GaiaDC:Val鯖シロガネ20区49番地
12月19日(土)21時からの舞台、
「幸せチョコ坊の冒険譚」 ~ちいさな憧れと勇気~
の内容をより楽しんでいただくために拙い文章ではございますが、ストーリーを書かせていただきました。楽しんで頂ければ幸いです。
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~夢の始まり~
「冒険者」
自由気ままに旅をして生きて行く流れ者。酒場に行けば名だたる冒険者達がそこら中で嘘か誠か、自分たちの冒険を自慢げに話している。
時はまだ竜詩戦争の真っ只中、イシュガルド外から逃亡してきた冒険者一行がフォルタン家で匿われている時だった。極寒の地に他のものは寄せ付けないほど大きく聳え立つイシュガルド教皇庁、なによりその上空は瓦礫の埃を被ったかのように灰に包まれている。
「今日は何処を散歩しようかなぁ」
張り詰めた空気に似つかわしくないとても可愛らしい女の子の声。
ララフェルのナラは竜詩戦争中親が行方不明となり一人で暮らし、毎日の散歩で困ってる人を見つけては助け、報酬を得るのが彼女の日課だ。
その日の気分で歩く場所を変えては寄り道したり、街の住民達と話をする。幼いララフェルにとってはこれでも充分な冒険になっていた。
とても明るく元気な女の子、しかし彼女の素顔を久しく街の住人たちは見ていない。普段はチョコボの被り物に、チョコボのスーツを着ているからだ。
如何にして彼女がこのような奇妙な格好をするようになったのか、それはとある冒険者とその連れのアウラとの出会いから始まる。
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ここは、クルザス西部高地。
突き刺さる寒さに吹き荒れる雪、こんな天候の中一人の冒険者とアウラの女の子は白銀の大地を進んでいた。
冒険者はフォルタン家からの援助で各地を周ってる。その旅の中で帝国が占領しているドマから一人で逃げて来たアウラを助け行動を共にしていた。当面の目的はイシュガルドでフォルタン伯爵に彼女の面倒を見てもらえないかと相談することだ。
冒険者とアウラ、ヘレー、の話はまた別の機会にしよう。
雪原をチョコボに乗って進んでいると、目の前に小さな、それも他の岩とは明らかに違う積もり方をした山が見えた。
もしやと思い冒険者が雪をかき分けると、中からこれまた小さなララフェルが顔を現す。身体は冷えきっていて、命の危機に晒されている状態だ。
冒険者はすぐさま近くの洞穴を探し、ララフェルをチョコボの羽根の下に挟み込むように暖を取らせ、ヘレーは薪に火をつけ夕飯の支度をした。
「この子を見つけた周辺を探索してみる」
幼い子どもが一人であんな場所にいたのがどうにも不自然で、冒険者は先程の雪原を調べる事にした。
子どもが埋もれていた近辺を探ると、男女の衣服のようなものが見つかった。成人したララフェル位の大きさだろうか。更にその周りには無数の鱗が落ちていた。イシュガルドに詳しい者なら誰もが一つの結論に至る。
「異端者」
敵対している竜と交わり、己も竜と化してしまう。イシュガルドでは度々このように異端者が生まれることがある。なぜこのような者が出てくるのかはこの時はまだ解明されていない。
冒険者の心が痛んだ。ラノシアでは父と母がテンパード化され、殺される姿を目の当たりにしたコボルトの子が言葉を発せなくなったという話を聞いたことがある。もし、あの子が目の前で親がドラゴン化した姿を見ていたら…
無性に助けたララフェルの事が心配になり急ぎ足で洞穴へと戻る。
◆
暖かい羽根に包まれて身体も温まってきたきたころ、ララフェルがゆっくりと目を開けた。
ホウキグサがほのかに香りまどろみの中、段々と視界もはっきりし、彼女の目に映る景色は意識を失う前の記憶と違う事に気づいた。位洞穴の中、見知らぬアウラが鍋をじっと見つめている。
「起きたのね…」
不意に声を掛けられ心臓がビクッと跳ねる。見た目がドラゴンの様なこの女性に自分は食べられてしまうのだろうか…そんな不安がララフェルを襲う。それを察したのか、ヘレーはこの小動物をどう落ち着かせようか頭を働かせた。
「食べたりしないから。あなた、名前は。」
「ナラ…」
「私はヘレー、あなたは雪の中で倒れてたんだよ」
自分の名前を聞かれ、怯えながらも答えるナラにどうしてここにいるのかをヘレーは説明した。ナラも安心したのか、自分は親に連れられて吹雪の中を歩き、意識を失う前、視界の悪い中で竜の咆哮が聞こえたと言う。
その後二人はお互いの事を話した、ヘレーは何故イシュガルドへ向かっているのか、ナラはイシュガルドでの暮らしを…丁度話も終わる頃、冒険者が息を切らして戻ってきた。
「意識を…取り戻したのか」
安堵と不安が入り混じった表情を冒険者はナラに向ける。
ヘレーは冒険者に駆け寄り、ナラがあの場所にいた理由と、自分の親を探しに行きたいと言っていることを説明した。
残念ながらナラの両親はすでに邪教とされる異端者に心を奪われているであろう…娘をどうしたかったのかはわからないが、途中、完全に自我を失い去っていたと考えるのが自然だと冒険者は感じた。ヘレーも同じ考えに至った。
「ナラ…君の両親は…」
(異端者になった)
そんな残酷な事実を幼い子ども言えるわけもなく冒険者は言葉に迷ってしまう。
「私たちでも何処へ行ったかはわからない。」
代わりに話し出したのはヘレーだ。
「この吹雪の中じゃ、誰かとはぐれたら探しに行くのは自殺行為よ。」
「でも、お父さんとお母さんも雪の中で助けを求めてたら!」
「それでまた遭難したらどうするの!?」
碧い瞳に睨まれて、ナラは身動きが取れなくなった。
「あなたの両親だってあなたが生きてくれることを一番に望んでるはずよ。
私の親がそうだったんだもの。」
ヘレーの親もまた彼女を帝国軍からかばって捕まった。最後に抱きしめられながら耳元で言われた、
「あなたの幸せをずっと願っているわ」
その言葉を胸にここまで歩んでこれたのだ。目の前にいる自分より幼い子どもにそれを理解しろと言うのは難しいのかもしれない。それでも今この小さな命を見捨てるわけにはいかない。身寄りを無くすことの怖さを誰よりもヘレーは知っていた。
ナラの目に大粒の涙が溢れる。親との別れ、孤独、先への不安全てが一斉に襲い掛かって来た。ヘレーはナラを優しく腕の中へ包んだ。
「大丈夫、私があなたの側にいるから。あなたの親が見つかるまで一緒にいるから」
その夜はナラが落ち着くまでずっと暖かいチョコボの羽根の中で抱きしめた。
日が昇り始める頃には外の吹雪も収まり、冒険者たちはイシュガルドへ向かう支度をしていた。ナラはずっとうつむいたまま、チョコボの隣で座っている。自分の両親は何処へ行ってしまったのか、生きているのか、昨日から頭の中はずっとその事で一杯だ。
イシュガルドに到着すると冒険者たちはすぐフォルタン家に向かい、ナラとヘレーの事情を話した。ただナラの両親が異端者となった事は秘密にしたまま。
フォルタン伯爵は出来る限りの支援をしてくれる事を約束し、ナラは元の家で暮らし、ヘレーはチョコボ屋に住み込みで働けることになった。冒険者ともここでお別れになるが、去り際ナラに残した言葉が彼女を奮い立たせた。
「いつか君が大人になって、親を探しに行きたいと願うのなら冒険に出ると良い。
世界は広く想像もしないことが沢山起きる。人を助けられる強い子になるんだ」
親の行方はわからないけど、いつかもしまた会えるのであれば探しに行きたい。そう心に誓いナラはその日から冒険者になる決意をした。
それからというもの、チョコボの格好をして出歩くナラの姿が見られるようになった。彼女がチョコボの格好を選んだ理由、それはあの時寒く辛い中、片時も離れず自分を暖めてくれたチョコボが幸せの象徴だと感じたからだ。チョコボの姿で街の人たちに笑顔を届けたい。彼女の想いに街の住人達も心惹かれ彼女の事を「チョコ坊」の愛称で呼ぶようになる。彼女の冒険者への道はここから始まった。
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月日が流れ、竜詩戦争が終り、イシュガルドにも安寧の時が訪れようとしていた。ナラもまた冒険者になる事を夢見て今日も元気に歩き回っている。
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