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Juliette Blancheneige

der lebende Schild

Alexander (Gaia)

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『Sweetest Coma Again』5(『Mon étoile』第二部四章)

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5-1

 光溢れる広間。
 清浄な水が壁際を流れ、高い高い天井はそれ自体が白く輝いている。無尽の光のなか、一人の青年が広間の中央に立っている。
 純潔派『四善』の一人、『徳義(モラリティ)』――エレフテリオス・ラエル。
 彼を囲むように、三人の男女が広間にいた。
「お帰りぃレフぅ。姫様の独断専行にも困りものよね?」
 エレフテリオスの左手側、華奢な椅子に浅く腰掛け、脚を艶めかしく組み替える女。『公平(インパシアリティ)』――アステラ・ユーフェミア。
「いいえ。これは貴方の過失ですよ、『徳義』。貴方が付いていながら、姫様を傷つけた。これは由々しき問題です」
 アステラの反対側、エレフテリオスの右手側に立つ、壮年の女が厳しい口調で非難した。『清慎(マデスティ)』――カティア・ガブリス。
 アステラが、服のデザインも着こなしも態度も扇情的であるのに対し、カティアは真逆だった。外連味の一切ない白いローブ。きつく結い上げた髪も飾り気はなく、化粧もしていない。痩せた身体。苛立たし気な表情。
「今ひとつ、重大な問題がある」
 エレフテリオスの正面、大きな扉を背に立っている男が言った。『恪勤(ディリジェンス)』――カリアス・フェトファツィディス。
 老年に差し掛かろうという年齢に見える、長身で細身の男。炯々とした眼光、高い鼻、薄い唇。その鋭い瞳が、エレフテリオスのすべてを見透かすように彼を見据えていた。
「姫様が連れて行った司祭たちから、なぜ聖印を回収しなかった?」
「なんですって!」
 エレフテリオスより早く、カティアが反応した。
「それでは外界の者どもが、この聖なる理想郷へ踏み込んでくるではありませんか!」
 カティアは嫌悪感を露わにして震える。
「エーテライトを封鎖しなければ――」
「その必要はない」
 エレフテリオスがカティアの言葉を遮った。遮られたカティアが色をなしたが、エレフテリオスは構わず続けた。
「聖印は、わざと残してきた。彼らは事前にこちらを調査し、聖印の機能に気が付いている」
「だからこそ!」
「あの場にいたのは、『リリ・ミュトラ』と『ラヤ・オ・センナ』だ」
 その発言は、エレフテリオス以外の『四善』たちそれぞれに反応を生じさせた。
「――!」
 カティアは驚き、目を見開いた。
「…………」
 カリアスは眉だけを動かした後、己の聖印に手を伸ばした。
 そして、アステラは。
「へえぇ?」
 にたりと笑った。憎悪が透けて見えるような笑みだ。視線だけをアステラに向けた後、エレフテリオスは言葉を続ける。
「彼女たちは『アイ・ハヌムの知識』を所持している。無論それだけで我らの計画の全容は知れまい。だが、秘匿されたまま続けることは難しくなる。そして、ラヤ・オ・センナに至っては、『国家公認白魔道士』としての力を行使している」
「なんということでしょう……」
 カティアが呻く。
「彼女の力によって、司祭たちは制された。この先も、その実力で我らに仇なすだろう。――だが」
 言葉を区切り、エレフテリオスは全員を見回した。
「彼女たちを同志とすれば、計画は万全となる。ゆえに、わざと回収しなかった」
「成程。この世界に来る、ということは、すなわち『理想郷』の住人となること、か」
 カリアスが得心して頷いた。
「彼女たちはここへ来るだろう。そして、彼女たち以外の戦力には見るべきものがなく、もしここへ同行されても取るに足らない」
 断言するエレフテリオスに、それでも、とカティアが噛み付いた。
「それでも、貴方が独断でそれを決めたことは僭越に過ぎます」
 不快感を隠そうともしない。彼女にとっては、ここは清潔で清廉で清浄な世界だ。そうあるようにするのが務めでもある。
「いーんじゃない? 何にも問題ないよ。――アタシがいるんだもん」
 アステラが、目を細めながら請け負った。淫靡な動きで舌舐めずりをする。すでに頬が上気していた。
「『公平』。油断してはなりません」
 カリアスが窘めた。視線をエレフテリオスへと移す。
「『徳義』。卿の判断を尊重しよう。だが、『粛慎』のいう通り、独断専行は計画に綻びを生じさせかねん。以後は慎むように」
「は」
 エレフテリオスは一礼した。その姿を束の間眺めたあと、カリアスは傍に立て掛けてあった儀仗を手にした。
「私は猊下に報告にゆく。『清慎』は引き続き、『夢幻球』の開通作業を進めよ」
「はい」
 カティアが恭しく礼をした。
「『公平』は出迎えの準備を」
「はぁい」
 座ったまま、ひらひらと手を振る。
「『徳義』」
「は」
「――姫様の“浄化”を確認せよ。その後、軽挙妄動を強くお諫めするのだ」
「畏まりました」
 エレフテリオスは再度礼をする。
「では。『完全なる調和世界のために』」
「『完全なる調和世界のために』」
 全員が――アステラさえもが――静かに斉唱した。それを見届け、カリアスが扉に消える。
 カリアスが退出したのを確認してから、カティアがその場を去る。残る二人に声をかけることはなかった。
 最後に残ったアステラがゆっくりと立ち上がると、エレフテリオスにしなだれかかった。
「レーフぅ」
 性的な意味をたっぷりと込めた囁き。対するエレフテリオスの反応は冷たく突き放したものだ。
「なにか」
「ぁん、つれない態度取んないでよ。ふたりきりじゃん」
 ごく軽く、エレフテリオスは溜息をついた。『徳義』ではなく、エレフテリオス・ラエルとして、彼はかつての級友へ顔を向けた。
「……そうか。では僕から言おう。アステラ、私情を挟むなよ」
 言われたアステラは、
「は?」
 きょとん、としてから――爆笑した。
「あははははは! いつの話してんのよ? アタシがそんなの気にすると思う!?」
 腹を抱えて笑うアステラ。それを、エレフテリオスは冷ややかに見つめた。
「思うから言ってる。僕は、君の執念を侮らない」
 その言葉で。
 うつむいて笑っていたアステラが、ぴたりと笑うのをやめた。
「……やっぱりアタシあんたが好き」
 顔を上げたアステラは、凄絶な笑みを張り付けている。
 嫉妬。憎悪。自負。執念。人の業を深く刻んだ顔。それは造形としては美しくはないだろう。だが、それゆえに息を吞む凄絶さを以って見る者の心を打った。
「こんな世界で、アタシを理解してくれるのはあんただけよレフ。あんたが――」
 くちづけできるほど近くまで顔を寄せて、囁く。
「姫様を想ってる気持ち残したまま、あんたを奪っちゃいたい」
 囁きながら、アステラの左目が白く輝く。それが強くなる前に、彼女の瞼が閉じられた。
「ぎゃッ!」
 呻いてアステラが床に転がる。その左瞼は、極細の“糸”で縫い留められていた。
「侮らないと言った」
 言い捨てて、レフはその場を去る。どこかで空気の動く気配がして、アステラの左瞼から糸が消えた。
「ぁあぁ……ッ!」
 床に伏したまま、アステラが嗚咽した。
「アタシは何も手に入れられない……一番の座も、誰かの心も……!」
 やがて、アステラはゆっくりと立ち上がる。仕草は艶めかしく官能的だったが、その瞳は虚空を――今ここにいない誰かへと向けられていた。
「許さない……全部……全部アンタのせいだよ、リリ……!」

5-2

「にわかには信じがたいが……」
 バティストは唸った。リリとラヤ・オから、彼女たちが関わることになった『アイ・ハヌム学園』の顛末を聞いた直後である。
 『四善』の一、『徳義(モラリティ)』の介入と撤退のあと、少なくない被害の出た双蛇党は退き、代わりにキャンプ・トランキルとクォーリーミルから鬼哭隊士たちが遺跡へと派遣された。
 一旦休息を取ったリリ達は、翌朝からことの顛末を、サイラスとバティストへ説明していたのであった。
「そもそも、その『夢の世界』での経験が実際の経験として今の自分に反映されている、というのが謎だな」
 腕組みをしたサイラスが眉を顰めて言う。が、すぐに苦笑した。
「……そうか。そもそも、その謎を解明するためにここで調査をしていたのだったな」
 ラヤ・オが頷いた。
「そ。そしてやっぱり一番疑いが濃く、各国から様々な碩学を招いて調査をしよう、という話になっていたその『珠』を奪われたのよ」
 溜息をつくラヤ・オに、リリが言った。
「つまりあの『珠』こそ、『夢幻のアイ・ハヌム』を発生させていた大元である……という証明になってしまったわけですね」
 結局、『純潔派』とは敵対せざるを得ない――というのが、彼らの結論だった。
 直接の証拠こそないが、周辺の住民を攫っていたのは彼らで間違いないだろう。そして遺跡から『珠』を強奪。二度の襲撃で、多くの死傷者が出た。

『この穢れた世界を浄化する、唯一正当なる教え』

『この星に生きるすべての“人”への、救済と断罪を』

「『純潔派』ってのは、そういう教義なのか?」
 サイラスの問いに、ラヤ・オは首を振った。
「いいえ。そこまでじゃなかった。確かに、調和と浄化を重んじて、世界の乱れを許さず……って教えるけど。それだから、魔大戦の元凶はマハにあり、って決めつけるし、彼らの全滅まで戦争継続を主張した。魔大戦当時に戦争を強力に主導した派閥だったのよ」
「…………」
 サイラスが特にコメントしないので、ラヤ・オは言葉を続けた。
「あたしは『内陣』じゃないかったから、その内側での教義はよくわからない。でも、決定的に変わったのは――おそらく第六霊災なのでしょうね」
「……『徳義』と名乗った、エレフテリオスが言ってましたね。霊災を経ても人は変わらなかった。それは正さねばならない、と」
 リリが眉をひそめた。
「彼らは霊災を世界再編の聖抜とでも思ってたんでしょうね。確かに、そうとれるような発言は『内陣』の連中から何度か聞いたことがあるわ。カリアス師とかね」
 ラヤ・オが出した名前に、リリが反応した。
「やっぱり、カリアス先生も『内陣』の人なんですね」
 カリアス・フェトファツィディスは学園長の補佐をしていた、アイ・ハヌム専属の教師だ。非常に厳格な人だったことを憶えている。
「ええ。カリアス師、カティア師……メリナばあさんの側近はみんな『内陣』ね」
 ラヤ・オが乱暴な言い方をしたので、リリだけでなく聞いていたバティストまでもが苦笑した。
「そういえば、あの“姫様”――ソフィア・コムヌス、って」
「メリナばあさんの身内ってことよね。子供がいるとか聞いたことないけど」
「遠い子孫ってことなのでしょうか。千五百年、血統を維持してきたのか、それとも、指導者や後継者は出自がどうあれ『コムヌス』姓を名乗るしきたりなのでしょうか」
「千五百年……」
 バティストが呻いた。気の遠くなる歳月だ。――だが。
「あの、『徳義』……エレフテリオス、だったか。彼は……リリの級友だったのだろう?」
「ええ。年齢は上がっていますが、十代後半が二十代半ばになった程度ですね。子孫とかではなく、間違いなくレフ……エレフテリオス本人です」
「ふむ……。どうやって……」
 見当もつかない、とバティストが首を振る。それをみながら、リリは少しだけ過去のことを思い返していた。
 エレフテリオス・ラエル。
 理知的で、学ぶこと、工夫をすることに貪欲だった。情熱は人一倍あるが、それを滅多に表に出さず、秘めておくタイプ。
 細かいところによく気が付くほうだったので、おおざっぱな、天然系の者たち――例えばゼクシウスとか、セレーネとか――を気にかけ、彼らから当てにされていることが多かった。
 ……ゼクシウス。
 エレフテリオスの親友。彼は、どうしたのだろう。
 級友二人に思いを馳せると、不意に、リリは自分の隣に誰もいないことを寂しく感じた。当たり前のように、一緒にいた相手。
 セレーネ。会いたいよ。
「ともかく」
 ラヤ・オの声で我に返る。
「世界とか話が大きすぎるけど、あたしに今アイ・ハヌム時代の力が宿ってるのは、この事態を収めろ、っていう何かの啓示だと思うことにしたわ。
 今、この森で暮らす人たちの平穏を脅かすなら、あたしの敵よ。そこは断じて譲れないわ」
 ラヤ・オはきっぱりと宣言した。

 純潔派の司祭テランス・プジェが変じた異形、『咎人(シナー)』は、力尽きると同時に光と化して消えた。
 破壊された魔道石像――スパルトイ・ガラティアは、心核を破壊されて稼働を停止し、魔浸石へと戻った。
 ラヤ・オに倒された六人の白魔道士たちは、そのまま意識が戻らなかった。敗北と同時に死する魔法罠を仕込まれていたようだった。

 結局彼らの手元には、六つの『聖七天』の聖印だけが残った。

 聖印。それは光迎教会の奥にあった女神ソムヌスの像、そこに嵌まる、エーテライトのキーでもある。
「これを使って乗り込むくらいしか手はないんだけど、それって」
「向こうも気付いているはずですよね」

 黒衣森の光迎教会に兵士が踏み込んだが、『内陣』――いわゆる出家信者は誰もおらず、在家の信者たちがうろたえるばかりだった。
 敷地の奥にあったソムヌスの神像は、エーテライトとしての機能を維持しているようだ。
 『聖七天』の聖印を使って転移をすることはできるだろう。だが、罠に嵌まる可能性は高い。
 それでも。
「いくわよ。罠だろうがなんだろうが、そこへ飛び込んでから切り開く」
 この場の最上位者であるラヤ・オ・センナがそう主張するのを、止めることができる者はこの場にはいなかった。

§

 おそらく、蛮神なのだろう。
 サイラスはそう黙考する。
 村落から人を誘拐する行為が蛮族の仕業と誤認されるのも無理はない。なぜなら、彼らも同様のことをしているからだろう。
 人を攫い、彼らの神――眠りの神、彼らの信仰上は来世に来りて人々を救う救世神だという、ソムヌスに捧げる。
 ようするにテンパードだ。
 人が、蛮神を降ろそうとしているのだ。
 奪われた『珠』は彼らの祭器なのだろう。ソムヌス降臨を有利にするモノということだ。
 となれば。
 その降臨が未然に防げればよし。
 もしすでに降臨しているのだとしたら。
 対蛮神戦。
 自分は問題ない。ある理由から、自分はテンパードになることはないのだ。
 だが、彼らはどうか。
 それぞれ優れた力を有しているようだが、それが『テンパード化』に対して有効なのかどうか。
 それを警告しようとして、サイラスは思いとどまった。
 
 悪いが、あんたらは囮だ。

 あんたたちが昔馴染みとやらとああだこうだやってる間に、俺は俺の目的を果たさせてもらおう。
 
 胸の奥で滾る炎をひた隠しにして、サイラスはラヤ・オ・センナへ肩を竦めてみせる。
「やれやれ、血気盛んな角尊サマだな。乗り掛かった舟だ、最後まで付き合うぜ」
  
§

 その日の夕方には、リリ、ラヤ・オ、サイラス、バティストの四人は『純潔派』の本拠地へ突入すべく、ソムヌスの神像前へとやってきた。
 翼の生えた女性形。目は伏せられ、四本の腕のうち上の両腕が人を抱くように前へ差し出されている。
 そして、下の両腕が握り持つ杖の先端に、円形の窪みがあった。

 同行した鬼哭隊の兵士たちの手には、六つの聖印のうち残り二つが託されている。
「カヌ・エ姉様への伝言、頼んだわよ」
「は」
 聖印と共に、ラヤ・オは姉である幻術皇カヌ・エ・センナへと手紙を書いている。
 もし十日ほどして自分たちが戻らないようならば、あの者――“光の戦士”へ、事態の解決を依頼してほしい、と。
「ま、そんなことにはならないけどね」
 敢えて気楽な口調で言いながらも、ラヤ・オの瞳は決意に燃えていた。
 リリが応える。
「はい。必ず、わたしたちで解決しましょう」
 四人は頷き合うと、聖印を神像へと嵌める。最初にリリが転移し、それからバティスト、サイラスと飛んだ。最後にラヤ・オが、兵士たちに大きく頷いてから飛んだ。
 それを見届けてから、兵士たちはグリダニアへと向かった。

 森は再び静寂を取り戻した。
 閉鎖された教会に足を運ぶものはいない。
 それゆえに。

 女神の神像が、伏せられていた目をゆっくりと開きつつあることは、誰の目にも留まることはなかった。

『Sweetest Coma Again』6へ続く

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