※この物語はフィクションです。実在するキャラや組織、FFXIVのシナリオとは関係のないお話であることを念頭に、思考を放棄してお楽しみください。
【登場キャラ紹介】
ユフィア……この物語の主人公である召喚士。あらゆる事件を解決し、光の戦士だとか英雄だとか呼ばれている冒険者。実は結構ポンコツなところがあったりもする。目先の欲望に忠実。
ジェム……ユフィアが召喚する相棒のカーバンクル。何故か関西弁で喋ることができ、マスターであるユフィアのボケに容赦なくツッコミを入れるのが仕事。
1日目「ギルがねぇ!」
冒険者ユフィア。
その名を聞けば、世の悪党は恐れ慄き、救いを求める民衆は歓喜するという。
エオルゼアをはじめ、各地で活躍する彼女は留まることのない快進撃を続け、恐れるものは何一つないのではないか? とまことしやかに囁かれていた。
ユ「マズイことになったぞ。この状況、絶体絶命かもしれない」
前言撤回。
彼女は今、未曾有の危機に直面しているようだ。
その顔は血の気が引き青ざめ、眉間には深いシワを作っている。滲んだ汗はゆっくりと頬をつたい、肩は小刻みに震えていた。
凶悪な魔物の群れに囲まれているのか。はたまた脱出不可能な遺跡に閉じ込められたのか。
蛮神という存在を前にしても怯むことなく立ち向かう彼女の視線にあるもの。それはっ——
ユ「ギルが……ないっ!」
見るも無惨に痩せ細ったギル袋であった。
ジ「なぁご主人よ、そのくだりなんべんやったら気ぃ済むんや?」
追い討ちをかけるように、どこからともなく声がする。
否。正確にはユフィアの足元であり、そこにいるのはキラキラとフサフサを兼ね備えた魔法生物、カーバンクルであった。
ユ「ジェムくん、ここは優しい言葉をかけるところじゃないかな?」
ジ「いいや、ご主人に仕える身として、ここは心を鬼にせなあかんところや」
幻聴の類などではなく、確かにカーバンクルが喋っていた。——関西弁で。
ジ「ええかご主人、そのギル袋はただのギル袋や。叩いても振っても中身は増えんのやで? 悪いことは言わんからいい加減現実見よ、な?」
ユ「そんな可愛い仕草(小首を傾げる)と眼差しで、辛辣な言葉を吐かないで! なんかダメージ増すから!」
耐えきれず、ユフィアはジェムと呼ぶカーバンクルから視線を引き剥がし、両手で頭を抱える。
ユ「大体おかしいよ。自分で言うのもアレだけど、私って世界各地で活躍している冒険者でしょう? 名前だってそこそこ知れ渡ってるはずなのに、依頼が全然来ないんだもん。閑古鳥が鳴きわめいちゃってるよ」
彼女の慟哭はもっともである。
しかし、それ故にということを彼女は知らない。
数々の事件を解決し、国々の危機を救ったことで一躍有名になったのは確かである。——が、逆に名前と偉業が大きくなりすぎたせいで、そんな彼女にお使い程度の依頼を気軽に依頼できる猛者はいないのだ。
加えて、金欠の原因はもう一つあった。
ジ「ご主人、めっちゃ言いにくいんやけどな、ご主人にも悪いところあるんやで」
ユ「へ? どゆこと?」
ジ「やっぱ気づいてへんかったか。……あんなご主人、“衝動買い”って単語に身に覚えあらへんか?」
ユ「…………」
沈黙こそ肯定。
絶望を嘆いていた顔はどこへやら。一瞬で間の抜けた表情になったユフィアは、しかしすぐにその瞳を潤ませた。
ユ「仕方ないじゃん! ビスマルク※で新作スイーツが限定販売されるんだよ! 買う以外の選択肢なんて皆無だよ‼︎」
※リムサ・ロミンサの調理師ギルドがある名店。もちろん高級。超高い。
ジ「ああ、店先で一緒に並んでたときにシーフっぽいミコッテ娘とそんな内容で意気投合しとったな。——けど、ウチが言いたいのはそれだけやあらへん」
ジェムは人間臭くやれやれとため息を吐くと、
ジ「裁縫ギルドの新作衣装」
ユ「あぐっ」
ジ「各地で変な書物の買い漁り」
ユ「おふぅ」
ジ「極め付けは、目も当てられんほどのカーバンクルグッズや」
ユ「っ〜〜〜〜(ぐぅの音も出ずに卒倒)」
その短い足の一歩一歩で着実に詰め寄り、ユフィアの痛いところを抉ってKOのゴングを鳴らせたのであった。
もうやめて! ユフィアのMP(メンタルポイント)はもうゼロよ!
ユ「……ご、ごめんなさい」
ジ「わかればええんや、わかれば」
蚊の鳴くような声で謝罪をこぼすユフィアの肩を、ジェムは優しく前足で叩いた。
その肉球から癒しパワーでも補充されたのか、戦闘不能状態だったユフィアは息を吹き返す。
ユ「ジェムくん、私、働くよ!」
ジ「おおっ、その意気や」
ユ「買い物も我ま……ちょっと抑える!」
ジ「すでに不安なんやけど、まぁ決意だけはええな」
やる気になったユフィアは両手で自らの頬を叩き、勢いよく立ち上がる。
ユ「よーし、まずは依頼を取ってこないとね。冒険者ギルドやグランドカンパニーの詰所に行って、それでダメなら困ってる人を探す方向で。張り切って行くよ、ジェムくん」
ジ「ご主人が望むなら、たとえ火の中水の中、地平線の彼方から世の果てまでお供するで!」
ハウスの扉を開け放ち、1人と1匹は足並み軽やかに駆け出す。
世界の命運とはなんの関係もない、冒険者の日常が始まろうとしていた。
次回、冒険者ユフィアの日常 2日目——「これって私じゃなきゃダメな仕事ですか⁉︎」
***
あとがき
何かの気の迷いで書きました。
わずかでも楽しんでもらえたら幸いです。
更新は不定期だと思います。これっきりかもしれませんw
応援されたら頑張るかも。
それでは皆さん、エオルゼアで会いましょう!
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