約一ヶ月ぶりの更新ですな。キリの良いところまで書こうと思ったら、全然終わらなくてこんな時期になりました。で、いざ更新しようとすると……。
リッチ編集モード使用可能!さらに文字制限1万字まで拡大!まぁこんな感じですな。
五分割しようかと思っていたのに、これによって二分割で済むようになりました。これはいいアップデートだ!でも本文中ではできるだけ文字装飾は使わないようにする予定です。
なお、表示が変になったりしたら元に戻す模様。
テストを兼ねて前回へのリンク↓
FFXIV 閃光の竜騎士 26閃光の竜騎士一覧はこちらという訳で以下本文。
蛮神を目の前にしているというのに、セナも他の冒険者も周りにいるグリダニアの兵士達も何一つ手を出すことができない。
――目の前には暴風が吹き荒れている。
それはまさしく壁だった。クォーリーミルを丸ごと囲む暴風。
神勇隊お得意の弓矢による攻撃も、幻術士による魔法の攻撃も、その暴風の壁がある限り、中に居座りこちらを睥睨するガルーダには届かない。
遠隔攻撃では通じないからと、無理に突っ切ろうと暴風の中に立ち入れば、無数の風の刃が体を切り刻むだろう。
「くそ、どうしたら……」
暴風の壁を見つめ、思わず悪態をつくセナに声を掛けてくる者がいた。
「お、見たことのある顔がいると思ったら”閃光”のセナじゃないか。こんなところで会うとは思わなかったぞ」
「ん……誰だ?」
声に振り返ると、仮面を付けた鬼哭隊の隊士がいた。
鬼哭隊はグリダニアで神勇隊と双璧を成す部隊だ。街の警備や村落、街道の警備を主に行っている部隊で、このクォーリーミルには鬼哭隊・伍番槍が駐屯している。神勇隊と鬼哭隊、どちらも任務の際は似たような仮面を被っている。これは精霊の怒りをその身に受けないようにするためのものだが、今はそのせいでセナに親しみを込めた声を掛けてきた隊士の素性が分からない。
「なんだ、冷たいな。……って、あぁ、こいつのせいか」
思い出したようにその隊士は仮面を外した。任務中だというのに仮面を外してもいいのか、と問われれば微妙なところだが、仮面は実際の所、お守り、ジンクスの様な意味合いも強いから問題ないのだろう。
仮面の下に隠れていた懐かしい顔が顕になったところで、セナは頬を緩ませる。
「ホレスじゃないか!お前が鬼哭隊にいるのは知っていたが、ここの部隊にいたとは」
「覚えていたか。お前が槍術士ギルドを出てから色々あってな……。と、今はそんな話をしている場合じゃないか」
彼はセナと槍術士ギルドで同期だったヒューランだ。積もる話はあるが、彼の言うように今はそんな話をしている場合ではない。
「見ての通り、ヤツは風の結界の中で王様気分さ。……いや、見た目と声は女だし女王様気分って言ったほうがいいのか?」
「それはどうでもいいが……。何か突破する方法でもないのか?」
「今、うちの隊長が向こうで神勇隊の隊長と話し合ってる。けど、これは俺達の得意な槍とか弓矢でどうこうできるものじゃ無いのは間違いないだろうな」
「たしかにな……」
セナ自身、さっき試してみたのだ。ピアシングタロン――槍術士の遠隔攻撃手段でセナも
その手軽さから多用する技だ――を暴風の壁に撃ち込んでみたのだが、撃ち込んだエーテルの槍は一瞬にして掻き消えてしまった。
喩えるならば、荒れ狂う川の流れの中に槍を投げ付けたようなものだ。そんなことをしても、川の流れは止まらないし、穴も空きはしない。ただ、激しい流れに呑まれるだけだ。
「ぬしよ」
声に振り向くとクォーリーミルを管轄する道士――幻術士たちに話を聞きに行っていたリノが立っていた。
「リノ。――どうだ、こいつをどうにか出来そうな方法でもわかったか?」
「まだじゃ。もう少し調べてみんとな。向こうを見てくる」
さらりとそう言って彼女は暴風の壁に近づいていく。それを追おうとしたセナの肩をホレスが叩いた。
「あんな娘を連れているなんて、お前も隅に置けないな」
「連れているものか。尻に敷かれているだけだ」
「はは。そうだろうな」
ホレスと別れ、暴風の間近で座り込んでいるリノに近づく。近づいて見てみると、鞄からクリスタルの破片を取り出して何やらやろうとしている。
「おい、何をやっているんだ?」
「見て分からんのなら、説明しても分からんじゃろ」
「……」
すっぱりと質問を断られ、思わずむっとする。
確かにこういった魔法が絡むものの事はさっぱりだが、軽く説明くらいしてくれてもいいんじゃないかと思う。もっとも、そんな説明をしている暇がない、というのもあるのかもしれないが、きっと単純に面倒臭いだけなのだろう。
何種類かのクリスタル片を取り出しては、暴風の中に投げ込んでみたり、近づけて反応を見たりした後に、リノは立ち上がった。そして、セナに向かってさらりと言った。
「これならば、なんとか出来そうじゃ」
「え?ほ、本当か!?」
「うむ。私は少し準備があるから、その間にぬしには――」
集落の周りを囲んでいる神勇隊と鬼哭隊にリノの言葉を伝えに行く。セナ自身、一介の冒険者が何かを言ったところで取り合ってもらえるとは思っていなかった。何しろ、リノの説明が「私がなんとかする」という一言だけだったからだ。神勇隊と鬼哭隊の隊長は困った顔になって首を傾げるが、話をしているセナも同じ心境だ。
うちの連れが暴風の壁をなんとかすると言っていたから、ガルーダと戦う準備をしてくれ、なんて言われたところで訳がわからないだろう。
だが、セナの隣で静かに話を聞いていた幻術士――もとい、道士は違った反応を示した。
「あなたはたしか、リノ様のお連れの方でしたか?」
リノも幻術士なのだから、クォーリミルに滞在している道士が彼女のことを知っていてもおかしくはない。
「ええ、まぁ」
「……ふむ。ということはリノ様が何か方法を見つけられたということですか」
その道士はしばし考え込んだ後に、顔を上げた。
「たしかにリノ様なら、この結界をどうにか出来るかもしれません。直ちに戦闘の準備をして頂けますか」
困惑した顔で頷く二人の部隊長。いまいち状況が掴めていないと、二人の顔に書いてある。それでも、道士の言葉に頷きを返したのは、道士への信頼と他に打つ手がないという状況からだろう。
「え……その、いいんですか?」
戦闘準備のために去っていく二人の部隊長を見送りながら、セナは困惑する。簡単に話を聞いてもらえるとは――よもや承諾してもらえるとは自分自身でも思っていなかったからだ。
「……高名なリノ様ならば、この風の結界を解除することもできるかも知れません」
「高名な?あいつ、そんなに有名なのか?」
槍術士ギルドを出てからのグリダニアの事は噂程度にしか聞いてないから、セナに伝わっていなかっただけでリノは有名人なのかもしれない。大酒飲みで大食らいの幻術士、として有名とかであれば心当たりはあるのだが。
「おや、ご存じないのですか?リノ様は幻術士でありながら――」
「ぬしよ、ちょっと来てくれぬか」
「おや……。お呼びのようですよ」
道士との会話を切り上げ、リノの元へ向かう。
「ん?何をやっているんだ、お前」
「何って……んぅ……ふぅ。見ての通り魔力補給じゃが?そんなことより、向こうにある私の鞄を取ってくれんかの」
そう言うリノの周りには、空になったガラスの瓶がごろごろと転がっている。幸いなのは、ガラス瓶の中身が酒の類ではなく、体内にエーテルを補給するための飲料だというところか。
言われた通りに鞄を取ってくると、こっちの中身も似たような魔法薬だった。グリダニアで熱心に買い物に励んでいると思ったが、こういうことだったのかと今更納得する。
「なんだ、酒じゃないんだな」
「こんな衆目に晒されている場所で、私が酒を浴びるように飲むとでも思っておるのかや、ぬしは」
「お前ならやりかねないな……」
リノが何本目かの魔法薬――エクスエーテルを飲み干し、空になった瓶をぽい、と投げ捨てる。そして、今度は皮袋から何かを飲み始める。
「そんなに魔法薬を飲んでどうするんだ?」
「どうするも何も、ガルーダの結界を壊す為に他ならないんじゃが……」
「いや、それは分かっているんだが、一体どうやって壊すつもりなのか気になっただけだ」
「ふむ。仕方ない、軽く説明してやろうかの」
ちびり、ちびりと皮袋に入った飲料を飲みながらリノは説明する。
「あの風の結界は、蛮神ガルーダから流れ込むエーテルの力によって維持されておる。それを消滅させるならば、本体を倒すのが一番手っ取り早いじゃろうが、中におられてはそうも行かぬ」
まったくだ。そもそもガルーダに攻撃が届くのなら、あの結界を壊す必要もない。
「そこでじゃ。私がさっき調べた限りでは、あの結界を維持しているエーテル量はそれほどでもない。であれば、私がそれを上回るエーテルを直接結界に流し込み、その力を上書きしてしまうことで、結界を消滅させることもできるはずじゃ」
「ん?……それほどでもないって、相手は蛮神だぞ?そう簡単にいくものなのか?」
「ふふ……ま、見ておるがよい」
飲んでいた中身が無くなったのかリノは皮袋を投げ捨てる。その顔が少し上気しているのにセナは気が付いた。
「お前、それ酒だろ……?」
「むぅ……ばれてしまったかや。ま、こういう時くらい見逃してくれてもよかろう」
少しも悪びれた様子もなく、彼女は杖を片手に立ち上がった。よっこらせ、という掛け声にお前は年寄りかと思わずツッコミそうになる。
「皆は少し下がっておれ。巻き込むわけにはいかんからの」
リノの話を周りで聞いていた野次馬がじりじりと後ろに下がる。それに倣うようにしてセナも彼女から離れる。
「さて、と……」
ふわり、と彼女の絹のように艶やかな銀髪がエーテルの風に吹かれて舞い上がる。
通常、魔法を行使する際は、術者が触媒としている物体――特にその先端付近にエーテルが集まり、淡いエーテル光を宿す。だが、今の彼女は違った。
「…………」
彼女自身の体がエーテルの淡い光で包まれる。光に包まれて、目を瞑る彼女は深い集中に入っているようだが、そんな彼女の姿がセナには幻想的に見えた。実際、自身の体にエーテルを纏わせるなんてものは見たこともないし、聞いたこともない。
「――――っ!」
かっ、と目を見開くとリノは手に持った杖を暴風の壁に叩き付けた。たかが、魔道士の娘の杖の一振り。そもそも、杖を叩きつけたところで暴風を打ち砕くことなど出来ない。暴風の向こうで余裕を見せているガルーダはこちらを見向きもしない。
だが――。
「これ、は……」
叩き付けたのは杖そのものではない。暴風の壁に叩きつけられるのは膨大な量のエーテル。
魔道士ではないセナにも感じられるほどの膨大なエーテルが、叩き付けた杖の先端から暴風の壁に流れ込む。流れ込んだエーテルは、ガルーダの結界を維持するエーテルの流れと混じり合っていく。
――そして、流し込まれたのは激しい流れを瞬時に蝕む猛毒だった。
次回は明日辺りに更新予定。更新完了。次回はこちら↓
FFXIV 閃光の竜騎士 28