「旅立っていった人たちへ」
世の人は言う。夢のような冒険を一緒にしないかと。
十人十色の魅力を見せる仲間がおり日々楽しみが絶えることはない。
hime-changは巨乳だと。
世の人は言う。おつかいは飽きたと。
いつもの顔なじみと少しだらけた会話をするだけで落ちる。
退屈が広がっている。かまって女はうっとうしい、と。
どこかから旅立ち、そしてどこかへ旅立っていく人々へ。
冒険の旅はまだ続いている。
目に浮かばない人はいない。ラノシアの潮風を感じる青とその穏やかな緋色の夕焼けを。
グリダニアの湿り気の漂う木々と小川に、不安と神秘性を感じる夜を。
熱砂の香るかのようなウルダハの荒野の無限性と、そこを駆ける迷いと冒険心を。
まだ覚えているだろうか、世界が強く輝いていた頃を。
右へ行っても左へ行ってもどこにいるのか今ひとつわからない。それなのにドキドキしていた。
この見慣れた雑踏をかつては「全部人が動かしていて、友達になれるんだ」と心躍って見た。
何のことはないモンスターに酷く警戒して挑み、結局は負けた。
確かにその場にいた。そしてあらゆることに強く憧れを感じた。
冒険は未踏の地とは限らない。人々と出会う放浪者もまた冒険家だ。
忘れただろうか、お互い初心者で意気投合しつまらない話題を大いに語り合った少女を。
調子に乗って迷惑をかけ続けてしまったおじさんを。
つたない英語を使い贈られた武器と、ポートワインの味を。
だんだんおかしなことを言い始めたホストの人を。
「だって、面白いし優しそうなんだもん!」そう無垢に言った奥様を。
あなたに甘えたあどけない人々を。上手く返していたかい?
勇者のように見えたあなたにとってのメンターを。
どこか不安定で、それで寂しさにつきまとわれていた人たちを。
周囲を笑顔にさせる天性のhime-changたちを。♂も。
いつでも他人を受け止めることのできる酒飲みたちを。
幸運の星ように舞い込んできた勧誘マンを。
人を柔らかく受け入れ、和やかさを生む人たちを。見本にできているかい?
あなたに声をかけてくれる人たちを!
どつき合いをする悪友たちの顔を。
あなたが無理を言いがちな人の表情を。
日夜あなたのパンツを狙う人を。
あなたの挨拶を返してくれる人たちを。
あなたの店に来て快く参加してくれる人々を。つまらない演奏を聞きに来る人を。
あなたが頼った本当にたくさんの人々を。ちゃんと感謝できているかい?
あの店は覚えているだろうか。何度も行ったあの店の光景を。
すっかり居着いてしまい思い返せば迷惑な常連でもあったことが恥ずかしい。
あの店の赤い星を。人を惹きつける熱気を。
鼻の奥に感じる書庫の匂い。ずっとずっと最初に、ずっとずっと沢山のサーバにいた。
あの店主の穏やかな語りを。あの古書店を。
自分とは違った存在。始めて来る人も引き込むエンターテイメント性。
大勢のファンに囲まれた黄金色の二人を。
生徒は少ないかもしれないけれど、そこには一つの文化と1人の異邦人がいた。
そして書いたどこか不思議な講義メモと。
試行錯誤とボツの山から生まれた、人の集う酒場を。他愛ない談笑を。
ユーモラスであろうとする若者とそれに会いに来てくれる人々を。
どこかから旅立ち、そしてどこかへ旅立っていく人々よ。
冒険の旅はまだ続いている。
いつか彼や私は思い返すだろうか。思い出の中の冒険の旅を。旅立っていった人々の事を。
そしてできれば私たちのことを。