Ringo Aoringo
Zeromus [Meteor]
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1
Nergo Gigantes
Spriggan [Chaos]
2
Shino Yaru
Sagittarius [Chaos]
3
Saboree Catboy
Spriggan [Chaos]
陽光は海は眩しく、波は白く広がる砂浜に穏やかに寄せていた。
ラノシア有数のリゾート地であるコスタ・デル・ソルの船着場は行楽で訪れた者達でにぎわっている。
そんな一群の中、仕事着に身を包んだN氏は観光に訪れたわけではなかった。
N氏はグリダニアのグランドカンパニー、双蛇党に所属する冒険者である。業務提携をおこなっている黒渦団へと海外赴任の任を帯びてラノシアへとやってきた。
冒険者の活動は基本的には現地調達である。
グランドカンパニーの業務の一環ではあるが、提携宿泊施設の利用は無料とはいえ、飲食費はもとより、業務に用いる装備品でさえも経費として認められない。すべて持ち出しで仕事をした上で、得られる賃金はわずかばかりのものである。
N氏もこの労働条件に不満がないわけでもなかったが、世界で2000万人の冒険者を擁するグランドカンパニーが各々の任務にギル払いの経費を出せない懐事情も理解はしていた。
かくしてN氏は当座の活動資金を得るためにコスタ・デル・ソルの資材調達任務の納品に訪れていた。
コスタ・デル・ソルはゲゲルジュ氏という大富豪の私有地だという。目敏いゲゲルジュ氏が一帯を買取り、氏の趣味で南洋風のリゾート地への開発をおこなったそうだ。その経営手腕は見事なもので、景観維持のための手入れや一流の料理人による美食の提供、ウルダハ仕込みのダンサー達による優美な舞いを味わえるリゾート地として、その評価を不動のものとしていた。
そんなゲゲルジュ家に納める品物は多岐にわたる。魚介類から革細工士の使う工具や、銀製、革製の首輪、はたまたファルシオンやエルモのような武器防具、専属の職人から傭兵団も擁するゲゲルジュ家の発注依頼は多種多様である。
リゾート地での仕事は悪いものではなかった。仕事終わりに浜で糸を垂らすと、たいそう旨い魚が釣れる。たまに得体の知れないものも釣れるが、星に月に輝く静かな波面を眺めながらの夕食は贅沢な時間であった。
N氏が長逗留をして日々ゲゲルジュ家に物品を納めていると、使用人達が「ゲゲルジュ氏が子猫ちゃんのために…」というのを耳にすることがある。
”刀剣類を何故、子猫に?”と疑問を覚えるも、金持ちに奇矯はつきもの、文字通り猫可愛がりしているのだろう、と思い直す。
N氏は足元にまとわりつく幼クァールを見やる。
エールポートで懐かれた幼クァールは子猫のように愛らしい。異国での日々の労働の中、その仕草に随分と慰められていた。金持ちが道楽で高価な革製、銀製の首輪を身に付けさせるというのも、わからなくはない。
しかし、刀剣や革細工の工具は何に使うのか。皆目見当もつかない。
『動物虐待』
ふと、そんな恐ろし言葉が思い浮かぶ。
猫好きにしては、コスタ・デル・ソルで猫の姿を目にしない。N氏に懐く、幼クァールくらいものである。
何故いないのか?
いなくなったのか?
N氏は苦悩した。
いくら金払いが良くとも、この地に長く留まるべきではないのかもしれない。
コスタ・デル・ソルの海岸に夕日が長い影を落とす。
しゃんしゃんと鈴の音を響かせて踊り子が舞い踊る。
ゲゲルジュ氏のご自慢の踊り子達であろう。
猫を思わせる容姿のミコッテ族の娘が、軽やかなステップで跳び、優美な手振りで夕暮れのコスタに夜の訪れを告げる。
つくづくの猫好きなのか、そこかしこにミコッテの娘達の姿が見える。
N氏は気づいてしまった。
動物虐待どころの話ではないのかもしれない。
『子猫ちゃん』はミコッテ族を指し示す隠語ではないのか。
先ほど想像した小さな子猫の姿が、目の前の踊り子に変わる。
首輪で拘束され、
鋭利な刀剣で、
革細工の工具で、
いったいどのようなおぞましいことがなされているのだろうか。
N氏の脳裏に、先だっての黒衣の森の御用邸での惨劇がよぎる。
妖異に取り憑かれた御用邸の主人が、女給たちを拷問の末に惨殺。血を喰らうとも、贄に捧げるとも、おぞましい話にことかかず、主人は異界の住人に成り果てたという。
惨劇は幕を下ろしたが、その後の御用邸の凋落ぶりは目を覆うばかりだ。
豪奢な邸宅も、かつての栄光は見る影もなく、カボチャ菓子の季節ともなれば業者により大量の廃棄カボチャの不法投棄がなされ、魑魅魍魎の仮装パーティの場となる。
見かねたモーグリ族が私財を投じた町おこしの復興イベントでも、黄毒の沼地オーラムヴェイルに客足で負ける始末。荒廃も甚だしい。
この楽園のようなコスタ・デル・ソルを御用邸のようにしてはいけない。なんとしてもゲゲルジュ氏を捕らえ、無辜の踊り子を救い、凶行を止めなければ。
N氏は固く決意した。
しかし、いかにN氏の決意が固かろうとも多勢に無勢。ゲゲルジュ氏の本拠地である、このコスタ・デル・ソルで、一人、ことを起こしても、瞬く間に捉えられ闇に葬られることであろう。
N氏は荷物をまとめ、リムサ・ロミンサ行きの船に飛び乗った。
ゲゲルジュ氏ほどの財界の大物を糾弾しようというのである。国家権力の助力が必要となる。N氏はリムサ・ロミンサの警察機構イエロージャケットに駆け込んだ。
N氏が集めた状況証拠をもとにコスタ・デル・ソルで起きていることを訴え、法的な取り締まりを願い出たが、鼻先であしらわれ、すげなく一蹴されてしまう。
ならばと、黒渦団へも経緯を説明し助力を乞うが、抜け目のないゲゲルジュ氏は黒渦団への付け届けもぬかりががなった。一介の冒険者であるN氏がいかにゲゲルジュ氏の危険性を訴えようとも、黒渦団へ大口の寄付をおこなうゲゲルジュ氏に対する配慮、忖度を突き崩せない。双蛇党の名を使い提督へ直訴を試みようとするも、不審者として目をつけられてしまい、それも叶わなかった。
初めのうちは面白がってN氏の話を聞いていた者達もいつまでも同じ話を続けるN氏に、しだいに相手をしなくなっていった。
いかに窮状を訴えようとも誰にも相手にされず、しだいにN氏はやさぐれ、酒場で飲んだくれるようになった。
路銀も底をつき、金も持たず飲んだくれるN氏は、しまいには酒場からも追い出され、リムサ・ロミンサの街で見かけることは無くなった。
* * *
農場を覆う朝霧は、しだいに力強さを増す陽の光に溶けてゆく。
朝の仕事に精を出す農夫達の中にN氏の姿はあった。
無一文のN氏はリムサ・ロミンサを離れ、辿り着いた農場での日雇いの仕事で食い繋いでいた。農夫と言っても海賊崩れの者も多く、だれもN氏の素性については深く詮索をしなかった。
ただただ、この地を離れたかった。楽園の影で行われる非道にも目を背け、N氏の嘆願を虚言と嘲笑うリムサからも逃げ去りたかった。
しかし、ラノシアは海で隔てられた地。海路でも空路でもグリダニアに帰るには相応の金が必要になる。N氏には金がなかった。
故郷の黒衣の森に帰りたい一心でN氏は働いていた。
* * *
頼もしい先輩もできた。
洒落者であり、自身の冒険譚を面白おかしく話してくれる偉丈夫だ。
先輩は、元冒険者同士という気安さからか、何かとN氏のことを気にかけて仕事を回してくれる。貸した金も倍にして返すと約束してくれている気前の良さだ。
N氏はようやく上向いてきた前途に感謝をした。
この人の元で働いていれば、きっと道は開けていく。遠からず故郷へ帰れるであろう。
なんと言っても、先輩は蛮神タコタンをも討伐したという旅団の一員であったのだから。
FIN.