【まえがき】
Zum Anzeigen klicken Zum Verbergen klicken
━━ねぇスカイ。聞こえているかな、届いているかな。私の声……
………………ああ……聞こえているとも━━━━
『ドラグーンプリンセス ―クロスゼロ―』(完結編仮題) かつて人間だった蒼き竜『スカイ』は万年生きるとされる竜の命と引き換えにエオルゼアの危機を救った。
スカイが遺した蒼き鎧を纏う王女『ローズ・ベオルブ』。彼女は、一つの疑問の答えを探しながらエオルゼアを巡る旅を続けていた。
“いつか故郷の浮遊大陸『ヴォルマルフ』は浮力を完全に失い、墜落するのではないだろうか? それを食い止める方法はあるのだろうか?”
ローズには、ヴォルマルフの浮遊エネルギーの源流がエオルゼアにある気がしてならなかった。
天才技術者『シド』、考古学者『ニーム』、リムサ・ロミンサ提督『メルウィブ』らと協力し、大地や海底の研究を進めていく中である推測が浮かび上がった。
かつて、『ヴォルマルフ』は惑星『ハイデリン』の何処かに在り、竜人族は何らかの方法によって、大陸ごと大空に浮かばせたのではないか、というものである。
その憶測が現実味を帯びたのは、ローズがエオルゼアを旅していく中で『魔大陸アジス・ラー』を発見したことが大きかった。冒険者団との調査が進み、『古代アラグ帝国』は魔導の技術力で一つの大陸を空に浮かばせたことが濃厚となったのである。
同じく『ヴォルマルフ』も魔導とは異なる魔法エネルギーを石━━すなわちクリスタルに込めて浮かんでいる可能性が膨らんだのだった。
そもそも、この推測が正しいのならば、また一つの疑問が生まれる。竜人族はなぜ、自らの大陸を空に飛ばしたのか。なんらかの災害から逃れるため? 竜人の血を狙う者から逃れるため? はたまた━━いずれにせよ、ローズらは、竜人族のルーツを知る必要があった。
エオルゼアにて、そのルーツが眠る場所。それは忽然と歴史書から姿を消した『ドラクロア城跡』。そして、かつて浮遊大陸だった『メリアドール』が落下した場所である。
━━手がかりの少ない調査は難航していた。しかし、後にローズはある人物との出逢いによって、竜人族の歴史を急速に紐解いていくことになる。
そのある人物とは、伝説の銃工師『テン』の息子『クロス』。機械仕掛けの傘を操る金髪の男が、北の地へと向かって旅立つ時、いよいよ巨大な歯車が動き出す━━━━
第一章『交差』(より一部公開)「マスター」
「よぉクロス、傘が大繁盛じゃねぇか! よかったなぁ!」
日焼けした体格のいいヒューランがたっぷりの笑いじわでクロスを迎えた。ミスト・ヴィレッジの古い酒場のマスターは、とうに六十を越えている。とはいえ大きなビール樽を軽々持ちあげる豪腕を見る限り、体力の衰えなど感じない。
かつて、霧髭一味やシルバーサンド一家が大騒ぎをした時代からすれば客足は減ったが、マスターの人柄や料理、旨い酒を求めて訪れる老若男女は後を絶たない。週一の定休日には、騒ぎにならぬよう、メルウィブ提督やエインザル大甲将も時々お忍びで訪れることもあるという。
クロスは年季の入った木製カウンターに軽く手を付きながら、マスターを見る。
「しばらく、家を留守にするよ。北の都イシュガルドに行ってみようと思う」
「そうか……ついにお前も冒険者ってわけ……か」
腕を組んだマスターがクロスをじっと見て微笑むと、クロスは俯いて頭をかいた。
「……っと、うまく言えねぇけど、……いろいろ感謝してる、マスター」
「はっはっは! やめてくれクロス! まるで死にに行くみてえじゃねぇか! 実戦はごまんと積んできたんだ、自信を持っていってこい!」
クロスが実戦慣れしている理由、それはこの粋な笑顔を見せるマスターの計らいにあった。
幼きクロスは、両親であるテンとサンを失った後「強くなりたい」とメルウィブ提督の元を訪れ、激しく懇願した。その意思を聞いたメルウィブ提督からマスターへと話は伝わった。
マスターはテンと繋がりがあり、メルウィブ自身も信頼のおける人物。さらに、身寄りのないサンが父のように慕っていた存在でもあった。
サンは密かにクロスの存在をマスターにだけは伝えていた。当然、テンが家族を守るために、あえて 自分の嫁や子のことを公にしなかった理由も含めて。
メルウィブから大役を快く引き受けたマスターは、元シルバーサンド一家の一味。若き時代は、調理場を担いながらも、『ブルーフィス』と肩を並べて豪快な海戦を繰り広げたこともあった。
マスターは、命の尊さ、自然の厳しさ、戦闘の基礎からクロスに教えこんでいった。船で同行し、ハルブレイカー島付近の無人島でモンスター狩りをさせたり、酒場や市民を狙う海賊を撃退する用心棒としての仕事をさせたりしながら、少しずつ実戦の訓練を重ねさせていたのだった━━
「長旅になるんだろ? 傘屋の方は大丈夫なのか?」
「ああ、協力して注文分は一先ず作り終えたよ」
「そうかそうか。二人なら仕事も捗るな。旅先でもあの子を……レインちゃんをしっかり守るんだぞ」
「ああ……」
クロスが優しくもあり、強くもある蒼い瞳でゆっくりと頷いた。
するとマスターは古びた箱の中から小さな袋を取り出し、クロスに手渡す。
「クロス、こいつはギルじゃあねぇが、餞別だ。凍えそうな北の地で、南国ミストが恋しくなったら、開けてみてくれ」
「ははっ、サンキューマスター。それじゃいってくるよ」
━━父親の面影を残して笑ったクロスが去り、静まり返る店内。
マスターはテンが愛飲していたウイスキーボトルを開け、大きな氷入りのグラスに豪快に注ぐ。
カウンターの壁に飾られた古い写真。セピア色になりながらも、活気に満ちた強そうな海賊たちが数十人並んでいる。マスターはグラスを握りしめ、写真の中のテンに向かって乾杯する仕草をした。
「テン。アンタの息子……クロスは、アンタに似て……立派になったぜ━━」
====================
第三章『竜人』(より一部公開)「ねぇ、スカイ。聞こえてるかな、届いているかな……? 私の声━━」
蒼き鎧を纏う女騎士のささやき声。紅い薔薇の色に良く似た髪が風になびく。背負った鋭槍の刃に太陽光が反射した。
外地ラノシアの切り立った崖の上。そこから望む景色を眺めているのは、ローズ・ベオルブ。
周辺には重力に逆らって浮かんでいる無数の岩があり、その中でも巨大な岩盤上には古い遺跡の一部が見てとれる。
ローズは青空を見上げて微笑む。透き通るようなまなざしは、優しく美しく、しかしどこか寂しげだ。
「━━スカイ、此処まで一緒にエオルゼアを巡って旅をしてきたね。でも…………まだ足を踏み入れていない場所がある。━━あなたの背に乗って、あの日見た『ドラクロア城の跡』。不思議だよね、近年のエオルゼアの歴史で誰一人として、かつてドラクロア城が在ったとされる場所にたどり着いた者はいないだなんて━━」
━━“オ・ゴモロ樹海”。それはバイルブランド島の北西部に位置する、オ・ゴモロ山の麓に広がる深い森である。
ニーム博士が率いる調査団の報告によると、特質的な大地の栄養分によって、木々や草花が急成長し、密森を形成しているとのこと。
現在、バイルブランド島全域に、このような森林が広がる場所は此処しかない。歴史をたどると、ドラクロア城が歴史書の中から忽然と姿を消した時期以降に、この森は出現したとされている。この樹海の中に、ドラクロア城は眠っていると豪語する学者もいれば、歴史書そのものが捏造されたものであり、ドラクロア城など存在しないという者もいるほど、この樹海は謎に満ちている。
「入った者は誰一人帰ってきたことはない。木々や植物の魔物が襲ってくるという噂もある。……ローズ殿、あの樹海には決して近づいてはいけないよ」
ニーム博士の言葉が、ローズの頭に響いた。
しかし、ローズに迷いはなかった。ヴォルマルフを救う手掛かりは必ずある。この身を包む蒼き鎧に背中を押された気がしたローズは単身で崖から下り、樹海の中へと足を踏み入れるのだった。
ローズは道を見失わぬよう目印を着け、簡単な地図を描きながら進んでいった。
一時間ほど内部に進むと、先程まで聞こえてい小鳥のさえずり、動物の気配が消えた。
「……これは……ブラウンシダー……」
ローズが思わずその大木の幹に触れる。ヴォルマルフの建築を支える代表格の木材ブラウンシダー。エオルゼアには生息していない種である。
足元には、ローズの故郷の森で見た草花やキノコ類が目に入ってきた。
「まさか……」
ローズの脳裏に一つの推測が浮かんだと同時に、足が硬い物を踏んだ。
「━━人骨!」
ローズは咄嗟に背の槍を手に取り、構えて周囲を警戒した。
足元で枯れ葉や土と一体化しかけている朽ちた遺体が身に付けた武装。完全に錆び付いてるが、ローズはあるものを見つけてはっとした。
「この兜のマーク……ガレマール帝国のシンボル━━しかも……一つ二つじゃない……!」
よく調べてみると、足元に数十、さらに見上げると、太い枝に巻き付かれた白骨がいくつも存在していた。それはまさにニーム博士が口にした噂そのもので、木々や植物が人々を襲ったようにしか見えなかった。
「ガレマールの人間がドラクロア城の跡地を探していた……? まるでこの森が意識を持ってそれを拒んだかのように見える……」
覆い被さるかのような森の圧力。全方位が似たような景色になり、ローズはいつの間にか自分の居場所がわからなくなっていた。
「しまった……目印を見失った」と言いながらローズは咄嗟にコンパスを確認するが、針がぐるぐると安定せず回り続けていた。
「え、嘘でしょ……こんな事って……」
静けさ。それは不安という感情が芽生えたものに一斉に、恐怖心や孤独感を連れ襲いかかる。ローズの汗が頬をすっと伝う音が世界に広がるような程に。
心臓の音。呼吸の音。唾を飲み込む音。滴る汗が顎から落下し、地面で小さくつぶれて弾ける音━━
「(……こっちよ……)」
「━━!」
ローズが声の方向を瞬時に確認する。
重なり合う木々と生い茂る葉によって森に空はない。しかし影と深緑の中、微かに、ほんの微かに木漏れ日が地面に広がった。そこに落ちたのは一筋の光か、それとも幻覚か━━この時ローズには、故郷に古くから伝わる伝統的な純白のドレスを着た美しい女性が微笑みかけ、一瞬手招きをしたように見えたのだった。
すうっと消えた何か。幻聴か、幻覚か、得たいの知れない者に対する恐怖心は一切なかった。逆に一帯にはどこか懐かしい温もりのような物が残留していた。それは、ヴォルマルフの風、日差し……いや、スカイの体温だろうか。
ローズは体と心で感じるままに一歩、また一歩と足を進めた。目印など一切付けず、導かれるままに━━
「━━森の中に……大きな谷が……? ……そうか……成長した根が下の大地を覆い隠していたのね……だから誰も空から見つけることができなかった」
数百年もの間、巨大な根や植物が隆起させた地形が人々を拒んできたのだろう。
森の下に隠された地に踏み入れたローズの目の前に、太い根や幹と一体化した白き城門が姿を現した。
「在った……此処がスカイの故郷……『ドラクロア』」
石を主体として建築されていた城の老朽化は深刻なまでに進んでいたが、張り巡らされた木々や植物がそれを支えていた。
発光植物や光虫が淡く光り、足元や壁を照らす。恐る恐るドラクロア城を探索していたローズは城内の地下室で、一冊の本を見つける。
「この……本は……」
表紙は炎か何かで燃えてしまったのか、黒く焼け焦げていた。中身もほとんどの部分が灰になっており、かろうじて残った部分も紙は色褪せて変色し、書かれた文字は滲んでいた。
パラパラとめくっていくと、最後の一ページは、なぜか欠けることなく残っていた。そこに書かれていた詩。それをローズは黙読する。
ローズの胸に懐かしさが込み上げる。この詩は、あの日スカイが聞かせてくれたものだ、と。
「……永遠の蒼空に━━━━」
ローズが涙を浮かべて、心に生きているスカイの声と合わせながら、ゆっくりと声に出して読み上げると同時に、その意識は突然に『過去』へと飛び込んでいった━━━━
━━━━薄暗い部屋で、背に小さな翼のある二人が抱き合っている。
女は涙を流しながらささやく。
「お兄様。ごめんなさい。本当は私…………もっと生きていたかったな…………」
兄と呼ばれた男は、妹らしき者を強く抱きしめた。
「……メリアドール。これは私たちの運命だ。これで竜人の子孫らは平和に生きていけるのだ」
「ええ…………そうね━━」
======================
【あとがき】
Zum Anzeigen klicken Zum Verbergen klicken
両作を読んだことがある方が一層楽しめる内容となっていますので、まだ読んだことがない方は、よろしかったら下記のリンクからご覧になってみてください。
よろしくお願いします。
ZERO -The beginning of the Maelstrom-
DRAGOON PRINCESS
DRAGOON PRINCESSⅡ
※ポスター by Emi Rose