=ケンを頼るのは難しそうだった。
私は二人に、癒し手は別に集めることを約束すると、その日は一旦別れた。
数日後、揺らめく炎が、私たちの周りを飛んでいたと、酔客が奇妙な事を教えてくれた。
そして、その後すぐに、同行者は見つかった。
(続)