当記事は、RPイベントのセッションを元に、
ストーリー風に物語を書き起こしたリプレイ兼、RPストーリーです。
苦手な方はご注意ください!
https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/12662472/blog/4686470/参加者
■参加者様:
Girouettaut Laurent(ヒュルベルト)
T'latte Tia(三つ凪の子),
Taniha Molkoh(カノ)
また、ver5.xシリーズのストーリー内容を含みますので、5.xパッチの上のストーリーが未プレイの場合はネタバレの可能性がございます、ご注意願います。
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首の無い、剛腕の巨人。
他の罪喰いの姿は見えない。
これが残す一体、七罪を守る最後のナイト、というわけだ。
巨人型罪喰いの力は、まさに圧倒的だった。
山ほどもある巨体から振り下ろされる凄まじい腕力。
拳が落ちるたびに、城が崩れる勢いだった。
だが、それに怯みもせず、ヒュルベルトが、果敢に前進し、罪喰いに斬撃を加えていた。
いつもと変わらぬ表情で、曲刀を振い続ける。
刻まれた斬撃は、巨体を崩すまでは行かないが、罪喰いの動きを止める事には成功していた。
そんなヒュルベルトを排除しようとしたのか、罪喰いは今一度大きく腕を上げて、一気に腕を振り降ろす。
――だが、それをミツナギが許さなかった。
ミツナギの放った魔法が、ヒュルベルトめがけて落ちてくる罪喰いの腕を焼いた。
巨人型罪喰いがのけぞって、腕の力がいったん解かれる。
だが、今度は両の腕を一気に突き出してきた。
ミツナギを掴んで、押しつぶそうとしているようだった。
(させないさ)
そうさせまいと、私が咎人の剣で、それを受けた。
彼らが、英雄候補だというならば、私もまた、騎士の末裔なのだ。
彼らの踏み出す足が、私にまで力を与えていた。
『
我が手に宿りし天の火よ────』
『
祈りと呪いの下、一点で爆ぜよ!“ステラ・エクスプロージョン”!!』
カノの魔法を受けて、再び奴の身体が後退する。
その隙を逃さず、私とヒュルベルトが、左右の腕片方ずつに向かい、奴に剣撃を浴びせた。
罪喰いの腕に、肩に、深く剣は突き刺さり、やがてそれを斬り裂いた。
そこめがけて、ミツナギが魔法を放ち、傷を深くする。
罪喰いは、やがて、受けたダメージに体が保てなくなったのか、光を放ち、細かい破片となって、バラバラに砕け始めた。
しかし、この罪喰いは最後に妙な行動に出た。
両の腕を広げて、この先には絶対行かせないといわんばかりに――立ちふさがって、それから崩れていった。……ここの罪喰いは、本当に妙な物ばかりだ。
「…崩れた」
バラバラになった罪喰いの身体は、元の階段状の建物には戻らなかった。
だが、階段代わりになる道を形成していた。
私達は確かめるように、それを踏みしめ、前に進む。
「……七罪が…、…本当に?」
ミツナギが息をのむ。
「……人…?」
そんな彼が一番最初に、その姿を見つけた。
「……いいや!あの羽……!」
カノもまた、その姿を確認する。
私もその姿を見つけた。
道中襲い掛かってきた八枚羽の個体だった。
改めて確認すると、それは、ユールモア政府からの情報通りの姿だった。
奴こそが、「七罪」の一体。
大罪喰いが如く振る舞う事から、その名「傲慢」と呼ばれた個体に相違なかった。奴はじっとこちらを見ていた。
罪喰いたちの城の最奥で、まるで、待ち構えるように――。
「……今までのとは違いそうだ……」
私の心が震えている。
かつてないほどに。
やっと、やっと……始められるんだね。
姉さん。
ふふふふ。
「ははははは」
私は笑いが零れていた。
ここから全てが始まる。
『ぎゃーはっはは』
私を見て、ユル=ケンも笑う。
楽しそうだ。
でも、これからもっと楽しくなるよ。
『だといいけど、震えてるぞソイツ』
ユル=ケンが私だけに聞こえるように言う。
ちらり、とユル=ケンが指さす方を見ると、ミツナギが震える手を強く握り込んでいた。
周りに、気付かれないようにするためだろうか。
「うん、やっつければ光の戦士…、…?」
ヒュルベルトは、ミツナギと対照的に、相変わらず表情を変えていなかった。
それどころか、その瞳は出会った頃よりも力が漲っているように見えた。
『そうそう、勝てば英雄に近づけるぜぇ、お前らも頑張れよ』
ユル=ケンは笑みを浮かべ、ヒュルベルトやミツナギの周囲を飛び回りながら言った。
カノが不快そうにその様を見ている。
「……そうですね、光の戦士への…第一歩です」
だが、ミツナギはそんなユル=ケンの言葉にうなずいて見せた。
「うん、うん」
ヒュルベルトも深く頷く。
勝つか負けるか、それはわからない、だが勝利を信じて。
「死んだら死んだ。それだけ」
彼は大胆に、そして彼もまた、”傲慢”に。
英雄となる為の一戦を始めようとしていた。
『ぎゃははは』
――面白い。
と、ユル=ケンは私に耳打ちした。
ふふ、そうだね、彼らは面白い。
「…ヒュルベルト」
ミツナギは、ヒュルベルトの覚悟に何か思う所があったのか、
「約束、忘れないでくださいね。…がんばりましょう」
と微笑みながら言った。
生き急ぐような事だけはしないでくれ、という意味だろう。
「うん。危なくなったらエーテル飲んでデジョン」
ヒュルベルトも以前語っていた”約束”で返していた。
……ふふ、そうか、彼らはこうして色々乗り越えてきたのだな。
「……ふん。羽虫め、見世物ではないが、まあ良い」
カノは二人に甘い言葉を囁く、ユル=ケンを鋭い目つきで見ていたが、
「ああ。……ミツナギよ」
とミツナギの方を振り向き、
「おそろしくてどうしようもなくなったら、ゆっくりと、一人ずつ目を見て、皆の名前を呼びなさい」
と言った。
まだ少し震えていたミツナギだったが、カノの言葉を聞いて、呼吸を整えているようだった。
「……俺からのとっておきのおまじないだ」
優し気な目で、カノがミツナギに微笑んだ。
「…………」
ミツナギは、しばらくじっとカノを見つめていたが、
「……大丈夫です。…こわくありませんから」
と、やがて穏やかな表情で返答した。
その声は、もう震えていない。
「ふふ。そうだな……何にも怖くないぞ」
「うん、ミツナギは強いから怖くない」
ヒュルベルトも満足げに言った。
オマジナイ、か。
「姉さんみたいだ……」
私は思わず言った。
「はは!」
カノがそれを聞いて笑った。
姉も良くそうしてくれたのだ、私が恐ろしい時、まじないをかけてくれた。
それならば。
「いくよ、私も怖くない……」
そう、君達がそうであるように、私にも姉が付いている。
「うん」
「いいだろう!叩き込んでみせろ!!」
神々しい光を放つ、”傲慢”。
その手には、まるで司祭が持つような錫杖が握られていた。
「てぇーいッ!!」
私は剣を抜いて、七罪”傲慢”へと切りかかった。
ガンッ!
(!?)
受け止めた!
私の剣を、罪喰いが!
罪喰いは錫杖で剣を払うと、私をつま先で蹴りあげて吹き飛ばした。
「っ!?」
予想外の反撃に、白亜の床に転がされる私。
カノとヒュルベルトが直ぐに支えてくれた。
(……さきほどの巨体の罪喰いよりずっと小さいのに、力は同等か、それ以上か?)
――どうやら骨が折れているようだったが、カノの治癒魔法がすぐに動けるようにしてくれた。
七罪の力、恐るべしか。
再度、”傲慢”が、私に向けて錫杖を振ってきた。
が、罪喰いの背に突如燃え盛る炎が現れる。
ミツナギが魔法を放ったのだ。
「……」
”傲慢”は私への攻撃をやめて、周囲を見渡した。
その間、表情は変えず、こちらを上から見下ろすのみだ。
(……気に入らないな、罪喰いと言えど)
私の胸を不快感が埋めていく。
なんとしても……私は君を引きずり下ろす。
私達は”傲慢”の四方を囲んだ。
同時に攻撃し、奴を制する。
(さあ、どう出る?)
だが、”傲慢は”杖を天に掲げると――。
「……なに!!」
カノが叫んだ。
「!?」
私もその力の正体に気付き、すぐさま身を伏せる。
『
我が加護よ、火影のごとく注げ!』
カノが、結界魔法を張った。
直後、凄まじい閃光と衝撃波が、私達の身体を吹き飛ばした。「ぐぁ……!」
カノが結界を張ってくれたおかげで、何とか凌ぎ切るも、その力は私たちの体勢を一気に崩した。
”傲慢”が、その隙に空に舞う。
カノが”傲慢”を目で追う。
「逃げた……?」
しかし、そのはずもない。
カノはすぐに奴の姿を見つけた。
「……今度はなんだ!?」
その姿を見て私達は驚嘆する。
ドン・ヴァウスリーの残した神殿のような建物を前に、”傲慢”は幾つもの”光の輪”を作っていた。
――あれは、危険だ。
私達は気が付いていた。
そのリングの放つ光の強さ――空気を震わせる魔力の振動。
アレは、今までの攻撃の比では無い。
”傲慢”は、これまでの僅かな戦いの合間にも凄まじい力の差を見せつけてきた。
ならば、アレは――。
(防ぎ、きれるのか……!)
私は、その力の差に、目を見開く。
ああ、七罪に勝とうだなんて、私は――愚かだったのか?
そんな考えまで、一瞬よぎる。
だが。
(いやだ、姉さん!)
私がその考えを振り払うと、
『此方へ!』
カノが呼ぶ声が聞こえて、すぐさま、私は駆けた。
カノの元に集まると、私は周囲を見渡す。
ミツナギは、戸惑いを見せていたが、それでも、呪文を放とうとしていた。
ヒュルベルトは――変わらず剣を握っている。
(二人とも……)
二人はまだ、勝つつもりでいるのだ!
「そら、もう少し動けるようにしてやろう。仕留めてこい!」
カノは私達を集めると、炎の加護を一際強くした。
結界魔法や防御の魔法ではない。
攻撃力を高める魔法だ。
……なるほど、どのみち、アレを防ごうとしても、段々とこちらが追い詰められ不利になるだけ。
ならば敢えて、最大の攻撃で、打って出るのみ。
私達はカノの考えに頷いて、光輪に力を集める”傲慢”に向かって走った。
「……!」
僅かに、”傲慢”が反応する。
そしてヤツは杖をかざし、こちらに向けて――。
その瞬間は「光が、爆発した」とでも言うしかなかった。
光輪からは、神殿の柱のような太さの灼熱の光線が放たれ、触れたものすべてを蒸発させた。
”傲慢”の翼からは光の帯のような物が放たれ、ナイフでバターを裂くように、触れるもの全てを鋭利に切り裂いた。――だが、私達はそれらを全て回避し、奴に向かって突き進んでいた。
走れ、走れ、止まれば死ぬ。
流石に私も少しだけ恐ろしい、身が竦む思いだ。
アレの繰り出す攻撃に触れれば、その瞬間、命はないだろう。
『ぎゃーはっはっは!! いいねえー!! こういうのが見たかったんだよォ―!』
ユル=ケンが高笑いを上げる。
彼もまた、巻き込まれれば消えてしまうのに。
でも私も、その絶望的な危険の中、不思議と足を進めていた。
カノのオマジナイが効いたのか、いや。
カノのオマジナイが効いたのは、”彼ら”だ。
そして、私を導くのは、先を行く、”彼らの姿”だ。
彼らを見ていると、私も体が動くのだ。
奇妙な高揚感に、私は身を預けていた。
恐れを知らぬ、未来を信じて疑わぬ。
自らは出来ると思い込む事。
「はは」
(ああ――彼らは、本当に)
それを人は、或いは蛮勇、そして、”傲慢”と呼ぶかもしれない。
だが。
(――本当に、英雄になれるのかもしれないな)
時に、それが何より得難い、条件と成り得ることもあるのだ。
『
導きは我が手に有り』
カノの声が聞こえる。
再度私に力を貸してくれるのだ。
ならば、私もカノと”彼ら”に、最大の秘剣で、応えるしかない。
「魔の胎動、地より溢れ出よ! ……大地噴出剣ッ!!」天に舞う”傲慢”を叩き落とすために、私は剣を振り上げた。
「!!」
――剣が何かにぶつかり、弾き返される。
(結界か!?)
罪喰いの癖に、やってくれる……!
私は懸命に剣を押し出す、が、結界は破れず、完全に受け止められる。
我が渾身の剣を防いだ”傲慢”は、結界の向こうから、こちらをじっと見ていたが――。
「!」
やがて、錫杖をこちらに向け光の刃を、私に向けて放つ――。
(ねえさ――)
左目が疼き、脳裏に浮かんだのはその言葉。
だが。
カッ!
別の光が、さらに私の目に刺さった。
赤い光、炎の呪文――カノだ!
炎もまた、”傲慢”の結界に遮られたが、少しだけ、”傲慢”の体勢が崩れる。
(ああ、まだだ、姉さん! ご照覧あれ!)
私は、結界から来る反動を利用して、空中に跳んだ。
そして身を翻して、放たれた光の刃を避けた。
一瞬カノの顔が見えた。
「守ってやるといったろう」と言わんばかりの顔に見えた。
私も、その中に入っていたのだろうか。
空中から、再度奴を見る。
今は、私が、奴を見下ろしている。
(……大地噴出剣は、一度魔力込めた刃で斬った後、大地に魔力を放ち攻撃する二段構えの剣)
奴の結界には、まだ私の放った魔力の残滓が、燃えカスのように残っている。
(順序が逆になるが――ならばッ!!)
私は落下するままに、”咎人の剣”を振り下ろした。
燻っている、魔力の残滓に、再度刃を合わせるように。
(名付けて、大地噴出剣、改め、
真空剣ッ!!)
「てぇえええいい!」
そのまま一気に、私は剣を引いた。
「――ッ!」
結界はまるで、ステンドグラスが割れるように、私の剣に引き裂かれて、砕けて散った。
「!」
結界は破った!
だが、まだ罪喰いの身体に刃を入れたわけではない。
(次は、どうする!?)
”傲慢”は、再び私を見下ろし、再度杖を掲げ、私を滅さんとしようとする。
「!?」
だが、今度は蒼白い閃光が罪喰いの身体を焼いた。
――カノの炎よりも激しく、強く、ゆるぎない。
(ミツナギ!)
彼が、至近距離で、全力の呪文を放ったようだ。
ああ、魔法は――”傲慢”に、効いている!
倒せる、我々は、勝てる!
私は、”咎人の剣”を構えなおす。
そして、頭上に剣を掲げ、再度”傲慢”に飛び掛かった。
ミツナギの魔法を振り払った”傲慢”がこちらを見る。
「あは」
そうだ、来い、私はずっと、焦がれていたのだ。
お前たちが来るのを。
お前たちが現れてくれるのを。
私の罪を喰らいに来るのを、ずっと待っていたのだ!
さあ、今こそ――。
――返してもらおう。「ヒュルベルト!」
――私の合図と共に、ヒュルベルトが跳ねた。
私に注意を向けていた”傲慢”は、ヒュルベルトの接近を許していた。
結界を張る間もなく、力を貯め込む暇もなく、”傲慢”はその首から肩にヒュルベルトの刃を受けていた。
「………!!?」
感情が無い筈の罪喰いが、戸惑ったかのように震えている。
剣の斬り口から、光があふれて、血のように噴出していた。(ああ……驕ったんだね、君は)
罪喰いに感情は無いが、”機能としての知恵”はある。
絶対的な力を持つが故。
学べるがゆえに、我々ヒトに対して、侮りがあったのだろう。
でなければ、ヒュルベルトの接近を許すはずがなかった。
あれだけの攻撃を、死を恐れもせずにくぐり抜け、絶望的な差を乗り越える、大胆さ、そして覚悟。
ミツナギを、仲間を信じて、駆け抜ける彼のようなヒトを。
ヒュルベルトのようなヒトを、”傲慢”は想定できなかったに違いない。
”うああああああああぁぁぁぁ”
最後に、”傲慢”は断末魔をあげた。
”門番の罪喰い”のように。
かくして、我らを見下ろした、”傲慢”なる罪喰いは地に堕ちた。
――そして。
光となって消えていった。