アルテマウェポンから放たれた滅びの魔法と、ハイデリンの力の暴走によって途中離脱をを余儀なくされた俺は、魔導城が赤く燃え落ちていく様を眺めていた。
「・・・・・・まだ、戻ってこないのか」
エオルゼア同盟軍の兵たちは作戦行動を終えて戦域を離脱している。
各国の盟主とシド、暁のメンバー達も光の戦士の帰還を今か今かと待ちわびているが、魔導城の爆発が強まるばかりで帰ってくる様子はない。
俺はまた、仲間を見捨てて自分だけ・・・・・・
カルテノーの苦い思い出が甦る。
仲間を救うために白魔法を学んだのに、何も出来ず、誰も助けられずに逃げ延びた。
手が震える。
あんな思いをしないために、仲間を守れる力が欲しくて赤魔法を学んだ。
でもそれは、意味のないことだったのだと思い知らされる。
俺の本質はカルテノーから何も変わっちゃいない。
恐怖に負けて、こうして見ていることしかできない自分が心底嫌になる。
『願いなさい・・・・・・』
声が聞こえた。
聴き馴染みのない優しい声。
これは・・・・・・ハイデリンか・・・・・・?
『願いなさい・・・・・・そして、想うのです・・・・・・強く・・・・・・強く・・・・・・』
先ほど受けた光の力の影響だろうか。
その声ははっきりと聞こえた。
「・・・・・・・・・・・・」
耳を澄ませて、彼らの痕跡を探す。
「・・・・・・なんだ、元気そうじゃないか」
徐々にそれは、大きくなる。
爆発音に紛れて、微かに、それでいて確かに聞こえる音。
燃えるカストルム・メリディアヌムの回廊を駆け抜ける、壊れかけの魔導アーマーの駆動音。
「だぁああああああああ!!出口!!出口!!」
「わかったから!!静かにしてよ!!耳が壊れる!!」
騒がしすぎる冒険者たちの声。
今一度、巨大な爆発が起きる。
その爆風に押されて加速した、ボロボロの魔導アーマーが、カストルム・メリディアヌムの城門から飛び出してくる。
操縦席にすし詰めになっていた七人は、その勢いに耐えきれず、七人七様に宙に投げ出された。
派手な音を立てながら地面に激突する魔導アーマーと光の戦士たちの姿は、とてもじゃないが英雄とは言いがたい無様なものだった。
「・・・・・・いってぇ」
「生きてる!?生きてるぞ!?やったー!!!」
「もう無理・・・・・・疲れました」
悪態をつくアルビオン、騒がしいフェニ、疲れ顔のスフレ、その様子に思わず頬が緩む。
「戻ってきたと思ったら、騒々しいな。まったく」
「ははっ。スカーレットも無事で何より」
「お前達もな」
座り込む緑の髪の彼女に手を差し出す。
彼女はそれを頼りに立ち上がると、煤だらけの服に付いた土をぱんぱんと払う。
「メリエッダは?」
彼女が問いかける。
俺と同じく光の力の暴走の影響で途中離脱したミコッテの少女。
彼女にとって長らく共に過ごしてきた少女はもはや家族といっても差し支えない関係だろう。
気にならないはずはない。
「安心しろ。今は、救護班が見てくれてる。けど、容態はあまり・・・・・・いや、最悪だ。外傷はほとんどないし、問題なく生きている。だが・・・・・・」
「・・・・・・そっか」
燃える要塞が大きな音をたてて崩れ落ちる。
俺と彼女はそれをただ眺めている
「あぁそうだ・・・・・・わるかったな」
不思議そうに、彼女が俺の顔を覗き込む。
「何が?」
「アルテマから、守ってくれた時。あの時お前の過去が見えた。ダルマスカでの出来事とかいろいろ」
「じゃあ、信じてくれる?私がカトレアだって」
「あぁ・・・・・・お帰り、カトレア」
俺の言葉に、少し疲れが混ざった満面の笑みを見せてカトレアは答える。
「うん。ただいまっ」
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