※当日記はRPプレイヤーによる投稿です。
苦手な人、批判目的の方は戻るボタンを押す事を推奨します。。。
今回SSの関係で文字ばかりです。
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エオルゼア全図を前に、僕は小さくため息をついた。
剣術士になるためにはウルダハで冒険者登録をしておくと楽だとファストさんが言っていた。
だけどどうやらウルダハにいくためには、何日もかけて歩いてきた道を引き返さないといけないらしい。
知らない道を前に進むのは先に進んでいる気がして辛いけど楽しい。
だけど引き返すのは、時間も覚悟も引き返すみたいで、気が重かった。
前に進むしかない。それは判っているんだけど…
僕は悩みながらウロウロとグリダニアの街を回る。
弓術師ギルドと幻術師ギルド。
おいしそうなご飯、見たこともない武器、冒険者たちは今日の予定や昨日の出来事なんかを話し合っていて。
商店街の賑やかさも行きかう人々も、その明るさはドライボーンとは比べ物にならない。
ドライボーンから全く違う世界に来たように感じさせられる。
エーテライトプラザに戻った僕は、人の邪魔にならなそうな場所にぼんやりと座り、楽しげな冒険者さんたちを眺めていた。
そのうち何人かの冒険者さんがこの大きなエーテライトに手をかざしていることに気がついた。
僕はふとエーテライトのことが気になり、ぐしゃぐしゃになったパンフレットを取り出した。
「エーテライト交換」をすると、交換が済んでいる場所に移動することが出来るらしい。
交換?
僕は首を傾げる。
交換っていうのは何かと何かを取り替えることじゃないのかな。
僕はゆるゆると立ち上がり、手をかざしている冒険者さんの一人をじっと見つめた。
「…な、何?」
僕があまりにも真剣にみていたせいか、冒険者さんに気付かれてしまった。
気付かれたことに僕は慌てた。冒険者さんも自分の格好を何度も見直し、「何か私変?」と、本当に困った顔で聞いてくる。僕はさらに慌てて大きくクビを横に振った。
僕も冒険者さんもお互いに慌てている。やがて落ちついてくると、お互い笑いがこみ上げてきた。
「僕、エーテライト交換の方法を見たかっただけなんです」
木工ギルドの奥にある庭のベンチに並んで座り、暖かな日差しを受けながら僕はにっこりと笑った。
リリィさんは不思議そうな顔をする。短い髪にチラリと見えるピアスが太陽を浴びてキラリと光る。リリィさんは戦士だと、教えてくれた。
「エーテライト交換の方法…? 係りの人が教えてくれなかった?」
言われた僕はしょんぼりと頷き、首を横に振る。背の高いリリィさんが首を傾げると、頭の後ろから斧がひょっこり顔をだした。
「僕…まだ冒険者じゃないから…」
うん? 短い返事の中に、事情を聞かれている気配を感じる。
「僕、剣術士になりたいんだ。だからウルダハに行きたいの。…だけど僕、ドライボーンからやっとここまで来たところで、ここにきてから剣術士になること決めたから…」
また、沢山歩かなくちゃいけなくて…。
リンさんに作ってもらった靴のかかとを見ながら僕は呟いた。僕の足は休めば治るけれど、磨り減ってしまう靴のかかとは戻らない。
まだ冒険者になってもいないうちの新しいこの靴がダメになってしまうのは悲しい。
トントンとつま先を地面に打ちつけながらかかとを確認している僕をみて、リリィさんがアゴに手をあて、考え込んだ。
◇ ◇ ◇
ミリィちゃんの夢を見た。
いつもピアノを弾いていたミリィちゃん。それなのにミリィちゃんは大きな弓を背負っていた。僕はびっくりしてに駆け寄る。
『ミリィちゃん、冒険者になったの?』
驚く僕に、ミリィちゃんはニッコリ笑った。
『そうよ。だからもうバンビナ君とオママゴトは出来なくなったのよ』
ミリィちゃんはずっと大人びていた。僕は大きく息を吸い込み、そんなミリィちゃんに僕の決意を伝えようとする。
『僕も冒険者になるよ! ミリィちゃんを守ってあげるんだ!』
張り切って言う僕に、ミリィちゃんは笑う。
『バンビナ君、泣き虫じゃない。私が守ってあげるから安心して』 …───
目を覚ました僕を、リリィさんの大きな目が優しく覗き込む。
僕はリリィさんの提案でチョコボキャリッジに乗っていた。リリィさんはウルダハ近辺に用事があるから、一緒に行こうと言ってくれた。
僕はドライボーンから出る時にチョコボキャリッジに乗ろうとして断わられていた。そのことを伝えると、場所がドライボーンだったからではないかとリリィさんは言った。
ドライボーンの人がみんな悪い人だとはやっぱり今でも思えない。
だけど、お金を取られたこととか考えると、子供の僕がお金を持っていないと思われたんだろうというリリィさんの考えには納得するしかない。
あんなに時間をかけて歩いた場所の一つ一つが、景色となって僕の横を通り過ぎていく。
知っている誰かが居ないかなと目を凝らしてみたけれど、僕の小さな世界の知り合いは大きな世界の中の一部でしかない。
僕が歩いた時間も、チョコボキャリッジで駆け抜けてしまえばあっという間だ。
…兄ちゃんと離れてどのくらい経ったんだろう
僕は景色の中に、そんな考えを溶かしていた。
チョコボキャリッジが急停車した。
ボンヤリしていた僕は抵抗する間もなく、簡単にコロリと倒れこんだ。
チョコボキャリッジには僕達以外にもおじちゃんとおばあちゃんの夫婦が乗っていた。怯えるおばあちゃんを庇うように、おじいちゃんが抱きかかえる。
リリィさんが慌てて僕を起した後、運転手席に身を乗り出した。
「どうしたの?!」
身体を打ち付けてしまった僕が苦労して起き上がる頃、リリィさんが握り締めている手から、ギリリと音が聞こえてきた。
ゆっくりとリリィさんの背後から、そっと覗きこんでみる。
「バンビナ君!! 伏せて」
ほんの一瞬の出来事だった。
声に反射的に伏せたその直後…僕の背後で何かが崩れ落ちる音と、おばあちゃんの悲鳴が聞こえてきた。
恐る恐る振り返ったその先で…矢を背中に受けたおじいちゃんが倒れていた。
あいつら…
底から搾り出すようなその声は、さっきまでの優しいリリィさんではない。一度目を瞑り、ぱっと見開いたその顔はまるで別の仮面を被ったかに見える。
ゆっくりと背中に手を回し、斧を握る。
「…バンビナ君は、ここにいてね」
一言ずつはっきりと聞こえてくるその言葉に、僕は黙ってコクリと頷く。
言われなくとも、リリィさんの声と雰囲気で、邪魔になることくらい十分過ぎるほど僕は理解できた。
戦闘と言うものを、僕は初めて見た。
僕がファストさんに教わりながら魔物を倒したことなんか、誰にでも出来ることなのかも知れない。
佐藤さんが何かを呟きながら蹴散らした魔物なんて、戦闘と呼べるものなんかじゃない。
ガルーダから感じた、あの身を切られるような痛み。そんなもの、威嚇ですら…
「おじいさん…おじいさん…」
泣きながら一生懸命おじいちゃんを呼び続けるおばあちゃんの声。
「こんなところにまで帝国兵がくるだなんて…おじいさんが何をしたと言うの…」
顔を手で覆いおばあちゃんが泣いている。チョコボキャリッジを襲ったのは間違いなく人だった。
人と戦うこともあるだなんて、僕は知らなかった。
リリィさんの斧は、人を風と共に叩ききった。
帝国兵の仮面が割れ、その下から普通の人の顔が見えた。なんで、なんで、なんで人が人を襲うんだろう。
ドライボーンの夜が脳裏をよぎる。
お金を払って得た寝床を奪われ、雨に打たれながら眠った日々。
…ううん。僕は知っていたはずだ。人は人を妬み、羨み、憎み、奪い、騙し…
仮面が割れ倒れていた帝国兵がピクリと動いた。ゆっくりと身体を起し、弓を ───
「リリィさん、後ろ!!」
僕は僕の叫び声を聞いた。
その声は、僕の背後から聞こえた気がする。少しの間をおき、どさりと、何かが地面に落ちる音がした。
はっと気がつくと、僕は、チョコボキャリッジから剣を構えたまま飛び降り、帝国兵に体当たりをしていた。
僕の剣は、帝国兵を、貫いていた。
「…ばか!!!」
風が凪いだ。
放心状態の僕は、剣を片手に、ゆらゆらと揺れていた。
リリィさんが駆け寄ってくる足音が聞こえる。
物凄い強い力で、抱きしめられた。
「ばか、ばか、ばか!!」
僕を抱きしめながらリリィさんが泣いていた。ぽつりと頬に涙が当たり、僕は我に返った。泣きじゃくるリリィさんがとても温かい。
思わず僕は、リリィさんの頭を撫でていた。
大粒の涙を流しながらリリィさんが顔を上げる。
何かを言いかけては止め、口をぎゅっと強く結び、さらに大粒の涙を流しながら僕を強く抱きしめる。
僕を貫くような心の痛みは僕ではなくリリィさんのものなのかも知れない。とても痛くて、痛くて、リリィさんが壊れてしまうんじゃないかと僕は思った。
「…泣かないで、リリィさん。僕、大丈夫だよ」
そう声を掛けてもリリィさんは何度も何度も首を横にふるだけだ。
リリィさんの気持ちがあまりにも痛くて、つられて僕も涙が出てくる。どうしていいのか判らず、僕もリリィさんを抱きしめ返すしか出来なかった。
◇ ◇ ◇
リリィさんと手を繋ぎながらゆっくりゆっくり歩く。
チョコボキャリッジの運転手さんとおじいさん、おばあさんは、リリィさんが連絡してやってきた不滅隊の人に引き渡した。
どちらも『イチメイはトリトメタ』、と言われた。多分、死ななかったってことだと思う。
ずっと沈黙だ。
何か話しかけようと思ってリリィさんを見るけれど、落ち込んでいるようなその表情に黙ってしまう。
やがて、リリィさんの足が止まった。
「バンビナ君…。助けてくれて、ありがとう」
でも…人を殺させて、しまった…
消え入りそうな声のあと、リリィさんの肩が落ちるのが判った。
人を殺した。
そう言われて僕は自分の両手を見下ろす。
風の音が通り過ぎていく。
「…僕、冒険者になるんだよ」
抑揚のない僕の声に、リリィさんが静かに顔を上げる。頭に巡るドライボーンの夜。
「沢山、奪われて、死んだ人たちを見てきたよ」
カタカタと手が震えてきたのは、今になってから恐くなっただけなのかもしれない。僕は震えないようにぎゅっと強く手を握り締めた。
泣いているおばあちゃんの声が頭の中で響く。
「…みんな…いつか一緒に笑えるかな」
リリィさんが駆け寄ってきて、また僕を強く抱きしめた。
大粒の涙が、また僕の頬を伝っていった。
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リリィさんにはまた登場していただく予定なので、今回SSがないまま上げました。
4000文字を超えているのでここまで読んでくれた人ありがとう…
もっと簡潔にします;