第四話「ビギナーな日常と脅威襲来?」私は部屋で考えていた。
前回の蛮神タイタン戦の時、アスちゃんを守る為に発動したあの光の翼は何だったんだろうか。あれから何度か同じものを出そうと試みたが、一度も出すことは出来なかった。
何か条件が必要なのだろうか。
あの時の状況から推察するに、それは護りたいという強い願いと想いかも知れない。
光の翼を使いこなせる様になれば、二人を守る要の力にもなるし、何より二人の役に立つ事が出来る。
私にはトンちゃんの様な圧倒的な攻撃力も無ければ、アスちゃんの様な応用力も無い。
だからこそ、あの光の羽を使いこなせる様にしたい。
しかし、あの時のタイタンの凶暴化は何が起きたんだろう。
そして、直前に頭の中に響いたあの声は誰のものだったんだ。
それに、タイタンに止めを刺したトンちゃんの様子も尋常では無かった。
私達を命の危険に追い込んだ怒りなのは分かるが、それだけではない気がする。
‥今は色々気になる事が多いけど、先ずは戦いの力になれる様に光の翼からどうにかするのが先決かな。
背後にふと感じる気配。私は嫌な予感がして、左に身体をずらした。
その瞬間右側に通り過ぎる風と拳。
「姉さまっ!よく避けたね♪」聞こえた声で誰の仕業かは分かったが、くらった時の自分を想像して私は静かに震えた、そして我ながら良い感だ。
「お姉様、今日はトンちゃんと二人で一日に出掛けてきます」
既にお出掛けの支度を整えたアスちゃんが、嬉しそうに話しかけてきた。
よく考えればこの二人、普段は冒険者ギルドからなどの依頼も沢山こなしており、年頃の女の子なのに楽しむ暇など微塵も無かったであろう。
それならば、たまの休日位は思い切り羽を伸ばしてほしい。
「それでは、夕方頃に例の場所で落ち合いましょう、行ってきます」「うん、二人共気を付けて行ってらっしゃい!」
実は、アスちゃんから事前に落合う場所を指定されているのだが、あそこ何かあったかな?
などと疑問はあるが、満面の笑みで送り出すのがこの場での姉の務め、そう思い笑顔で二人を見送ることにした。
「さて、久しぶりに二人でノンビリとお出掛けだね、トンちゃんは何処から遊びに行きたい?」
指を豪快に天に突き刺し、自信満々にトンが答える。
「それはもちろん‥腹ごしらえから!!」「だね、それじゃ久しぶりにリムサの美味しい魚介料理が食べられる人気のお店に行こうか♪」
「やったー!!」
こうして二人は先ず、リムサロミンサにある有名レストランへと向ったのであった。
チョコボでの移動も良いが、こんな時は優雅に飛空艇での移動がこの世界でのセオリーだ。
二人も多分に漏れず空の上で乙女話に華を添えながら最初の目的地に辿り着いた。
そこはエオルゼアでも随一と言われるレストランビスマルク、誰もが知る有名店中の有名店だ。
席に着くと空かさず、ウエイターが気品漂う出で立ちで二人をもてなした。
「いらっしゃいませ、当レストランスビスマルクのご利用ありがとうございます、良ければご注文を伺わせて頂きますが、いかが致しましょう」
流石は一流すら唸るレストランの接客と言える丁寧な案内を促す。
「私はこれとこれにしようかな、トンちゃんはどうする?」
アスが目を輝かせメニューにかじりついているトンにバトンを渡す。
「このメニューに載ってやつ全部食べる!!」それを聞いた一流のウエイターが唖然として聞き直す。
「お客様、全部となりますととても女性が平らげられる量では到底ありませんが‥ほ、本気でしょうか?」
「全部食べる!!」
トンの目は本気だ。本気と書いてマジだ。
一流ウエイターはその迫力に気圧される。
「トンちゃんOK!そんな訳で、全部のメニュー注文でお願いします」
それを聞いて口をパクパク開いたウエイターが慌てて注文のオーダーをとる。
「か、かしこまりました!全メニューお持ちいたします!」
何処か疲れた表情に見えたが無事に仕事をこなすあたりは、流石一レストランのウエイターだ。
一気に厨房が慌ただしくなるが、そこはプロ。
さして時間も掛けず全メニューをテーブルの上に瞬く間に用意してみせた。
まるで宝石でも見るような瞳で、目の前の光景に見惚れるトン。
因みにヨダレが滝のように垂れそうな勢いであった。
「それじゃ、いただきましょうか♪」
「やったーー!それじゃいただきまーーす!」
待てを解除された大型猛獣のような勢いで、トンが極上の料理と言う名の獲物にかぶり付く。その勢いたるや、周りのお客様全員を圧倒する程の食いっぷりで、皆の視線はトンの食事風景の豪快さに釘付け。
横でアスは黙々と頼んだ料理をニコニコしながら楽しんでいた。
あれ程机の上に並んでいた筈の料理達が、あれよあれよと言う間にキレイに空になっていく。
そしてアスが最後のデザートをゆっくりと堪能し終えた時、一つの試合が終わった。
「あー、美味しかった!ごちそうさまでした!」
机の上に広がる空の皿とその見事なの食いっぷりに周りの客から、拍手が沸いた。
「トンちゃん、次はどこに行く?」
「美味しいものを沢山食べた後は〜、遊びたい!!」
「分かったわ、それじゃ次はゴールドソーサーにいきましょう♪」
「あっ!でもその前に何か甘いもの食べたい!」
可愛いミコッテの皮を被った底なしの食欲魔神がここに居た。「ふふ、それじゃアイスクリームを買ってから向かいましょう」
「やったー!」
再び飛空艇に乗車して二人が向かう先は‥砂漠のオアシスにして、遊戯と欲望の都ゴールドソーサー。
見るもの全てが綺羅びやか、砂漠にあるとは思えない豪華絢爛な外見に設備の数々、エオルゼア全土から足繁く通う人達が多いのも納得である。
アスが、トリプルトライアドカードでチャンピオンを顔色一つ変えず涼し気な顔で下したり。
トンが、観戦していたチョコボレースに乱入して優勝候補のチョコボをゴール前で抜いてなんと優勝、観客からの拍手喝采と係員から注意を受けてアスが謝っていたり。
ジャンピングアスレチックの難関コースを二人の華麗なジャンプと足さばきで目隠ししながらも、いとも簡単にクリアして周りを沸かせたり。
一閃! 斬魔・デ・三昧ではアスが、迫りくるヨウジンボウの攻撃を自慢のニャンコバリアで防いで逆に返り討ちにして、バタンキューするヨウジンボウを尻目に係員に怒られて舌をぺろりと出したり。
ありとあらゆるゲームを二人なりの方法でこれでもかと満喫していた。
「アスちゃん、最後にこれで遊ばせて!」次に挑むは、クリスタルタワーストライカー。
左から右へと動くゲージを右の端の決められたエリアで止めて、ハンマーで台を叩きサボテンダーを高く飛ばすことができればゲームクリアだ。
「ウニャ〜!」
だが、この精密を必要とするゲームどうやらトンには向いていなかった様で、何度やろうとも狙ったかの様に高得点ポイントから外れ、徐々に苛立ちが募る。
「トンちゃん、そろそろ終わりにして次の場所に移動しよう?」
「お願い、最後に一回だけやらせて!ねっ?ねっ?」
お願いのポーズでアスに可愛くおねだりするトン。
「分かった、それじゃ次で最後だからね」
「ありがとう!アスちゃん大好き♪」
すると次の瞬間斧を取り出すトン。それをニコニコ見守るアス。
「私を馬鹿にして、私の本気を見せてやるんだから!」
物言わないゲームを相手にどうやら本気モードの様だ。
斧を構え力を極限まで高める。
それを横からワクワクした目で優しく見守るアス。
「ウニャアアアア!」
どうやら臨界点まで力が溜まったようだ。
「必殺トンブレイクッ!!」渾身の力で担いだ斧を台に叩き下ろす。
"ゴゴゴゴゴゴッ"ゴールドソーサー館内に響き渡る轟音と振動。
縦に真っ二つに割れるゲーム機、粉々に散らばったサボテンダー、見ればあたり一面にクレーターが出来上がっていた。
満足そうに額の汗を拭う破壊神ことビギナー・トン。
「アスちゃん、ありがとう!これで満足した!」
けたたましい警報が鳴り響き、遠くから警備員が駆けつけて来るのが見える。
「トンちゃん‥逃げるよ」
「そうだね、逃げよう〜♪」
お互いに手を取った瞬間、即座に凄まじいスピードでその場から立ち去る二人。
‥これが歩く災害とまで言わしめた、ツインメテオの由来であろうか。
その後ろには頭を抱えた支配人ぽい人の姿が見えた。
‥支配人、南無。次に向かうは、交易都市国家である砂漠の都ウルダハ。
ここには世界中のありとあらゆる品々が揃っている。
日常品から珍しいもの、そして裏取り引きでしか手に入らないもの、大概の品はここに来れば揃う。
表の顔も裏の顔、その両方を備えた都市なのである。
ここぞとばかりに普段購入出来ない女子アイテムを買い漁り始める二人。
先ずはブティックに行き、欲しい服を片っ端から試着して、ほぼ購入した。
サファイアアベニュー国際市場は路上に沢山の出店が並び常に活気に満ち溢れていた。
多分に漏れず、棚に並ぶかずかずの可愛らしいアクセサリーにメロメロな二人。
こうしている分には、その辺りに居る年頃の女の子達となんら変わりはない。
しかし、ここは治安の悪さも兼ね揃えた場所。
買い物に熱中する二人を見定める悪の魔の手が迫っていた。
背後から忍び寄る何者かが、すれ違いざまにトンのポケットからお財布をすって逃げようとした。
「お嬢ちゃん達ありがとうよ、今日はこれで酒盛りさせてもらうぜ!」
チンピラ風の男が笑顔で逃げ去ろうとするが、相手が悪すぎた。
トンがその場から跳躍し、なんとひとっ飛びでチンピラの前に着地。何が起きたのか理解できないチンピラは唖然として尻もちをついた。
「な、何なんだお前!?ヤロウってか!こっちには獲物があるんだぜ」
そう言って腰から取り出した自慢のナイフが一瞬のうちに砕け散った。
「えっ!?」
目に見えない速さで、トンの拳が砕いた様だ。
「今日は機嫌が良いから、今なら目をつぶって見逃してあげるけど、どうする?」獲物を見つめる強者の眼光がチンピラの心をあっさりと砕いた。
「ひぃいいいい、化け物だ命のだけはお助けを!」
チンピラはテンプレの様な捨て台詞とお財布を捨てて一目散にその場から逃げていった。
「んっ!?バケモノ?この超プリティーで可憐なトンちゃんに向かってなんて酷いことをっ!」
トンは財布をすられた事よりも、ナイフを向けられた事よりも、化け物という単語の方だけを気にしていた。
末恐ろしい光の戦士だ。
「トンちゃん、欲しいもの沢山買えた?」
「うん!可愛いの全部買っちゃった!」
ホクホクの笑みでアスに答える。
「良かった、‥さてと、それじゃあの場所に行こうか」トンはいつの間にか真顔に戻っていた。
「うん、会いに行こう」
ウルダハから遠くない、ある場所に二人は来ていた。
「お久しぶりです、元気にしてましたか?」「私達は元気だったよ!」
「これはプレゼントです、この色の好きだと思ったので買ってきました」
「そういえば、ルビルビ姉さまって私達のお姉ちゃんに出会ったんだよ、この人がまたね‥」
嬉しそうに二人が話しかけている。
そんな二人の前に居た‥いや、あったのは一つのお墓だった。
「あの方は自分の身を危険にさらしても私達の命を守ろうとしてくれたんですよ、お姉様。」
「まるでリリーお姉ちゃんと一緒だよね!まあ‥、まだまだ実力はお姉ちゃんには敵わないだろうけどね」
どうやらここには元二人が姉と慕う人物が眠っているようだ。
ふと、トンの身体が小刻みに震えだした。
「‥お姉ちゃん、どうして私達を残して死んじゃったの‥」風が吹く中でトンは泣いていた。
「トンちゃん、リリーナお姉様を困らせちゃ駄目だよ、‥でも、私も叶うのならお姉様にまた会いたいです‥」
そう言うアスもとても悲しそうな顔をしていた。
悲しみを含んだ湿っぽい空気が辺りに流れる。
「お姉ちゃん、困らせてゴメンね‥私もう大丈夫だから‥」
「ルビーお姉様にも、リリーナお姉様の事を知ってもらう為にここに呼んであります、もうじき来られると思うので、その時改めてご挨拶させてもらいますね」
「ねえ、あんた、何時まで私達を見ているつもりなの」急にトンが誰に言うでも無くその場で言葉を発した。
「貴方、それで隠れているつもりなのかも知れませんが、私達に対する殺意がダダ漏れでバレバレなんですよね」
続いてアスもその場の空間に言葉を放った。
‥なんだ、気がついていたのか、ならご挨拶しないといけないね‥声は二人の脳に響きてきた。
‥まあ、君達とは知らない仲では無いのだがね‥
急に辺りの大気が震える感じがした、近くの木々に止まった鳥達は飛び立ち、重苦しくも冷たい空気が周囲を包み込む。
突如、その場に開く闇の空間と小さなゲート。
ゆっくりとその存在はそこから現れた。
頭からすっぽりと被ったフードとローブ、顔は仮面で見えない、しかし分かる。
出で立ちを見た瞬間に感じる禍々しさ、悪意を形にしたらこんな感じになるのかも知れない、そんな佇まいのそれが二人の目の前に顕現した。その姿を見て息を呑む二人。
「いや〜、待たせたね、隠れて見てるなんてボクの柄じゃ無いんだけど、こう見えてシャイなもんでね‥、ここ冗談だから笑う所だよ?」
現れたそれは、軽快にまるで旧友にでも語り掛ける様な親しさで話していた。
異質な存在に二人は自然と身構えていた。
何を言わなくても分かる事がある、目の前に現れたコイツがヤバい存在だという事を。
幾度となく死線を潜り抜けてきたアスとトンは肌で感じていた、しかしそれ以外にも引っ掛かる事がある。
コイツ何処かで会った気が‥
「えっえっ、二人共もしかしてボクの事忘れちゃったの?かーっ、これはショックだなぁ、あんなに仲良くしていたのに‥まあ前と姿違うから当然と言えば当然なのかな?」
オーバーなリアクションでソイツが楽しそうに頭を抱えてショックなフリを二人に見せつける。
「あんた‥誰なのっ!!」最上級の警戒心を持ったままトンが話し掛ける。
「まあ、忘れちゃったなら仕方ないなぁ、それじゃ改めて素適なレディー達に挨拶させてもらうね!」
大きく息を吸込み、その存在が顔一杯の極上の笑みを浮かべてこう答えた。
「ボクは闇の使徒アシエン、アシエンのマリシャス、そして~なんと…君達の大好きだったお姉ちゃんを殺した者だよん♪」アシエンのマリシャスと名乗るそれの言葉により、満ちる怒りとそれ以外の様々な感情が空間を支配していた。
その時、同時刻別の場所にて。
「私もノンビリ過ごしていたら少し遅れちゃった、二人共首を長くして待っているかな?」ニッコリ笑う私はこの時知る由もなかった、この後直面する事になる、真の闇と姉妹の真実に。
〜続く〜■FF14外伝 連続空想小説 最強最愛のビギナーズFF14の世界であるエオルゼアを舞台にしたビギナー姉妹とアクア・ルビーの物語。
1話~4話まで絶賛公開中!!
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各話こちらからご覧になれます■物語はここから始まったビギナー姉妹とアクア・ルビー鮮烈な出会いを記した第一話は下記リンクより
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最強最愛のビギナーズ 第一話「出会いからしてこの姉妹最強すぎる?」