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Juliette Blancheneige

der lebende Schild

Alexander [Gaia]

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『Mon étoile』(4)前編

Öffentlich
4-1

 ウルダハに戻ってから、ヤヤカは早速研究に取り掛かった。
 『石壁』の詳細な調査、それから扉の文字の解読。それらを検証しながら、仔細に過程を記録していく。
 文字については、『石壁』の調査過程で新たな発見があった。古代ベラフディアの文字との類似性である。ただ問題は、ベラフディアの文字そのものがまだ解読の途上にあることだ。つまり仮説に仮説を重ねる訳で、甚だ不確実だが、やるしかなかった。
 ナル・ザル教団や古代ベラフディアの研究者への協力依頼など、やることはどんどん増えていく。
 幸いにして、資金面での心配はなかった。スポンサーのシシフカ・ココフカは『石壁』に大いに興味を示し、さらなる協力を約束してくれた。見返りとして要求されたのは『研究をまとめた本の版元を、シシフカの店にすること』という、ヤヤカにとってはむしろ嬉しいことだった。
 すべてが順調だった。
 また、テオドールたちの行動はヤヤカを驚かせた。
 彼らは前回の戦闘から、自分たち個々人の能力をさらに磨く必要があると結論付けていた。そのため、彼らは一度個人活動に軸足を移し、それぞれの強化を模索することにしたという。
 リリとメイナードは故郷グリダニアへ。ノノノは詳細を語らなかったが、師の元へ戻るという。
 そしてテオドールは、知己の騎士を通じて、銀冑団へ教えを乞うのだという。彼が同じウルダハにいることでヤヤカは安堵したが、その気持ちをはっきりと自覚はできていなかった。
 いずれにしても、仲間たち――ヤヤカにとっても彼らにとっても、そう互いを表現するのに何の抵抗もなかった――はたまにリンクパールで報告をくれる。報告の内容に驚くことも多々あったが、皆連絡をくれる程度には無事だった。
 ヤヤカは充実していた。
 ゆえに、見落としていたのだ。
 自らのすぐ側にある薄暗いものを。

 ヤヤカは何日かぶりに、篭りきりの研究室を出た。借りている自室へ着いたのは日付も変わろうかという頃だった。
 階段を登るヤヤカは。自室の扉が薄く開き、中から物音がすることにすぐ気が付いた。
 空き巣か。面倒ごとに巻き込まれた失望を感じながら、ヤヤカは鞄から片手杖を取り出した。今は亡き親友から呪術の手ほどきを受け、そしてヤフェームからウルダハへの旅路の合間に、ノノノから呪術のレクチャーを受けていたヤヤカである。チンピラ程度であるなら、軽くいなせる程度の実力は有していた。
 扉の隙間から、そっと中を確認する。
 部屋の中にいる二人は――あろうことか肉親だった。
「お父さん!? お母さん!?」
 声を上げながら部屋に入る。戸棚や机の引き出しを開けていた男女が、慌ててヤヤカのほうを向いた。
 父・ヌヌクカ・ススクカと、母・キュキュナ・キュナ。紛れもないヤヤカの両親だった。
「や、やあヤヤカ! こんばんは」
「こんばんはって……こんな夜更けにどうしたの!? しかも勝手に……」
「大家さんに話をしてね! 鍵を開けてもらったんだよ」
 ヤヤカの声を遮って、大声でヌヌクカが言う。顔はにこやかだ。底なしににこやかだが、その目はどこか虚ろだった。――嫌いな目だ。霊災で兄を亡くしてから遊興に耽るだけになって以降の、ヤヤカの忌避した父の目だ。
「そうじゃなくって……」
「いいお部屋ねえ! でもちょっと散らかってたから、片付けさせてもらったの。ごめんなさいね、ヤヤカちゃん」
 明らかな言い逃れをキュキュナは言った。けれども、その顔を見てヤヤカは追及できなくなった。母は思い込む。言い逃れや嘘を、あっという間に真実だと自分に刷り込む。そうなってしまえば何を言っても無駄だ。本気でそう思い込んでいるのだから、真実の指摘すら効きはしない。父がおかしくなって以降、母は別人のようになってしまった。自分を「ヤヤカちゃん」と呼び始めたのもそれ以降だ。
 ヤヤカは無言で開けられている引き出しへ近づいた。そこには確か金があったはずだ。クイックサンドで一回食事ができる程度の小銭だったと思う。
 それが、小袋ごと無かった。
 両親を振り返る。彼らはにこにこと笑顔でこちらを見ている。何もなかった。そう言い切るつもりのようだった。
 腹の奥に、冷たく重たい何かが溜まった。その暗く重たい何かに、怒る気力すら吸い取られていくのが分かった。
 我知らず溜息が出た。
「……それで? 何の用」
「いやあ、近くを通りがかったものでね! 愛する娘の暮らす部屋を、一目見ようと思って来たのだよ!」
 愛する娘。
 その言葉はヤヤカの心に深く刺さる。
 愛する娘――そんなわけはないだろう、と。
 わたしが本当に愛されているなら、どうして私を無視したの。
 兄様が死んで本当に悲しかった。それは分かる。わたしだってそうだ。
 でも。
 わたしを愛しているというなら、どうしてわたしの話を聞いてくれなかったの。働かなくなって、商会の人を辞めさせて、自分たちだけで資産を独占して。霊災で苦しむ従業員を切り捨てて。そんなことをしてはダメだと、どれだけ言っても聞かなかった。わたしがいないかのように、ずっとずっと無視をしてきたくせに!
「……わたしが……っ」
 叫びが出かかる。しかし。脳裏によぎったのは、闊達で洒脱な父と、聡明で慈愛に溢れた母の姿――在りし日の二人の姿だった。愛された記憶がある。愛していた記憶がある。大好きだった。
 その想いが邪魔をして、言葉は喉から消えていった。
 しかし。
「それでねえヤヤカちゃん、ここは悪くはないけど、私たちやっぱり寂しいの」
 ヤヤカの葛藤も知らずに放たれたキュキュナの言葉に、ヤヤカは背筋が凍った。

「ねえヤヤカちゃん」

「家族は一緒に住むのが自然だと思わないかい?」

 嫌だ。
 それだけは嫌だ。
「帰って!」
 叫びが出た。後はもう、めちゃくちゃだった。
 どうやって両親を追い出したか、よく覚えていない。
 気が付けば部屋に一人、しゃがみこんで泣きじゃくっていた。

 どうして。

 どうしてこんな風に壊れてしまったのだろうか。自分の家族は。
 小銭を盗んだ。それはつまり、もう彼らには金が無いのだ。
 だから、一緒に暮らそうと言い出した。
 ヤヤカには収入がある。学究院からの講師の収入、錬金術師としての仕事の報酬。そして、シシフカからの研究費の援助。それは自分の収入ではないが、困窮している両親には区別がつくまい。噂でも聞きつけたのかもしれない。
 一片の情もそこにはなかった。
 金のためだ。
 自分が本当に苦しんで働いて、必死で資金を作って夢を叶えようとしているとき、彼らは何も接触してこなかった。
 その時は彼らのほうが金持ちだったからだ。
 ヤヤカは泣いた。泣き疲れて、そのままカーペットの上で寝てしまった。
 夢も見なかった。

「待って。――どういうこと?」
 数日後、シシフカの商店に今後の調査についての説明をしようと赴いたヤヤカは、店の軒先で告げられた。
「ですから、店主はもうヤヤカ様にはお会いになりません。援助の計画は、すべて白紙にしていただきたいとのことです」
 番頭のミッドランダーの声は震えていた。悔しそうな声だった。彼も、ヤヤカの研究に評価をしてくれていた一人だった。個人的にも応援しています、と言われたこともある。
 その彼が、頭を下げた。
「……白紙って、そんな、急に」
「お察しください。口外も禁じられておりますので、何があったかをお伝えすることはできません。――ですが」
 番頭は、小声で言いながら素早くヤヤカに小袋を握らせた。それから頭を上げると周りに聞こえるように言った。
「ささやかですが、手切れ金です。大変申し訳ありませんが、今後は我が商店にはお近づきにもなりませんよう、お願い申し上げます」

 路地裏で、ヤヤカは小袋を開いた。
 一目で値打ち物と分かる大振りの宝石が数個と、紙切れが入っていた。

『圧力を受けました。貴方への援助を打ち切らなければ、潰すと。実際に取引先をいくつか奪われ、相手が本気であると思い知らされました。私共に抗するだけの実力があれば、そんな横暴に屈することはなかった。申し訳ありません。
 従業員を護るため、店の存続を第一に考え、貴方への援助を打ち切らざるを得ません。お許しください。宝石は彫金師ギルドへお持ちください。厚遇するよう、話は通してあります。
 本当に、申し訳ない。
 ――最後に。ゴールデン・ビアストにはお気をつけなさい』

 シシフカらしい誠実な手紙だった。
 自分の店に危機が迫っているのだろうに。裏切られた気は全くしなかった。むしろ、彼と彼の店が無事であるようにと祈った。
 それにしても。
「ゴールデン・ビアスト……?」
 ローエンガルデの名だが、聞かない名だ。もっとも、ヤヤカの経済界の知識は、父がまともな時のものに留まっている。
 ――モモディなら、知っているかも。
 そう考えたヤヤカは、足をクイックサンドへ向けた。
 そのときだった。

「ヤヤカ・ヤカ様でございますかぁ」
 背後から声をかけられた。
 振り向くと、上等な服を着たハイランダーの男がいた。男は一見丁重に礼をしたが、とって付けたような礼だった。服も着こなせていない。高価ではあるが、選び方にも品がない。そして――こちらを小馬鹿にするような態度が透けて見えていた。
 無視をしようと思ったが、ふと気付いてやめた。
「そうだけど。どなたの使いのかた?」
 ヤヤカの言い様には男を無視する響きが込められていた。自尊心を損なわれた男が、
「あ?」
 獰猛な表情を浮かべた。それで、ヤヤカには彼の雇い主がどういう人物か大体わかった。最近になって急速にのし上がり、金を得た人物。雇い主も使われる方も、金を急に得たことで得意になって――調子に乗っている。そして、儲けるためには後ろ暗いことも厭わない。
 柄の悪い表情でヤヤカを睨みつけた後、男は何かを思い出す顔をして、それから下品な笑い方をした。
「お高くとまった態度でいいのかなァ」
 もはや下卑た物言いを隠さずに言うと、男はヤヤカに近付いた。わざとらしい小声で続ける。
「あンたの両親のよお、借金のことでよお。――ゴールデン・ビアストさんがあンたをお呼びなんだよ」
「しゃ……っ!?」
 驚愕するヤヤカに、男が歯を剥いて勝ち誇こる。背後に止まるチョコボ・キャリッジを、親指で指す。
「来るよなァ? ア? ヤヤカさンよう……!」

(4章中編へ続く)
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