*注意事項*
①この小説は、FFXIVの自作小説です。
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⑥この作品はフィクションです。実際の登場人物、NPC、事件には一切関係ありません。
目次:http://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/1328991/blog/2029322/pixiv:http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=3745278字数オーバーだった前回の続き
↓第2章 巴の波紋[3:サスタシャ浸食洞] 人が一人位通れるほどの狭い道を、カーバンクルの先導を頼りに慎重に進む。トンネルを抜けると既に何も残っていない貯蔵庫へ、アルの話の通り辿り着くことができた。トンネルの入り口の前には大きな棚があり、そのおかげでトンネルの入り口が外から見えなかったのだとわかる。耳を欹て貯蔵庫の中に誰かいないか確認した後に、思いのほか軽い棚を横へとずらし、室内に侵入した。
捕まっていた人間達が食料を漁ったせいで貯蔵庫の中には何も残っていない。どうして、そのような状況になっても外に出なかったのかと不思議に思ったが、貯蔵庫はマホガニー材が使われていた。強度な木材を前に、土を掘ることのできた少年も、素手では無理やり外に出ることができなかったようだ。
外の様子を調べようとして、貯蔵庫の中には窓が無いことに気がついた。害虫やネズミなどを部屋の中に入れないために、このような密閉された部屋になっているのだと想像できる。困ったことに、そのせいで部屋の外の様子が全くわからなかった。
音が出ることを極端に恐れたカイトは、ハンマーで鍵を開けずに巴術を使用することにした。本に浮かぶ錯視を撫で、あらゆる者を食らおうとうする微生物を召喚する。バイオの魔法により錠前だけを溶解すると、扉が音も無く開いた。
「まだ奴は見つからないのか。」
塩の香りと共に声が聞こえ、開いた扉を閉めそうになる。
意を決してそっと扉を開き、外の様子を探ると、洞窟では無く海が見えた。サスタシャ侵食洞の執着点は海のある海岸だった。いや、正確には海食崖(かいしょくがい)というのが正しいのかもしれない。侵食洞という名前の通り、波によって削られ、海岸沿いの崖が侵食され洞窟となった場所。それがこの場所なのだ。
「今部下を送り、ビトレイの行方を追っています。今しばらくお待ちください。鯱牙のデェン様。」
洞窟と海食崖の間に作られた港に、1匹の魚人と1人の海賊がいた。彼らの背後には何かをあしらった彫像のような物が見える。恐らくその魚人がサハギンと呼ばれる蛮族なのだろう。驚くことに海賊帽を被ったヒューランの男の2倍近く身長がある。
「頭の悪いヒレ無し共め。おまえらはまともな買い物もできんのか。そもそも水のクリスタルを大量に購入できていれば、偏色クリスタルなど使わなくても蛮神を呼び起こせたものを。」
「水のクリスタルと土のクリスタルの購入は、メルヴィン税関公社によって監視されています。他のクリスタルを購入し偏色クリスタルの力で水属性にエーテルを変換する。これを考えたやつは相当頭の良い人間でしょう。そいつをテンパードにしてはどうですか。」
「確かにマディソン、おまえよりは使えるだろうな。」
叱咤されても飄々としている男に、サハギンの苛立ちが募っていくのが声音から伝わってきた。怒りで饒舌になっているのか、カイトが聞きたかった重要な証言も手に入れることができた。
偏属性クリスタル。
用途不明だったあの橙色のシャードは、クリスタルの力を増幅するのでは無く変換する物のようだった。つまりあのシャードが手に入らない以上、現状神降ろしは起こらない。そういう結論が出た。
「・・・ここらが潮時だな。」
少し開いた扉を閉め、来た道を戻ろうとカイトがする。その行動を遮るように、貯蔵庫の外から水属性のエーテルを感じた。
咄嗟に床を転がり扉から離れる。カーバンクルが自分を守るように唸り声をあげた。寸前まで自分がいた場所を水の塊が駆け抜けていく。強固な木材であるマボガニーの扉を粉々に砕き、その水の塊は貯蔵庫の反対側の壁に衝突した。
いったいどうして居場所がばれたのか。
貯蔵庫の外からの攻撃に体を緊張させる。壊された扉からそっと外を見ると、デェンと呼ばれたサハギンがこちらに向かって歩いてきていた。
「匂うぞ。特異なエーテルの波を感じる。」
サハギンの独り言にカイトは頭を抱えた。
ポケットの中にはク・リヒャに渡された銃弾がまだ入っている。サハギンは自分と同じように、偏食クリスタルの発するエーテルの波を感じ取っているのだ。
交戦する気はなかったが逃げられそうに無い。
本を開き魔紋をなぞる。
呼吸を整え先手必勝とばかりにサハギンに向かって攻撃を仕掛けた。
「ミアズマ。」
貯蔵庫に隠れながらカイトの放った紫色の霧が、デェンの顔を覆う。突然の攻撃にサハギンは慌てふためき、腰を地面に打ちつけた。
ギリシア語で穢れを意味する魔法であるミアズマは、瘴気の霧を生み出す魔法である。対象に病気を付与し被回復魔法の効果と移動速度を減少させる。重要なのは移動速度を低下させる点である。
「バイオ。」
魔紋をさらになぞり、先ほど扉を腐食させた微生物の群れを召喚。知性のある生き物にぶつけるのは少々気が引けたが、覚悟を決めて攻撃を指示する。
地面に倒れたデェンの体に、黒いハエのような生物の群れが襲い掛かった。生きながらに皮膚を食われ、肉まで食らおうとする微生物の群れにデェンが悲鳴をあげる。
悲鳴を聞きマディソンがデェンに駆け寄ろうとした。しかしそれは自分の計略の一つだった。近くによった瞬間を見計らいペインを作動。バイオとミアズマの魔法が、デェンに近寄った、マディソンにまで伝染する。
潮風の吹く海食崖のある港に二人分の悲鳴が木霊した。
その悲鳴を聞いても、自分の心に何も変化が無いことに内心驚いていた。彼らを悪人だと思っているからなのか。それとも心はもう既に壊れてしまったのか。あっけの無い幕引きに、今まで高揚していた感情の高鳴りが急速に冷めていく。
冷静になったことでカイトはある事に気がついた。
これだけの悲鳴があるのにもかかわらず誰も応援に駆けつけないのだ。イエロージャケットの兵士を手こずらせていたという話を聞いていたので、もう少し人数がいると思っていた。
悲鳴の声が小さくなるのを確認したカイトは、魔法をかけるのを止め、貯蔵庫から港に足を踏み入れる。辛うじて息のあるデェンとマディソンを無視し、港の調査を開始した。
「いやー、いい物見せてもらっちゃった。たまには里まで下りてくるもんだね。」
儀式をするために港に建設された祭壇を調べようとした際、そんな声が突然振ってきた。
蛇のようなウナギのような彫像の影からミコッテの男が現れる。
「ただ、君の能力値なら、もう少し早くここへ到着する計算だったんだけどな・・・。さては敵を殺すのを躊躇しちゃった~?君って存外、優しいんだね。弟さんとは大違いだ。」
「弟?」
楽しそうにこちらを見るミコッテからは敵意は感じない。海蛇の舌の生き残りだと思ったがそうでは無いようだ。
「ッフフ。これは重要情報だから、しっかり記録しておくよ。僕の脳内にあるギルド員の考課表に、ね。君をここへ導くことぐらい、巴術士なら朝飯前でしょ?「戦術は望む現実を作るためにある」んだから、さ?」
こちらの質問には答える気は無いようだ。男は一方的に自分に語り続けている。
いや、まてよ。
君をここへ導くことぐらい、巴術士なら朝飯前でしょとはどういうことだ。何故、リムサは銃や銃弾の取引が禁止されているというのに、依頼主はわざわざ捕まるような銃弾に偏色クリスタルをいれたんだ。
「でも、さ。彼ならこう言うだろうね。「戦術では無く一人一人の意思の力が、望む現実を作るのだと。」戦術は人々を導くための、手段の一つにしかすぎないってことだね。実に彼らしい。・・・おっと、忘れる所だったよ。」
彫像の上から、ミコッテの男が何かを放り投げた。
慌ててキャッチをすると、それがアークがつけているものによく似たクリスタルだとわかった。唯一違うのはそのクリスタルが紫色では無く緑色だという点である。
「それはソウルクリスタル。君の意思に呼応して力になってくれるだろう。詳しいことはお仲間に聞いてね。ふあああ。久々に人としゃべったら。なんだか疲れちゃった・・・さてと、僕はこの辺で、おいとまするよ。それと、賢者達にご注意を。君の航海にリムレーンの加護がありますように。」
一方的にしゃべっていた男は、その言葉を最後に彫像の前から消えうせた。
「あれが巴術のギルドマスターか・・・。なら、これも試験か何かだったのかな。」
ぼんやりと呟くカイトの頭に、先ほどまで泣いていた少年の顔が思い浮かぶ。
渡された紫色のソウルクリスタルをカイトは無意識のうちに力強く握り締めていた。
第2章 巴の波紋[4:取引の結末] 低地ラノシアからリムサ・ロミンサの上甲板層についたアークは、アフトカースルの広場を抜け溺れた海豚亭から下甲板層へと足を運んだ。既にリヒトとリュウさんはリムサについているのかリンクシェルで連絡をとりあっている。どうやらリヒトはメルヴィン税関公舎に、リュウさんは斧術士のギルドのあるコーラルタワーへ向かったようだった。昨日話をしていたダンジョンの話題からカイトが戦闘職を学びにいったのだと予想したのだろう。
下甲板層にある八分儀広場を南に向かって南下する。
カイト探しを部下に任せ、アークは一人馴染みの商人のもとを訪れていた。大通りから死角となる場所にアークが佇んでいるとその商人は煙と共にふっと現れた。杖をついた老人で真っ白な髭を地面まで垂らしている。その腰の曲がった老人を気遣うように傍らには刀と呼ばれる東方の武器を携えた青年が立っていた。
「ふぉっふぉっふぉ。アークちゃんかい。そろそろ来ると思っていたよ。」
「来ると思っていた?ずいぶんと思わせぶりな言葉だな。」
商人の言葉に怪訝そうな表情を浮かべる。
「ふむ?その反応・・・どうやらアークちゃん達はこの件には関係ないようだね。ここに来たのは情報を得るため。そうだろう?」
老人の声はしわがれていたが目だけは爛々と光を携えていた。まるで全ての嘘を見透かそうとするかのように注意深く自分を観察しているのがわかる。
「ああ、そうだ。人を探している。それともう一つ、クロノスが生きているという噂の出所を聞きたい。」
「人というのは?」
「カイトという男だ。髪は黒、瞳も黒、ミッドランダーで年は20歳前後。数ヶ月前にオライオン号でリムサに入った。」
「流れ者か。しばし待っておれ。・・・ふむ、なるほど。これは面白い。」
「何が面白いんだ。」
老人のゆったりとした話し方に段々といらいらしてきた。話の核心だけ説明して欲しいのだが、昔からこの翁はもったいぶる癖がある。杖を握っていない方の手を耳にあてリンクシェルで連絡をとっているようだが、いったい誰と連絡をとりあっているのだろうか。
「今朝方リムサへ入港予定だったわしの船が襲撃される事件があった。賊は二人。一人はルガディンの男でビトレイという。もう一人はミコッテの男。何者かわからんが、そのミコッテの男はビトレイを庇いながら戦っておった。そして賊はわしの船から木箱を一つ盗んでいきおった。」
「中身はなんだ。カイトとどういう関係がある。」
ぴりぴりと洩れるアークの殺気に反応し青年が刀に手をかけた。髷(まげ)をつけた青年がアークを牽制するように威嚇するが、アークは気にすることなく彼らを挑発して憂さを晴らす。
「中身はおまえさんの銃弾だよ。」
翁がさも可笑しいとでも言ったように笑い声をあげた。笑いすぎて仕舞いには咳込んでしまう。そんなどじっこアピールをされても老人に萌える趣味などアークには無いし。何より今話されたことがどこに収束するのかを想像することで頭の中はパンク寸前だった。
(いったい何の話をしてやがるんだ。この爺は。)
首を捻るアーク達の元に少年の叫び声が聞こえた。
「待つっす。人の物を盗んじゃ駄目っすよ。」
リヒトが追いかけているのは忍びの装束を来た女だった。傍らに木箱を抱え八分儀広場から一目散にこちらに向かって走ってくる。確かあの女は爺が諜報活動をさせている忍びだということをアークは思い出した。
頭領である翁を見て安心したのか一瞬だけ女の走るスピードが緩やかになった。その隙を見逃さずにリヒトが全力で地面を蹴る。
「羅刹衝。」
一瞬で間合いをつめたリヒトの拳が女の背中にヒットした。攻撃をされた女は木箱をこちらに放り投げ痛みを気にせずにリヒトに向き直った。
アークと翁が何もせずに見守る中、空中に飛ばされた木箱を掴もうと青年は刀に置いていた手を頭上へと掲げた。頭上を見上げたことで木箱と同じように空中から落ちてきた物体を察知した青年は翁を掴み後方へと跳躍する。
「誰かと思ったら、大蔵爺さんと正宗さんでしたか。リヒトが騒いでいたから敵だと思ってしまいました。」
木箱を掴んだリュウさんが槍の矛先を地面へと向け美しく姿を現した。リュウさんの傍らにもカイトの姿は見当たらない。どうやら二人とも当てが外れたようだ。
「知ってるんすか。リュウさん先輩。」
リヒトがしゃべる間も殴られたのが余程悔しかったのか、女の忍者は短剣を振りリヒトを襲い続けていた。
「それで、これがさっき爺が言っていた盗まれた木箱で。その女は盗まれた物を取り戻しに税関公社まで潜入していたということだな。で、これがどういう話につながるんだ?」
「どうやらカイトさんは巴術を学びにいったようです。リヒトの話によると税関公社で先日私たちが相手にしたビトレイ船長が自殺するという事件が起きました。恐らくその事件に偶然居合わせたカイトさんはその事件の調査をしている。」
「調査っすか。カイトさん大丈夫っすかね。そういえば税関公社に海蛇の舌の海賊達も押しかけてきたっす。なんかすげぇ必死って感じでした。その木箱の中身ってそんなに大事なものなんすか。それから忍者さん。謝るのでそろそろ攻撃しないでほしいっす。」
「いや、中身は俺の銃弾らしい。」
「・・・いったいどういうことでしょうか。」
首を捻り考える3人に翁は大げさにため息をついた。
「やはり・・・クロノスが抜けた穴はでかいのぉ。」
「何か言ったか。」
「何も言っておらんぞ。正宗殿、飯はまだかいのぉ。」
「ぼけた振りをするのはよせ。まだもう一つの話を聞いていないぞ。」
「噂の出所はわからんが、恐らくクロノスが生きていると吹聴している奴がおる。わしもどうやら踊らされたようだからのぉ。この落とし前はきっちりとつけよう。それと今月分の銃弾はそれだけじゃから、大事に使え。」
話は終わったとばかりに来たときと同じように煙が立ち上り3人は忽然と姿を消した。後に残された俺たち3人はしばらくの間、思考をまとめることしかできなかった。
結局。
カイトはアーク達の心配を他所に自力で戻ってきた。
昨日見たときよりも表情や雰囲気が凛々しいような気がして少しどぎまぎする。カーバンクルを頭に載せ本を読むその姿はクロノスを思い出させるからかもしれない。
「この子、家で養えないかな?」
一つだけ問題があるとすれば、それはカイトが連れてきた少年である。リムサには孤児院のようなものが無いから未成年をそのまま放り出すのは危険だと熱弁されたが、とりあえずはバデロンの親父に預けるということで話がまとまった。またあの大蔵爺さんに頼んで色々と情報集めをしてもらう必要がでてくるかもしれない。
深夜。
見捨てられた廃屋にカイトの姿が無いことに気がついたアークは慌てて外へと飛び出した。出会いは最悪だったのにも関わらずクロノスに似ているあいつが居なくなると考えただけで胸が痛くなる。
家の外を見渡すと屋根に登り仰向けになって空を見上げる少年をアークの眼帯の中の目が感知した。
「何をしているんだ。」
カイトと同じように屋根に登り傍らに座る。アークの質問の答えは少年の持っている緑色のソウルクリスタルを見たときにでていた。少年はソウルクリスタルを頭上に翳し、ぼんやりと夜空を見上げていたのだ。
「眠れないのか。」
「うん、ちょっとね。」
「話してみろ。」
「え?」
「今日あったこと、話してみろ。」
本当は優しく声をかけるつもりだったのだが、カイトに言葉を続けるように命令してしまった。そんな俺を見てカイトはくすりと笑みを浮かべる。そして、ぽつりぽつりと、彼が今日一日で経験した冒険を話してくれた。
ビドレイ船長の自殺のこと、帝国から亡命しようとして死んでしまったアルの家族のこと、神降ろしのこと。たった一日でカイトはたくさんの死を見てしまったようだ。寝られないのも無理は無い。
「アークって、実はかなり優しいよね。」
話を全て聞き終えた時に、少年が漏らした言葉にアークは驚いた。
「俺がか。」
「うん。だって遮らずに、こうやって話を聞いてくれるじゃん。」
「そんなの当たり前だろ、家族なんだから。」
「家族?」
「そうだ。海賊の船員ってのは皆家族なんだ。」
「家族かぁ。」
「なんだ、不満なのか。」
少年の言葉に年甲斐もなく一喜一憂している自分がいることに気がつく。
「なぁ、アーク。君は、僕に似た人間が好きなんだよね。」
「・・・それを正直に言ったら、おまえは俺の海賊団を抜けたりしないか。」
「それって、好きってことじゃないか。大丈夫、抜けたりしないよ。ちょっとからかってみただけ。でも、さ・・・。」
少年の顔が赤く染まる。
夜の闇より深い黒色の瞳を向けられ一瞬息が止まるのを感じた。
「もし、僕をその人と別人として、好きになってくれたら。すごい嬉しい・・・かな。」
「それってつまり・・・。」
「ふあ~。なんか眠くなってきたぞ。おやすみ、アーク。」
アークの言葉を聞かずに少年は家の中に戻ってしまった。
止まっていた息を吐き出す。
首にかけた紫色のソウルクリスタルを、カイトと同じようにアークは空へと翳した。