Charakter

Charakter

Juliette Blancheneige

der lebende Schild

Alexander [Gaia]

Du hast keine Verbindung zu diesem Charakter.

Erlaubnisanfragen

Um diesem Charakter zu folgen, ist eine Erlaubnis erforderlich. Möchtest du eine Erlaubnisanfrage stellen?

  • 2

『Light My Fire』1(後)(『Mon étoile』第二部四章)

Öffentlich
1-4
 
 桟橋を過ぎる。広間になっている場所に、様々な物資といくつかのテントが張られていた。
 広間の端に、槍のように突き出た構造物がある。その突端、落ちれば雲海へ真っ逆さまという場所に、兜を被っておらず赤い髪をなびかせた、一人の竜騎士が立っていた。
「いたぞ。エー……」
 セドリックが竜騎士へと声を掛けようとした刹那、メイナードは背の槍を抜き放つと走り出し、突端の竜騎士――エール・レッドグレイヴへと襲い掛かった。
「な……!」
 セドリックの驚く声が一瞬で遠ざかる。突端へ向けてジャンプ。わずかでもずれれば雲海へ落ちていく場所だが、メイナードは恐れない。一方、襲い掛かられたエールも即座に反応している。メイナードの跳躍より僅かに迅くスパインダイブ。
 位置を入れ替えた形だが、エールのスパインダイブがメイナードのいる位置へ跳躍してそのままなのに対し、メイナードのジャンプは踏み切った場所へと一挙動で戻る。つまり、メイナードが戻ってきた場所にはエールが待ち構えていることになる。
「――ッ!」
 鋭い呼気と共に、エールの槍がメイナードの喉元を狙い繰り出される。それをわずかな首の動きだけで躱しながら、メイナードがエールの眉間目掛けて槍を繰り出す。
「ハァッ!」
 沈み込んで躱したエールが、しゃがみこみながら槍の石突を横薙ぎにする。閃光のような足払いを、メイナードはイルーシブジャンプで後方へ飛び退き避け――スパインダイブ。
「るぁッ!」
 気合と共に繰り出される跳躍攻撃を、エールは前へ飛び出して躱す。振り向きざま繰り出すエールの槍と、着地と同時に放たれたメイナードの槍が、甲高い音を立ててぶつかり合う。
「へッ!」
「ハッハァ!」
 歯を剥き出して、笑う。一瞬の空隙の後、両者は凄まじい槍技の応酬を開始した。
 セドリックたち竜騎士団のものがあっけにとられる中、後から現れたレオンが言った。
「放っておけばいい」
 何を言うのかと振り向いたセドリックに、レオンが続けて言った。
「言葉では語り尽くせぬモノがあるから、ああして槍で語っているんだろうさ。バカにはバカの言語があるのだ」
 セドリックは二人を見て、それからもう一度レオンを見てから、再び戦う二人を見た。
 それから、首を振りながら呻いた。
「……わからん……」

 やがて。
 撃ち合いの後距離を取り、間合いを取って構えていた二人は、唐突に吹き出し、盛大に笑いだした。槍をしまい、互いに歩み寄る。
「元気そうじゃねえか、兄弟!」
「アンタもな! 腕上げたじゃねえか、兄弟!」
 握手のように差し出した手で、互いの手を叩き合う。
 その二人目掛け、レオンの回復魔法が飛んだ。
「世話の焼ける奴らだな。よもやま話は終わったか?」
 誰だコイツ、という顔をしたエールに、レオンがすかさず言った。
「レオン・アストルガ。占星術師だ。お前の隊に協力する占星術師とは、俺のことだ」
「おおそうか! 着任そうそうすまねェな! 隊長のエール・レッドグレイヴだ!」
 エールは破顔する。それから、レオンの傍らのセドリックに向き直った。
「待たせてすまねえ。引継ぎしようぜ……って、なんだよ」
 じっとエールを見つめたセドリックは、その後苦笑して首を振った。
「いや。お前は随分と私たちに合わせてくれていたのだな、と思っただけだ」
 きょとんとしたエールの肩を叩き、セドリックは天幕の方へと向かう。
「手短に済ませよう。休暇なしですまないが、お前には次の任務があるからな」

1-5

 セドリックの隊へ『竜の巣』の監視業務を引き継いだエールは、メイナードやレオンを伴い砦の屋上へ来た。エールの部下だという、二人の竜騎士も一緒だ。
「さてと。顔合わせって奴だな」
 エールはそう言って、二人の部下にメイナードを示した。
「こいつはメイナード・クリーヴズ。俺の兄弟弟子で、冒険者だが凄腕の竜騎士だ」
「褒めても何にもでねえぞ」
 メイナードが苦笑する。それに笑いながら、エールがレオンのほうを向く。
「で、こいつがレオン・アストルガ。俺たちに協力してくれる、“戦場で助けてくれる”ほうの占星術師だ」
 エールの物言いには、イシュガルド式占星術と、それを扱う占星術士たちに対しての揶揄が込められていた。それを汲んでか知らずか、レオンは大きく頷いた。
「俺を引き当てた時点で、お前たちの運はかなりいい。星の導きとは自らの手で引き寄せるもの。お前たちの意思を、俺が束ねて引き寄せてやる」
 滔々と語られた言葉に、レオン以外の者は全員首を捻った。エールが問う。
「つまり、何だ?」
「楽勝だ!」
 周囲に響き渡る大声。エールは手を叩いて笑い、メイナードは肩をすくめた。ふたりの竜騎士は、片方は口をへの字に曲げて不満を表明し、もう一人はにこにこと微笑んでいた。
「心強えな! よろしく頼むぜ、レオン。――じゃああとはお前らだな」
 エールの声に、二人の竜騎士は兜を外した。白に近い銀の髪のサンシーカーの少女と、薄茶の髪のミッドランダーの青年だ。
 サンシーカーの少女が敬礼する。背はかなり低い。ツリ目で、勝気かつ真面目な印象を受ける。肩口で切りそろえた髪が揺れた。
「エール隊所属、カリンであります! まだ未熟で至らぬ点はありますが、いつかお二人と肩を並べられるような竜騎士になりたいです!」
 きびきびした声で告げる。エールに向ける視線には、尊敬と――敵愾心が込められていた。
「カリン」
「はい」
 エールが今までとは違う、遊びのない声で彼女を呼ぶ。その声の変化に気付いたカリンの声は緊張していた。
「“いつか”じゃダメだ。それじゃあ、いつまで経っても追いつけねえぞ」
「は――はい」
「声に出す必要はねえ。だが、自分の中で目標を立てろ。何日後までに一発当ててやる、何日後までに仕合で勝つ、ってな。できなかったら、改めて自分に何が足りないか考えろ」
「はい……!」
 ありがとうございます、とカリンが頭を下げる。おう、とそれに応じるエールを見て、メイナードは微笑んだ。なんだよ。コイツはコイツなりに上手くやってんじゃねえか。
 次、と言われたミッドランダーの男が、きょとんとした。自分を指差し、オレ? と言った。
「オマエ以外に誰がいるんだ」
 カリンが呆れた顔で言った。ははは、と笑ってから、青年は間延びした言った。
「フレデリック・フィッツジェラルドっす。新人です」
 にこにこした顔のまま、青年――フレデリックは黙った。
「おい?」
 カリンが睨む。
「はい?」
 フレデリックがきょとんとする。
「はいじゃないだろ。自己紹介なんだから、もっと自分の目標とかやる気を表明しろ!」
 カリンの自己紹介の定義も大概だとメイナードは思うのだが、言われたフレデリックは「そうっすか」などと返事をしている。
 それから、フレデリックは前を向いて明瞭な声で言った。笑みを消した、淡々とした顔だった。
「自分は家族の誰も殺されていません。ドラゴンに恨みはありません。――でも、友達にはいます。独りぼっちになったやつらが、空を見上げることができなくなったやつらが、たくさんいます。そういう奴らを、昼間笑って夜ベッドの中で泣き続ける奴らを増やさないために、竜騎士になりました。以上っす」
 言い終えてから、フレデリックは自分の胸くらいの位置にある、カリンのほうを向いた。当のカリンは、フレデリックのほうを向いて驚いた顔をし続けていた。
「こんなもんで、どうっすか」
 我に返ったカリンが慌てて取り繕う。
「な――なんだ、やればできるじゃないか!」
「どうもっす」
 いつものように茫洋とした受け答えに戻ったフレデリックに、エールが言った。
「近い将来、竜騎士団にもお前のような奴らが増えるだろう。――増やしていかなきゃならねえ。わかるな?」
「あ、はい」
「オマエはどうしてそう……」
 小言を挟むカリンを見て、エールは笑った。それから、声と表情を改めて、告げた。
「“真実”は聞いたな。無論、そいつは大事で、俺たちはとんでもねえ勘違いをしてた。……だが、だ」
 『竜の巣』を見る。
「“今”を生きる俺たちが、現実に邪竜の眷属に襲われるのは確かなんだ。千年前の人間にどれだけの罪があろうが、それを許容して皆殺しにされるわけにゃあいかねえ」
 エールは視線だけを動かして、メイナードとレオンを見た。
「さっきのフレデリックの話。『空を見上げることができない』って意味、わかるか」
「……悲しみに項垂れてるって意味……だけじゃあなさそうだな」
 頷いて、再び口を開く。
「『ドラゴン族は空から来る』」
「……!」
「無論それに限らねえが、多くの竜はそうする。だから、もう怖くて空を見上げられねえんだ」
「……変えねばならんな」
 レオンが重々しく言った。そこには深い共感が感じられ、この奇矯な占星術師がただの学究の徒ではないことを感じさせた。
「そうだ。俺たちは」
 空を見上げ、エールは槍を空へ突き上げた。
「『竜騎士が空にいる』……それを希望の言葉に変える。復讐や報復じゃなく、そいつを心に抱えても、飛ぶのは未来のためだ」
 はい、とカリンが返事をした。
「必ずや」
 まっすぐ前を見て、短く告げられる言葉。それにフレデリックが続けた。
「どうせ飛ぶなら、笑ってがいいですもんね。自分なりに、頑張ってみます」
 緩く聞こえる回答にカリンがじろりとフレデリックを見たが、コメントまではしなかった。
 メイナードは。
「心配なかったな」
 ぽつりと呟いたが、それは誰にも聞かれることはなかった。
 全く心配なかった。コイツはちゃんと折り合いを付けてた。メイナードは安堵して微笑んだ。
「て、ことで」
 エールが皆を見渡した。
「顔合わせは終わりだ。――で」
 エールはメイナードのほうを向いた。
「俺たちはこれから新しい任務でここを離れる。そいつに付き合えよ、兄弟」

1-6

「付き合うのは構わねえが、内容を教えろよ」
 場合によっちゃあ他国人がいていいのかって話になんだろ、とメイナードは続けた。
「今回はそういう話じゃねえよ」
 言いながら、エールは『竜の巣』を見た。
「アレをどう思う」
 雷を纏う紫雲に覆われた巨城。飛空艇で見た時よりも近くから見るそれは、やはり揺るぎない威圧と――意志を感じる。
「……主がいなくなった城には見えねえ」
「だろ?」
 エールが請け合った。
「邪竜の眷属どももな。連中、意気消沈してる様子が全然ねえ。各地でなりを潜めて……力を蓄えているように見える」
 エールによれば、ここでの監視を続けている間も、頻繁にドラゴンたちの出入りがあるという。亡き主を慕って……という素振りは全くない。
 つまるところ、邪竜の軍勢は、これっぽっちも弱体化していないのだ。
「で、だ。そんな『竜の巣』から移動した一団がある。
 邪竜の眷属のなかでも“ロード”と呼ばれるエルダードラゴン。凶暴な幹部連を仕切る、番頭みてえな役割だと推察されてる、フェルニゲシュとその軍団だ」
「参謀的な奴か」
「ああ。――さっきも言ったが、あそこへの出入り自体は頻繁にある。だが、軍団まるごと率いてってえのは無かったことだ。俺たちは、それを追う」
 メイナードは頷いた。すでに、エールの話に乗る気しかない。
「行先に見当は」
「いや、低地ドラヴァニア方面へ動いた、ってことまでしか分からねえ。だから、まずはそこへ行く」
「やり合う可能性が十分ある、ってことだな。腕が鳴るぜ!」
 恐れ気もなく歯を剥き出して笑うメイナードに、にやりと笑ってエールが拳を兄弟弟子の胸に軽く打ち込んだ。
「おうとも。暴れまくろうぜ!」

1-7

 だが。
 戦意剥き出しで飛空艇に乗り込み、低地ドラヴァニアで唯一の人間側拠点であるシャーレアン跡地――今はイディルシャイアと名を変えている――へ赴いたエールたちは、肩透かしを食らうことになる。
「飛んでったぁ?」
「ああ。こっちも一時大騒ぎだったんだけどね。連中、ここを飛び越えてさらに先へ飛んでっちまったよ」
 ミッドナイト・デューという名の、ここを根城にしているトレジャーハンターのまとめ役をしている女はそう言って肩をすくめた。
 イディルシャイアはゴブリンと人が共同で暮らす奇異な街だ。歴史に名高いシャーレアンの『大撤退』以降放棄され、廃墟と化していたこの街を、ゴブリンたちと人間のトレジャーハンターや冒険者たちが復興させようとしている。
 レヴナンツトールみたいなもんだな、とメイナードは思った。
 低地ドラヴァニアに着いてもドラゴン族の影も形も無く、訝しんだエールたちはこのイディルシャイアへと寄港した。
 その際多少の悶着があったのだが、どうもイディルシャイアの住人たちは、大げさに言えば『イシュガルドが攻めてきた』と思ったらしい。たまたま冒険者ギルドに属する冒険者がここに滞在しており、彼がメイナードと顔見知りで会ったことでトラブルは未然に防がれた。
 知己から人間側のまとめ役を聞き出し、一行はミッドナイト・デューへと話を聞いたのだった。
「ここを過ぎて飛んで行ったとなると……」
 カリンが、ミッドナイト・デューが示した『ドラゴンたちが飛んで行った方角』を見る。
「海っすねえ……」
 フレデリックが嘆息して言った。この先は蒼茫洋。遥かな西の新大陸まで続く大海が広がっている。
「あたしらはもっぱら陸路でやり取りしてるから、海の方は詳しくないねェ。あんたらが乗ってきた飛空艇で追いかけりゃいいんじゃないの?」
 ミッドナイト・デューの問いに、エールが首を振った。
「当てもなく飛び回れるほどの燃料は積んでねえんだよ。――クソッ、どこまで行ったか見当もつかねえ」
「……ふむ」
 腕組みをして事の成り行きを見ていたレオンが、メイナードに問うた。
「たしか、エオルゼアには海に詳しい国家がなかったか」
「リムサ・ロミンサだ」
 メイナードが答える。たしかに、船乗りならば何か情報を持っていそうだが……。
「つってもな……『国』レベルじゃあ動きようがねえな」
 エールが苦々しく言う。イシュガルドは鎖国を解いているわけではない。国と国同士の正式な外交ルートは未だ閉ざされたままだ。
「……」
「……」
「……」
 沈黙が続いた後、エールがぼそりと言った。
「手が無えわけじゃねえ」
 皆がはっと顔を上げる。
「……が、国の看板背負ったままじゃあ無理だな。とっぱずすか」
 気軽に言われた言葉に、カリンが「は!?」と驚いた。レオンは無言で、フレデリックはきょとんとしていた。そして、メイナードは手を叩いて笑った。
「ははっ、変わんねえなオマエそういうとこ」
「いや、変わったぜ」
 ニヤリと笑うと、エールはメイナードへ片目を瞑ってみせた。
「なぜなら、俺はこれから神殿騎士団に話を通しにいくからな!」
「すげえな!」

1-8

 飛空艇を最大限活用し、エールたちは皇都へと舞い戻った。
 そのまま神殿騎士団本部まで直行する。
 本来ならば話を通す相手は竜騎士団の団長である“蒼の竜騎士”エスティニアンなのだが、彼は現在光の戦士と共に皇都を出て帰っていない。二席であるウスティエヌも行方不明の状態とあって、重要な決定事項はそのまま神殿騎士団総長へと回されることが多かった。
「だが、こんな時期だ。総長に面会なんざ通らねえだろうよ。だから――」

「……だから、私のところへ来たと言うわけか」
「おう」
 頷くエールに、神殿騎士団コマンド、ルキア・ゴー・ユニウスは嘆息した。総長アイメリクの片腕であり、実際のところ政務に忙殺されているアイメリクに代わって騎士団内部の統制責任者のようになっているのが彼女である。エールの選択は間違ってはいないのだが。
「君はたしか、二週間前も聖フィネア連隊と“勝手”に共同戦線を張って、彼らへの報奨金を出してくれと言って来たな」
「おう。連中上手く追い込んでくれたしな。報酬弾むのは当然だろ」
「……その前は、ストーンヴィジルの対竜バリスタを無断で持ち出したんだったか」
「無断じゃねえよ。だからアインハルトに詫び入れてくれって頼みにきたんじゃねえか」
「……」
 メイナードが笑いを堪えている間、ルキアは軽くエールを睨んでいたのだが、エールはどこ吹く風だ。
「それで」
「おう」
「今度はどんな無理難題を持ち込みに来たんだ」
「そう大した話じゃねえよ。まあ聞いてくれ」
 訝しがるルキアに対し、エールはフェルニゲシュの軍勢が蒼茫洋へと向かった話を語った。
「たしかに気になる話だ。ほかならぬ邪竜の眷属、それもフェルニゲシュほどの竜が、竜詩戦争に関係しない行動をとるとも思えない。――しかし、どうやってかの海都と交渉するのだ? 分かっていると思うが、今我々は政治的には危ういところにいる。非公式にしても公人の派遣は厳しいぞ」
「わかってる。直接リムサには行かねえよ。だが、俺は『暁』に個人的なツテがあってね」
 ほう、とルキアは感心した声を上げた。
「……なるほど。『暁の血盟』か」
 現在のイシュガルドはエオルゼア同盟軍に参加しておらず、彼らと協調している『暁の血盟』とも公式のルートは無い。だが、かの光の戦士をはじめとする『暁』の者たちは、イシュガルドのために、今も戦ってくれている。
「……彼らの協力を得られるなら、あるいは……か」
 しばし黙考したルキアは、顔を上げると言った。
「了解した。――ただし」
 真っ直ぐにエールを見て告げる。
「“今回は”、肩書を捨てなくてもいい。任務として行ってくれ」
「――!」
 少し驚いた顔をしてから、エールは笑顔で頷いた。
「ああ。期待しててくれ」

1-9

 クルザスから、モードゥナのレヴナンツトールへ一行は移動した。
 ここへ来るまでに多少の悶着はあった。
 エールは当初、自分とメイナードだけで動こうとしていた。カリンたちをドラヴァニア雲海へと戻そうとしていたのだが、彼女の強固な反対にあってそれを断念したのだった。
「そもそも『任務として行ってくれ』と言われただろう。あれは勝手に個人で飛び出していくなよ、という意味だぞ」
 レオンがそう言って呵々大笑し、ぐうの音も出なくなったエールは観念してカリンとフレデリックも連れて行くことにした。

「ここがレヴナンツトール……! クルザスからそう離れていないのに、全然寒くないですね」
 感心して周囲を見渡すカリンと、その傍らに立つフレデリック。二人は装備を冒険者風のものに改めていた。ふたりの真新しい装備と違い、エールのそれはそれなりに使い込まれたものだ。
「お前実は結構ここに来てんだろ」
 メイナードの指摘に、エールはとぼけた顔で腕を広げた。
「休暇をどこで過ごそうが、俺の勝手さ」

 五人は『セブンスヘヴン』という名の酒場へ入る。
 それなりの広さの酒場は、冒険者たちでひしめいていた。
「ここで待ち合わせなんですか?」
「ああ――」
 カリンの問いにエールが答えかかったところで、
「エール! ひっさしぶりー!」
 奥のテーブルから声と手が上がった。
「おう!」
 応えて、エールが奥へと進む。いつもの明るさとも違う、柔らかな笑みを浮かべて。
「今日は話もあるんだから、あんまり飲むなよ!」
「だいじょーぶだって! 今日は全然抑えてるよ!」
 すでにテーブルの上に数本の酒瓶を並べた状態で、彼女――アーシュラ・ギブソンが軽快に笑った。

『Light My Fire』2(前)へ続く
Kommentare (2)

Juliette Blancheneige

Alexander [Gaia]

Juliette’s note
カリン(k'ahlin) 、ク族です。
部族名と名前は(発音できるなら)続けて発音するもの、というサンシーカーの命名規則に則っています。

Juliette Blancheneige

Alexander [Gaia]

イディルシャイアで相談するシーン、「……」は黙考を表しているのですが、三つしかありません。
五人中二人は黙っているだけで考えていませんw
Kommentar verfassen

Community-Pinnwand

Neueste Aktivitäten

Die Anzahl der anzuzeigenden Einträge kann verringert werden.
※ Aktivitäten, die Ranglisten betreffen, werden auf allen Welten geteilt.
※ Aktivitäten zur Grüdung von PvP-Teams können nicht nach Sprache gefiltert werden.
※ Aktivitäten deiner Freien Gesellschaft können nicht nach Sprache gefiltert werden.

Nach Art des Eintrags sortiert
Datenzentrum / Stammwelt
Sprache
Anzahl