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冒険記231

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「──お前、紅玉海に潜む紅龍を釣った事はあるか?」



少し冷たいが、雪を纏いながら運ばれて来る穏やかな夜風が心地良いオールド・シャーレアンの港で釣り糸を垂らしながら、ふと暁月の果てで言われた"彼"の言葉を思い出す。


「オサード大陸の北、流水に覆われた七彩溝に収監された者のみが辿り着く、七彩天主を見たことは?

 新生エリアの、眩き黄金魚はどうだ?

 南ザナラーンにて、忘れられたクエストで釣る事になる、ヘリコプリオンは?

 3.x時代に蹂躙された魔大陸アジス・ラーのオパビニア、その今を知っているか?

 世界にもまだ知られざる真実がある。

 お前たちが奉る「サプライズエッグ」の正体なんぞがいい例だ。

 あるいはもっと視野を広げてみろ。

 鏡像世界のいくつかには、驚くべきヌシが残っているからな。

 ……アゼムのクリスタルを持つ者だろう?

 それくらいは当然釣っておけ。

 ……私は、釣ったぞ。



煽るような、意地の悪い──でも悪意はない、そんな不思議な表情で"彼"は言った。

当時の私は見た事も聞いた事もない名前ばかりだった。

本当にそんな魚が在るのか確かめる為に、暁月の冒険が終わった後、オールド・シャーレアンのヌーメノン大書院に足を運んだ。


大書院にあった古文書「Pamama」で調べてみると、それらは実在する魚の名前である事が分かった。

──世界には、未だ知らない魚がいる。


「世界を救う」という些か私には荷が重い事から解放された──
いや、使命を果たした今、新しい冒険に出るなら今ではないか。



──私は、釣ったぞ──

私は"彼"からの挑戦を受けて立つ事にした。



そんなわけで、今は「Pamama」に記されていたオールド・シャーレアンに潜むヌシを釣りに来たのだ。「Pamama」には先人が調べて纏め上げた、ヌシが釣れる場所や時間、最適な餌が事細かく記されている。

全く、ここまで調べ上げた先人には頭が上がらない。



「Pamama」によると、夜の港で弦楽器に似た姿のヌシが釣れるとの事だが、大きな引きは未だ感じない。

──今日はダメかな。

引き上げて家に帰ろうとした時、ふと隣で釣り糸を垂らしていた漁師から声をかけられた。



「諦めたらそこで試合終了ですよ」



どこか懐かしさを感じる言葉にハッと振り返ると、そこにはこの寒い時期に半袖シャツ一丁という変わった出立のヒューラン族がいた。



聞くところによると、このヒューラン族もヌシ釣りを嗜んでいるそうだ。しかも、それなりに釣っているとの事。このヒューラン族の釣果に興味が湧いた私は思い切って質問してみた。



──これまでのヌシで大変だったベスト5は何ですか?



そのヒューラン族の男は静かに語った。



5位:イラッド・スカーン


とにかくチャンスが巡って来ない。イラスカのせいで異常な早起きを迫られた事もあった。激震すらなかったが、釣れた回に激震。一発で成功した。漆黒編におけるラスボス。本格的に狙い始めて3〜4ヶ月での陸揚げだった。



4位:ヘノドゥス・グランディス
(SS撮り忘れました)

存在自体を疑うほどヒットがなく、長いキャスティングを経てようやく激震が来たかと思えば外道。キレながら蒐集品として納品し、白貨を受け取って少し心を落ち着かせる日々が続いた。オオヌシレベルに苦戦したヌシの1匹。これも2〜3ヶ月通った。



3位:ミズウオ


通称"テンペスト監獄"という拘束を経てようやく釣れるオオヌシ。数ヶ月間、沼に陥ってしまい何故か顔見知りになる方も出来た。前提となるモラ・テクタも全く釣れず、監獄入りしてモラが釣れなかった時の虚無感は筆舌に尽くし難い。釣れた時はさすがに荒ぶった。



2位:ヘリコプリオン
(SS残っておらず笑)

最近ヌシ釣りを始めた方からすると意外な順位に思われるかもしれないが、新生当時はキャスティング、フッキング、泳がせ釣りしかなく、サンドストームライダーHQを狙って釣る事が不可能だった。加えて厳しい天候条件。ヘリコプリオンが来る時間はPT募集で周知があった事もある。泳がせ前後に外道も混ざり、50キャップ時代においては正に最強だった。



1位:紅龍

(釣った後のSSしかありませんでした笑)

まあ、こいつはね。

キツさは散々語られてるので割愛するが、このヌシの良い所は時間になると釣り場がお祭り会場と化する所である。

ヌシ釣りしてる人なんてあまり見た事ないのだが、どこにこんなに潜んでいるのか…と思わず問いたくなる人波が来る。

孤独な戦いの多い漁師にとっては苦しくも楽しい時間になるだろう。


最近釣り場に行って賑わってた日の写真。




ヌシ釣りを普段しない人も、この場のお祭り感をぜひ味わって頂きたい。

※サプライズエッグの釣り場なんかにも人はかなり集まりますが、こちらは緊張感で満ちており、お祭りというよりは死闘、復讐(?)のような温度感。

「フレの付き添いで来たら釣れちゃった^^」みたいな事を口走ったが最後、怒りを買い良くてBL入り、悪ければ呪われる可能性すらあり。(オカルト雑誌「オカルトファン」調べ)



───

と、ベスト5を聞いてみると、先人の釣り日誌にあった内容とは別の順位付けもあり面白いと思った。私にも、おそらく私だけのベスト5があるのだろう。


互いに向かうべき場所があったので、ここで私とヒューラン族は別れる事にした。


別れ際に、ヒューラン族から「Fish Tracker App」と記されたアラガントームストーンを受け取った。どうやらヌシの釣れる時間や場所に到達した時に反応を示すコンパスのような物らしい。

貴重そうな物だが受け取って良いのだろうか。
ヒューラン族に問いかけると、少し笑ってから「私にはもう必要ないものだ」と彼は答えた。


漁師は暖かいんだな──。



私は、いつかこの世のヌシを全て釣った時に返しに来ます、と一見途方もない約束を口にしたが、ヒューラン族は少しも笑う事なく、「分かった」と真摯に受け止めてくれた。




──最後に、名前だけ教えてくれないか。

ヒューラン族に問いかけると、やはりそのヒューラン族は静かに語った。



Big Fishと申します


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