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Juliette Blancheneige

der lebende Schild

Alexander [Gaia]

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『Sweetest Coma Again』9(2)(『Mon étoile』第二部四章)

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9-4

「やはり敗れたか」
 ラヤ・オの問いには答えず、ソフィアはラヤ・オへと侮蔑の目を向けた。ゆっくりとこちらへ歩んでくるその背後には、十数人の司祭、そして同数の白い異形――咎人(シナー)がいた。
「所詮は外の世界の人間だ。リリ・ミュトラを仕留められるならよし、そうでないなら二人まとめて処分する。――最初から、そのつもりでいたんだよ?」
 自信満々に言い放つソフィア。だが、それを聞いたラヤ・オの反応は、彼女の想定外のものだった。
「はあ。あんた本当に育ちがいいのね。
 やたら悪役っぽく言ってるけど、いい子に育てられてるのがまるわかり」
「え?」
 思わずきょとんとしたソフィアの顔を見て、ラヤ・オは苦笑する。
「あたしがリリと戦ってる間に、どっちも巻き込むように一斉攻撃すればよかったのに。唯一のチャンスを逃したわね」
「……!」
 そう辛辣でもなく、むしろ穏やかに告げられた言葉。その妥当性がわかってしまったからこそ、ソフィアは言葉を失った。羞恥で顔が真っ赤になる。
「私を馬鹿にするのか!」
 悔しまぎれに捻りだした言葉は口答えでしかなかった。
「そんなつもりはないけど、あんたがそう思うならそうなんじゃない?」
 淡々と返される。なんだこの女は? この軍勢を見てもどうして平然としていられる?
「ラヤ・オ様、煽らないでも……」
 リリがとりなすように言った。それすらもソフィアには煽られていると感じることだったが、リリは表情を改めるとソフィアへ語りかけてきた。
「あなたは地上の光迎教会で、教えに惹かれてやってくる信者の人々に会っていたはずです。あなたから見て、地上の人々は真に滅ぼすべき対象だと思いますか?」
 光迎教会。
 地上における『純潔派』のカムフラージュに過ぎない組織だったが、それでも、そこには教えに共感した人々が集まってきていた。
「皆、悩み、苦しみ、けれど懸命に生きています。
 あなたと同じ。つらさを抱えた人間なんです。
 ――それを、簡単に“滅ぼす”だなんて言えるんですか?」
 つらさを抱えた。
 私と同じに。
 リリに失敗があったとすれば、その言葉を使ってしまったことだろう。意識の外にあった、けれど見知った人々のことを指摘され動揺しかけたソフィアの心は、『つらさを抱えた』というフレーズに引っ掛かり戻ってしまった。
「……私が、つらさを抱えているって……!?」
 それを指摘されることは、ソフィアには耐えがたかった。この世界の『姫』であると定義された自分には、それを表すことは許されていない。あの人の前以外では。
 だから。
 その指摘は、ソフィアにとって自分の心に土足で踏み入られたに等しい度し難さがあった。
「私の心を読んだのか!? おぞましい『超える力』の使い手め!!」
「顔を見ればわかります、『超える力』なんかじゃないですよ」
 即座に否定されるが、もうソフィアには届いていない。
「うるさい! これは母様が見ている戦いなんだ! ――私は、誰よりも上手にやってみせなくちゃならないんだ!!」
 叫び、ソフィア両手に光臨武器である短機関銃を出現させた。
 ラヤ・オが溜息を吐き、肩を竦めた。
「やれやれだわ。子供のしつけまでしなきゃならないなんてね」
「この数の前で言っていい台詞じゃないな!」
 勝ち誇るソフィアに、しかしラヤ・オは冷ややかな目を向けた。
「はあ? あんた本当に次期後継者?」
「なんだって!?」
「ま、能書きはいいわ」
 首を振りながら言うと、ラヤ・オは白光を出現させた。リリと戦ったときと同じく、六つの大型の白光から、無数の光弾が現れて彼女の周りを舞った。
「来なさいよ。わからせてあげるから」
 そう告げるラヤ・オの傍らで、リリがブリトルマティスを起動させた。今の間に、修復が完了していたのだ。
「――いけ! 殺到しろ! 押し潰せ!」
 激昂したソフィアが叫ぶ。
 司祭と咎人が、一斉に二人と一体目掛けて攻撃を開始した。

9-5

「ヂィッ!!」
 叫びながら突進してくる咎人たちを、ラヤ・オのグレアが迎え撃つ。起点となる白光は正面のみならず上空や左右に展開し、光弾を雨のように射出した。
 撃ち抜かれながらも、痛みを感じぬ異形たちは更なる突進をしようとする。それを、ラヤ・オのサンクティファイド・トルネドが押しとどめる。
 それを横目で見ながら、リリは司祭たちからの攻撃を受けつつサンクティファイド・グレアで迎撃していく。
 不思議と、負ける気がしなかった。
 先のラヤ・オとの戦いで覚悟をきめたときから、リリは自分に変化が起こっていることを自覚していた。そもそも、サンクティファイド・グレアはおろかグレアですら、今の自分には到達できていない魔法のはずだ。
 それが使えている。
 何かに、支えられていると感じる。
 だったら。
 それは最大限に使おう。今の自分にできる全部を使って、この状況を打開するんだ。
 一瞬だけ目を瞑り、改めて覚悟をする。その目が開かれたとき――心に、魔法が刻まれていることを知った。
「リフレク!」
 十数枚の光の鏡が一斉に出現し、司祭たちの唱える攻撃魔法を反射していく。同時に、接近したブリトルマティスが司祭の一人へ前蹴りを放った。容赦の無い打撃に胸を陥没させ、司祭がその場に崩れ落ちる。
 いける。
 これなら――
「ちぃっ!」
 ソフィアが両手の光臨武器をリリとラヤ・オへ向ける。
 そのときだった。
 城壁を超えて跳躍してきた何者かが、ラヤ・オの弾幕から後退して逃れた咎人の上へ落下――いや、踏み潰した。
「ヂィイッ!!」
 断末魔の叫びをあげて、咎人が倒れ、消失する。陥没した地面に足をつけたそれは、黒い甲冑を纏った人の形をしていた。長い二つの角を持つ兜。肌を一部の隙なく覆う鎧。手に持つは細く長い片刃剣。そのすべてが漆黒に覆われ、背より流れるマントだけが赤かった。それも鮮やかな赤ではない。血で染めたような、どす黒い朱殷(あか)だ。
 そして。
 この場にいる全員――咎人さえもが、感じ取った。その禍々しい気配を。
「蛮……神?」
 ソフィアが信じられない、というふうに首を振った。だが、彼女の感覚は告げている。この強大な気配はそれでしかあり得ないと。
「嘘……闘神に支配されたの……!?」
 ラヤ・オが愕然と呟いた。それを振り返ってから、リリはもう一度黒い神のほうを向いた。
「バティスト……兄さん!?」
 その声が。
 蛮神の仮面をリリへと向けさせた。
「ああ……そこにいたか……ウルズよ……!」
 仮面から発した声は歪んでいたが、バティスト・バズレールの声に間違いなかった。
「封印を誰かが破ったんだわ。うかつだった……ソムヌスの力を受けたバティストの魂は、封印が解けやすい危うい状態になっていたのよ!」
 蛮神――闘神オーディンが、ゆっくりと歩きだす。
「ウルズよ」
 リリを見据え、闘神は手を伸ばす。
「そなたを、誰にも渡さぬ……!」
 嫉妬。慕情。欲望。悲しみ。それらがないまぜとなった叫び。そうか、とリリは悟った。リリを求めるバティストの心に、オーディンが応えたのか。
「にいさん……!」
 リリは、歯を食いしばって杖を構える。
 その想いには、応えられないから。
「ヂィッ!!」
 恐怖心に耐え切れず、そして理性なき凶獣ゆえに襲い掛かった咎人を、オーディンは無造作に片刃剣で突き刺した。その瞬間、咎人はあっけなく霧散した。分解されたエーテルが、ことごとくオーディンに吸われていく。
「そうか、蛮神は……その顕現にエーテルが要る……!」
 ラヤ・オが、リリの手を掴み引きながら言った。
「なるべく距離を取るわよ!」
「は……はい!」
 二人がさっきまで立っていたその場所へ、オーディンのマントが形を変え、生きる波のように押し寄せた。明らかに、捕らえるための動き。
「ウルズよ……逃がさぬ……!」
 リリへと歩き出すオーディンが、その身より黒い霧を発した。霧に触れた咎人たちは、突然狂暴化してオーディンへと殺到した。
 それを、オーディンが殺す。バターに熱したナイフを突き刺すがごとく、いとも容易く咎人たちは斬られ、吸われていく。
「狂化……させられているのか!」
 ソフィアが驚愕した。戦闘の狂熱を植え付け、自らを襲わせ、そして殺し、捕食する。撤退の指示を出すことも叶わず、咎人たちはすべて蛮神の贄となり果ててしまった。
「ソフィア・コムヌス!」
 ラヤ・オが走りながら呼びかける。
「司祭たちを下がらせなさい! あのままじゃ犠牲になる!」
 蛮神の出現以降狼狽え、事態を傍観するばかりだった司祭たち。咎人が全滅した今、次にオーディンが喰おうとするのは彼らに違いなかった。
「……! 総員撤退! 下がれ! ――逃げて!!」
 ソフィアが慌てて叫ぶ。だが、それは一手遅かった。
 司祭たちを円形の範囲攻撃が襲った。威力はさほどでもなかったが発動は素早く、範囲内にいた司祭たちは全員スロウの状態異常を受けた。そして、次の瞬間。
 天から降り落ちる無数の槍が、逃げられぬ司祭たちをことごとく串刺しにした。
「ぎゃあああ!」
 絶叫が響き、絶命した司祭たちもまたエーテルへと分解されていく。オーディンに殺されるものは、魔法生物であるか物理存在であるかにかかわらず、すべて分解されて吸収されるようだ。
「あ……!」
 ソフィアが愕然として立ち尽くした。
「馬鹿! 餌食になるわよ!」
 ラヤ・オが叫び、サンクティファイド・エアロをソフィアに叩き込んだ。吹き飛ばされるソフィア。威力を弱めに設定したため、吹き飛ばし以外の効果はほぼない。だが、彼女を叱咤する効果はあったようだ。
 慌てて起き上がったソフィアが、泣きながら距離を取る。
 オーディンから距離を取ったリリとラヤ・オ、それから二人とはやや離れた位置にソフィアが並んだ。
「リリ、『超える力』、使える?」
 ラヤ・オの問いに、リリは首を振った。
「この距離では無理です。接近しないと……」
「接近したら取り込まれるじゃないか!」
 ソフィアの指摘にリリが頷く。
「ええ。だから、この状況では使えません。……仮に、ですけど」
 オーディンから放たれた赤い波を躱しながら、リリが言う。
「わたしが取り込まれたら、彼は満足してここを立ち去ると思います?」
「ぜんっぜん! 次にやるのはこの疑似世界を構成するエーテルの取り込みでしょうよ!」
 放たれた槍を回避したラヤ・オが答え、さらにソフィアへ問う。
「『四善』とかメリナばあさんは何してんの!? この世界の危機でしょ!」
 同じく槍から逃れたソフィアが首を振る。
「……やってる! でも、通じないんだ! レフが来てくれたら……!」
 心細そうな声を上げたソフィアの背中を、ラヤ・オが駆け抜けざまに叩いた。
「泣きごと言わない! ――こうなったら、全力でいくわよ。倒す勢いで戦って、ぎりぎりのとこで『超える力』使ってバティストに戻す! いいわね!」
 あまりにもおおざっぱすぎる作戦だが、しかし実際手の打ちようがなかった。リリは緊張した面持ちで頷く。
「――はい。必ず助けます……!」
「あんたも! 男に頼らず自分の手で勝ち取んなさい! それで自慢してやるといいわ!」
「……! うん……やってみる!」
 焚きつけられたソフィアも頷く。
「さあ、闘神討伐といくわよ!!」
 ラヤ・オが叫び、無数の白光を出現させた。リリとソフィアも続く。まるで地上に降りた星のように煌めく無数の光弾が、黒い闘神目掛けて降り注いだ。
「「「サンクティファイド・グレア!!!」」」

9-6

 ソフィアがリリ、ラヤ・オと戦闘になっている状況は、エレフテリオスも把握していた。
 だからこそ急いでいたし、もはやここに至っては決断するしかなかった。
 ソフィアの洗脳を解除して、この世界から逃がす。彼女が蛮神ソムヌスの犠牲になることも、これ以上殺し合いに関わらせるのも止めさせなければならなかった。
 だが。
 今、エレフテリオスはその状況になかった。
「姫様に加勢する。そこをどけアステラ!」
 叫ぶエレフテリオスと対峙するのは、アステラ・ユーフェミアとその配下、副官マノスと『戦隊(ペルタス)』の一団。
 彼らは皆、臨戦態勢でエレフテリオスと相対していた。
 そして、扇情的で淫靡な衣装を纏ったアステラが嘲笑しながら答える。
「やあよ。ここで姫様が無様に敗北して死んじゃうとこでも見てればァ?」
「お前……!」
 一歩踏み出すエレフテリオスに呼応して、マノスと『戦隊』たちが前へ出る。彼らは既に、手にした改造幻具――白魔法の触媒としての機能を有しながら、他の武器の形状をしているもの――をエレフテリオスへと向けている。
 その目は一切の感情を映さない。『聖隷眼』による洗脳をしていることは明白だった。
「どういうつもりなんだ、アステラ!」
 エレフテリオスの問いかけに、アステラは肩を竦めた。
「さあ? 別に意味なんてないわよ。ああでも――そうねえ」
 目を細めて、エレフテリオスを見る。滴るような憎悪が、一瞬だけ唇を震わせた。
「『また』間に合わない、っていうのはどうかしら? あのときみたいに」
「……!」
 放たれた憎悪の言葉は、エレフテリオスの胸に刺さった。目を見開く彼に、アステラは瞳を濡らしてさらに言葉を投げつける。
「ゼクシウスがあんたに見捨てられたように。救援が届かなかった彼がそうなったように。あんたの、大事な、姫様もさあ! ――あんたが間に合わないせいで死んでもよくない?」
 それは。
 千五百年前の傷。
 魔大戦当時、国家公認白魔道士として戦場にいたエレフテリオスは、マハ軍との戦闘で壊滅状態にある友軍――親友であるゼクシウス率いる部隊の救援に向かっていた。
 だが、周囲はすでにマハ軍に制圧されつつあった。ゆえに、急行の道程で彼の部隊が奇襲を受けたことは無理からぬことであったろう。
 結果、エレフテリオスは間に合わず――ゼクシウスの部隊は全滅し、遺体さえも戻ってこなかった。
 無理からぬことだと、誰もが言った。
 むしろ敵地への救援を断行したエレフテリオスの勇気と義侠心を、皆が称賛した。
 けれど。
 エレフテリオスの心には傷が残った。
「アステラ」
 呼びかけを無視して、アステラは笑った。
「アタシの大事なもの。アタシの失くしたくないもの。それを奪った奴らに、それからそれを持ってるやつらに! アタシと同じ気分を味わってもらいたいのよ!
 蛮神ソムヌスが導く世界が絶対の平穏なら、ねえ、その前にぐちゃぐちゃにしてやってもよくない!? 狂うほどつらい思いをしても、ソムヌス様がぜええええんぶ! きれいさっぱり! 忘れさせて眠らせてくれるのよ?
 じゃあ、好き放題してもよくない?」
「アステラ!」
 二度目の呼びかけは叫びで、そして攻撃を伴っていた。瞬間的に出現したエレフテリオスの光臨武器“斬糸”が、アステラを両断する――寸前で。
 その攻撃はマノスが両手に装備した手甲と、同時に発動した防御結界が弾いていた。手甲に大きく傷跡が残った。
「……はん。薄情なオトコ」
 蔑みを塗り付けるように、マノスの背後からアステラは低い声で言う。
「結局あんたは姫様以外、全員殺すつもりなんでしょ。小娘に股開かせて自分好みに調教して、慰み者にしたいってだけの話の道連れに! アタシら皆殺しにするんだ?」
 投げつけられる言葉の毒に、エレフテリオスは表情を変えなかった。
「そうだ」
 冷然と。突き放すように。返される言葉と共に、ぞっとするほどの魔力がエレフテリオスから溢れ出た。その体の周囲を、金色の煌めきが現れては消える。魔力を以て編まれた超極細の“糸”。強大な魔力を圧縮し続けて編まれるそれは隠匿性に長け、射程距離も段違いだ。
 “斬糸”が何本存在し、彼が同時に何本を操れるのかは、エレフテリオス本人以外誰も知らなかった。
「なんとでも言え。言い訳はしない。僕は、ソフィアを連れてこの世界を出る。その前に立ちふさがる者はすべて倒すと決めている。
 僕は、もう、二度と大事なものを手放さない。
 今度こそ、間に合わせてみせる」
 感情を殺した言葉。透徹した覚悟が、アステラの憎悪を冷ややかに切りつけた。
 アステラの傀儡になったはずのマノスたちでさえ竦むほどの殺意が、場を冷厳と支配した。
「……ッ!」
 息を呑むアステラの前で、エレフテリオスは宣言する。
「キミが立ちはだかるならそれも了解だ。排除する」
 恐怖が。
 アステラを激発させた。
 怖い。
 怖い。
 一刻も早く目の前の男を消し去らねば。
 ――アタシが殺される!
「い……行け! 行け! 殺せ! エレフテリオスを殺せぇ!!!!」
 絶叫が、死闘の開幕を告げた。
 
『Sweetest Coma Again』9(3)へ続く
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