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Juliette Blancheneige

der lebende Schild

Alexander [Gaia]

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『Mon étoile』(第二部一章前編)

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1-1

「――以上が、俺たちが体験した異常事態の概略だ」
 広い会議室に、セインの声が響いた。彼の語り口の巧妙さと、説明された事態の異常さが、そこに居並ぶ人々に息を呑ませ続けたせいだろう。セインが話し終えてもまだ、会議室は静まり返っていた。
 巴術士ギルドの置かれた、メルヴァン税関公社の会議室。
 居並ぶ面々は、以下の人物だ。
 考古学者、レース・アルカーナの発見者。ヤヤカ・ヤカ。
 その護衛役、ヤフェーム湿地でヤヤカと共にレース・アルカーナを発見した冒険者。テオドール・ダルシアク。
 呪術士ギルドマスター、ココブキ・ロロブキ。
 錬金術師ギルドマスター、セヴェリアン・リクター。
 ガーロンド・アイアンワークス社技術者、元ガレマール帝国魔導技師、エミディオ・ゼローラ。
 巴術士ギルドマスター、ク・リド・ティア。
 黒渦団少甲佐、ナクトロナ・グリムスウェルドウィン。
 今回、レース・アルカーナの輸送を担当した冒険者、セイン・アルナックとルクレツィア・エゼキエーレ。
 それから、部屋の片隅に立つヤヤカの側仕え、クラリッサ・リーガン。
 
 洋上で突如として“球体”へと変化したレース・アルカーナは、セインたち一行を未知の洞窟へと転移させた。そこにはヤフェーム湿地の遺構で行方不明になっていたギードら『護衛チーム』の三人が異形化して存在し、彼らを撃破したセインたちは再転移で元の海へと戻された。
 そして――レース・アルカーナは海上へ没し、物理的な視界からもエーテル視界からもうかがい知れない状態になってしまった、という。
 未曽有の異常事態であった。
「黒渦団から補足があります」
 沈黙を終わらせたのは、ゼーヴォルフの女だった。ルガディンらしい高い身長だが、どちらかと言えば細い方だろう。複雑に結い上げた黒髪。長い睫毛に縁どられた瞳と泣きぼくろが、謎めいた雰囲気を女に与えている。夜の酒場か、薄暗がりの路地の占い師が似合いそうな雰囲気。だが、そんな彼女が、赤と黒を基調とした黒渦団の将校服を一部の隙も無く着こなしている。立ち上がり説明を始める所作は実務的で、立ち姿も凛としている。
 たおやかさと武人の気配を同居させた、不思議な雰囲気の女だった。
 カルテノー帰りの冒険者という経歴を持ち、今は黒渦団の諜報を担う『特務大隊』に所属する将校。
 その旨の自己紹介は会議の冒頭ですでに済んでいる。ナクトロナは速やかに本題に入った。
「今回の事件に巻き込まれたフェリーは、ドックにて我々特務が調査中です。ゆえに我々の最終的な見解は、この場では控えさせていただきます。ですが」
 一旦言葉を置くと、ナクトロナは床に置いていた箱を会議室の机上へと移した。手提げの取っ手が付いた、ヒューランの兜がすっぽり収まりそうな大きさの箱だ。
「こちらをご覧ください」
 蓋を開けると、彼女のルガディンとしては白い繊手が中の物体を机上へ置いた。
 それは、巻貝の殻に見えた。殻の外縁に細かな棘が生えている。
「む……?」
 セヴェリアンが眉を顰める。
「ノーチラスの殻に似ているが、別種だな」
 皆も同様に殻を覗き込む。
「これは、フェリーの船底に付着していた巻貝の殻です。海中から引き揚げた途端、ご推察の通りノーチラスに酷似したその身体は溶け崩れたと報告を受けています。おそらくは、エーテル還元されたものかと」
「触らせてもらってもいい?」
 軽やかな声がした。巴術士ギルドマスター、ク・リド・ティアだ。どうぞ、と言いながら、ナクトロナは席を立ち直接ク・リド・ティアへと貝殻を手渡した。
「……」
 見つめ、角度を変え、また見つめる。それを何度か繰り返す彼を、一同は黙って見ていた。
「類似したものを、見たことがあるね」
「え……!」
「ほう、興味深いですねえ」
 微笑みながら、ク・リド・ティアは貝殻をナクトロナへ手渡した。
「特務の君なら、例の海兵くんたちを通して知ってるんだろう?」
「――はい」
 ナクトロナが頷く。それから、皆へ向き直った。
「この貝殻と酷似したものが、ある遺跡――いいえ、神殿から発見されています」
「――神殿……。それは、もしやワンダラーパレスのことですか」
 テオドールの問いを、ナクトロナは微笑みながら肯定した。
「はい。第七霊災の影響で封印が解かれた、旅神オシュオンの聖域。――第五星暦の海洋都市ニームのものです」
「ニームの!?」
 その名を聞いたヤヤカが驚きの声をあげる。第五星暦の魔法都市マハを研究する彼女からしてみれば、同時代の遺跡には値千金の価値がある。
「かの神殿は、先ごろ“光の戦士”が探索に成功し、……内部に封印されていたニームの人々とも交流が始まりました」
 ナクトロナが置いた微妙な間を理解したのは、ク・リド・ティアのみだった。その彼も口を差し挟まなかったため、ナクトロナの言い回しに疑問を抱いたものはいなかった。
「ニ――ニームの人が……第五星暦の人が生存しているの!?」
 ヤヤカは叫んだ。マハの実在を『遺跡の発見』によって証明しようとしているヤヤカにとって、マハと同時代の人間がいることはあまりにも衝撃的な事態であった。その人物からマハの存在を聞くことが出来れば、ヤヤカの研究の一端は完了してしまう。
 『マハは実在する』――同時代の人間がそう証言すれば、マハは実在の都市であったということになる。マハの遺跡を求めることは、『それは幻ではない』と証明することから、実存的証明をするためのものへと変わる。
 席を立ちナクトロナへ詰め寄ろうとするヤヤカを、ナクトロナ自身が手のひらを向けて押し留めた。
「お待ちを。ニームの人々は、ある事情によってワンダラーパレスから出ることを望まず、また交流に関しても始まったばかりです。どんな言葉が、彼らを刺激するか分かりません。お気持ちは理解しますが、今は堪えてください」
 立て板に水の説明に、ヤヤカは立ち止まらざるを得なかった。
「……伝承によれば、マハはその恐るべき力で他の国家を脅かしていたのではなかったですかねぇ?」
 ココブキが指摘する。その通りだった。おとぎ話のマハは、怪物を使役し、人を怪物へと変え、隕石を落とす。『悪い魔法使いたち』――それが、マハだった。
「もし、マハが伝承の通りなら、彼らにとっては思い出したくない記憶なのではないでしょうか」
 エミディオがぽつりと言った。『他国を侵略し、支配する』――マハと同じことを行っているガレマール帝国の、元技術者である彼の発言は、ヤヤカには一際重みをもった言葉に聞こえた。
「…………そうね」
 冷静になったヤヤカが、席に戻る。
「ごめんなさい。取り乱してしまって」
 謝罪をして、座る。理解はしたが憔悴はする。唇を噛んだヤヤカの手を、隣に座るテオドールがそっと握った。思わず見返したヤヤカへ、彼は無言のまま頷いた。
「ふむ。その殻はワンダラーパレスで得られたものと共通点がある――つまり、フェリーが転移して連れていかれた場所には、第五星暦の生物が住んでいたことになる。……加えて」
「はい。我々がヤフェーム湿地の遺構で転移させられたと思しい場所と、セインが語るその洞窟には共通点がありました」
「さらに妖異化した三人のこともある。少なくとも、レース・アルカーナは第五星暦のモノだと結論付けてよかろう。――しかし、惜しいな。この場にそれがあれば……」
 セヴェリアンの嘆きに、セインが首を振った。
「いや。もし確保できていたとしても、この場には持ってこなかっただろう。アレがなぜ起動し、我々を転移させたのかの理由が不明だ。もしこの都市で同様のことを引き起こされた場合、人々を守り切れる自信は無い」
「黒渦団としても、彼と同じ見解ですね」
「む……」
「――ワンダラーパレスに残されていた文献に、こう記されていたよ」
 ク・リド・ティアが、歌うように言った。

『銀の大怪球により隣国呑まるる。
 其は魔都マハの生み出せしものたるか、いかな禁術が其を生みしか。星の理に従わざる禁忌の術なり』
 
「それって……!」
「話を聞きながら思ってたよ。ソレは、コレなんじゃないか、ってね」
「銀の――」
「大怪球、かよ」
 セインの言葉をルーシーが継いだ。振り向いた皆に、セインが補足する。
「俺たちが見たレース・アルカーナの変化体は、小さかった。あの板の全長のまま、球体に変化したように見えた。大怪球と呼ばれるようなものではなかった」
「……成長するのでしょうかねぇ」
「もしもその大きさに、『吸い込める』範囲が比例するのなら。大怪球と呼ばれるほどのソレが、『国を呑む』こともあり得るかもしれません」
 ココブキの言葉を受け、エミディオが推察した。
「残念ながら、ソコにはそれだけの記述しか残されていなかったよ。文書自体も劣化していてね。だからそれ以上のことは僕にも分からない。けど、ソレがマハの技術で作られたものではないか、と仮定することに異論はないよ」
「私も同意しよう。第五星暦にマハと呼ばれる都市が実在したこと、レース・アルカーナがマハの産物であること。この二つは結論として導き出して相違なかろう」
「そして『生きた』マハの遺物を採集できたことも大きいですねぇ。ククク……失われてしまいましたが」
「ええ。あの遺構は潰れてしまいましたが、かの地にはマハの遺跡がまだ残っているのではないでしょうか」
 テオドールがそう発言しているのを、ヤヤカは半ば呆然と聞いていた。
 幼いころから、夢見ていたこと。
 マハはある――そう信じて、研究を続けたこと。
 たくさんの失敗と、言い表せないほどの苦痛と。
 それが、今。
 まだ、夢の半分も叶ってはいないけれど。でも。
 マハは、あった。
 第五星暦時代に、マハという都市が実在した。
 それを、その主張を、認めてもらっている。
 エオルゼアを代表するような知の巨人たちが、認めてくれている。
 ああ。
 なんて――
「ヤヤカさん?」
 テオドールの声に我に返る。皆が、ヤヤカを見ていた。
「あ……ごめんんさい、ぼうっとしてて……」
「エミディオが」
「え?」
「彼が、画期的な提案をしてくれました」
 エミディオを見ると、細面のガレアン人は少し緊張した面持ちで頷いた。
「飛空艇を出せるよう、社に掛け合います」
「え」
「今回のように地下に遺構が存在する場合は発見できませんが、それ以前に上空から観察することで湿地の全体が観測できます。もし地上に露出する遺跡があれば、それも発見できるかもしれません」
 それは、探索計画の最初期に放棄したプランだった。とても資金が足りず、断念したのだ。それから、ビアストの金が使えるようになっても、そのことをずっと失念していた。
「いいの……?」
「はい。会長なら、きっと賛同してくれるはずです」
「ホントかー? 会長はよくても、『会長代行』は怒るぞー?」
 ルーシーの指摘は痛いところ、というよりエミディオが敢えて見ないようにしたところを突いたらしい。うぐ、と言葉を詰まらせてエミディオは黙った。
「ロハで動かせばそうだろうさ。ジェシーが考えているのは社の存続だ。『帝国からの亡命者の受け皿』としての会社を失くすわけにはいかないという、使命感がそこにはある」
「まーそーだけどさ、セインはジェシーの肩持つよなー!」
 ジト目でセインを見るルーシーには答えず、セインはエミディオだけではなく全員に向けて言った。
「だから、ビジネスモデルとして確立できることを示せばいい」
「どういうこと?」
「“空から見る”行為は、今回のように全体像を把握するための調査法として有用だ。その行為は、研究のみならず建築や交易でも役に立つだろう。今回の調査で、それが宣伝になるとすれば、会社の利益になる。反対される要素は薄いぞ」
「ああ……!」
 エミディオが深く納得した顔で何度も頷いた。
「ふむ。ココブキ・ロロブキ、ク・リド・ティア。提案なのだが」
 セヴェリアンが思案顔のまま言う。
「この話、各ギルドからも資金援助せんか? 魔法、錬金術。それら『エーテルの変容』を扱う技を学び極めようとする我々にとって、マハを知ること、マハの技術を知ることは新たな知見への一歩と感じるのだ」
「セヴェリアン!?」
 二人のギルドマスターよりも先に、ヤヤカが驚きの声を上げた。完全に想定外の提案だった。
「ククク……断るいわれはありませんねぇ。我々自身の源流に関わる話です。そうですねぇ……ナル・ザル教団にも話をしておきますか」
 最後の言葉は独り言であり、ヤヤカたちに聞き取れる言葉ではなかった。
「巴術士ギルドはどうするのです?」
 水を向けられたク・リド・ティアは、肩をすくめた。
「僕個人は構わないんだけどね。ギルドとなると」
「かまいませんよ」
 背後から声が掛かった。ク・リド・ティアは驚かず、むしろ微笑んだ。読んでいたのだろう。
 彼の背後にあった扉から、巴術士ギルドのギルドマスター代行、トゥビルゲイム・グルドヴァイツウィンが現れていた。
「話はおおむね聞いていました。珍しくも我らがマスターがその気なのでしたら、ギルドとしては異存はありません」
「だってさ」
 青い瞳の美青年に、よかったね、と笑いかけられて、ヤヤカは少しだけどきっとした。
「よし決まりだな! ヤヤカ・ヤカ、お前の資金と合わせ、我々からも資金提供させてもらおう。――そういうわけだ、エミディオ。天下に冠たる三ギルドが名を連ねる案件だぞ、ビジネスチャンスだ! と売り込んで来い!」
「はい! 承知しました!」
 エミディオが破顔した。いやどんだけ安心してんだよ、とルーシーが言って笑った。

 会議はその後、この集まりを継続的に開くことを決定し閉幕となった。
 テレポで帰るというセヴェリアンとココブキは早々に退場し、エミディオは飛空艇使用の許可を得るために帰社した。
 ナクトロナは調査へ戻り、ク・リド・ティアはルーシーと連れ立って外へ出た。
 ヤヤカとテオドール、クラリッサ、それからセインは、連れ立って八分儀広場まで歩いてきていた。
「今回は、すまなかった。依頼を果たせずに終わってしまった」
 セインの言葉に、ヤヤカは首を振った。
「いいえ。貴方の判断を尊重するわ、セイン・アルナック。それから、想像以上の危険な事態に遭わせてしまって、ごめんなさい」
「それこそ謝罪は不要だ。誰も、ああなるとは思わなかっただろう」
 言いながら、セインは胸の内で自らの言葉を否定していた。ただ一名だけ、『こうなる』と思っていてもおかしくない者がいる。だが、その者の思考を測ることは難しく、それを今彼らに告げても混乱させるだけだからだ。
 レース・アルカーナの消失で、その者――グレイが、ヤヤカたちへの“配役”を終わりにしているとよいのだが。
 思考を断ち切るように、セインは言った。
「妖異化した三人以外に、犠牲者が出なかったことは幸いだった」
「ええ。無事でよかったです」
 テオドールが応え、続けて言った。
「貴方たちが来てくれれば心強いですが、そうもいかないのでしょうね」
 ああ、とセインは返答した。迷いのない早さだった。
「お前とお前の仲間たちなら、この冒険をやり遂げられるだろう。――もし、どうにもならない事があれば、声を掛けろ」
「はい。そのとき貴方が何処にいるかにもよりますが」
「違いない!」
 セインは破顔した。セインの旅は、ときにエオルゼアを超え、他の大陸へと及ぶことすらある。次にいつ会えるかなど、セイン自身でも分からないだろう。
 それでも。
 この歴戦の冒険者は、いつでも誰かのために戦っている。戦う力を、あらがう力を見失った人々へ、手を差し伸べ続けていくのだろう。これからも。
「またな、テオドール・ダルシアク」
「貴方も。セイン・アルナック」
 別れの合図に、互いの盾と盾を軽くぶつけ合う。セインとの別れは、いつもこうだ。
 ヤヤカとクラリッサにも挨拶をして、セインが雑踏へ消えていく。
 あの憧れた背中に、少しは近付けているだろうか。
 憧憬と尊敬を込めて、テオドールはその背が見えなくなるまで、彼を見つめていた。

(一章後編に続く)
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