自室のベットで横になりながらニアはあることを思い出していた。あれは何だったのか、夢か現実か、気がつけば真っ暗な所に立っている。
いや浮いていたのかもしれない、そして目の前にはとても大きなクリスタルが浮いている。
頭の中に響いて来る声、
(聞いて……感じて……考えて……)
あの不思議な体験の謎を解明したくてこっそり館を抜け出してはミュラーに小言を言われていた。
ダンジョンに行けば何かわかるかもしれないとミュラーに内緒で幻術師ギルドの門を叩いたのも統べては謎を説き明かす為。
ばれた時のミュラーの驚きと落胆した顔を今でも思い出してはクスッっと笑ってしまう。
真っ暗な空間でベットに横になりニアは瞼を閉じる、やがて室内には寝息だけがしていた
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「皆さん!もう目の前ですぞ!」
迫る敵を警戒しつつミュラーが更に叫ぶ
「こいつらを倒せば後はボスだけです!頑張りましょう!」
一同無言で頷く
剣術士のピピ、呪術士のケイ、槍術士のミュラー、幻術士のニア
今回はこのメンバーでダンジョンに来ている。ミュラーは敵と交戦しながら思う、ここにたどり着くまでよく全滅しなかったな。と。
辺りには鍔ぜり合いの高い金属音や呪文を詠唱する声、うめき声につつまれていく
「ふぅ~ 片付きましたな~」
最後の敵の胸に深々と刺さった槍を抜きながらミュラーが言うと、ドサッとララフェルの三人が地面に腰を落とした
「お疲れ様でしたー!」
「お疲れって・・・ピピさん、まだボスが残っていますよ?」
ミュラーとピピの会話でフフフっと笑うニア
「ねーねー ピピさん、もうちょっと敵を引き付けてくれない?ここまでなんとか来れたけど、次は雑魚相手にするのとはわけが違うよ」
ケイに続きミュラーが言う
「そうですね~ 攻撃の合間に敵視を上げる技とか、離れて行くやつにシールド投げるとかした方が良いですね」
「うん、ごめんよ、気をつけるよ、反省してる」
「ほう、鼻をほじりながら反省ですか」
鼻に指をあてたままミュラーを見上げると、口元をヒクヒクさせ、眉毛までピクピクさせている
ピピの背中に冷たいものが走り慌てて正座をして言う
「気をつけるよ~、けど私にはやっぱり盾は無理だよ~ 元々槍術士なんだし、 敵に囲まれてボカボカやられるの凄く怖いんだぞー」
「それでも男か!軟弱者!」
ケイが笑いながらピピの背中をポンと叩いた
「ま~、ピピさん、さっき私が言ったことを気にしながらやりましょう」
正座をしながら口を尖らせブーブー言うピピを横目で一瞥し、ミュラーはさりげなく視線をニアに向ける
クスクス笑ってはいるが、いつも頬がほんのり紅く色付いてるのに今はその色が無い
(少し急がねばなりませんね・・・)
ミュラーは槍を持つ手に力を込めた
ボス部屋に入ってどれぐらいの時間が経ったのだろうとミュラーは頭の隅で思う
四隅の穴の海水からは雑魚が飛び出して来る、それを阻止しようとケイに叫び、自分も走る
ピピも頑張ってはいるがやはり経験不足とセンスの無さに、ボスの攻撃を受け流すので精一杯だ
ニアは誰も死なせまいと必死に回復に専念している。
自分の身体から流れる血も気にしないまま
二匹の雑魚が湧きそれぞれが詠唱中ケイとニア奇声をあげながら向かって行く
「私は大丈夫!ニアちゃんを!!」
ケイが叫ぶと同時にミュラーが走り出す
ニアは目の前に迫ってい敵を睨みながら逃げようともしない、回復魔法の詠唱を続けている。
ついに敵の剣は大きく振りかぶられ、下ろされようとしている、
ニアは詠唱が終るとすっと目を閉じた
「うおおおぉぉぉぉ!」
ミュラーは雄叫びとともに走りながら渾身の力を込めて槍を突き出し敵の胴を横から貫いた。
止まらない、絶命した敵がそのまま剣を振り下ろさないようミュラーは身体ごとぶつかり屍と共に吹っ飛んで行った
ニアはミュラーのそばに駆け寄ると直ぐに回復させた
「何を考えているだ!もう少し私が遅れていればやられていたんだぞ!」
激昂するミュラーに勝とも劣らない眼差しでニアが言いきった
「自分が助かる為に誰かが犠牲になるのは後免です!」
「あの二人なら大丈夫!ほら!」
ミュラーが指差す方にニアは目を向け二人を見た
ケイは雑魚を処理し、ボスに向かってファイアを飛ばしつつウインクしてみせた
ピピは盾で攻撃を受けつつ剣を頭上高くかざした
「もっと・・もっと自分を大切にしてくださいお嬢様、貴女がやられれば、どの道PTは全滅します、皆の為にも、私の為にも・・・」
「はい」
ミュラーは優しくニアの頭に手を置き、微笑むニアを見て安堵の表情に戻る。
ミュラーとニアは目を再び戦っているだろう二人に向けると・・・ケイは新たに出現した雑魚2匹のタゲを取り走り回り、
ピピは片膝をつきながらなんとか持ちこたえていた
「おおお!何たること!今行きますぞ!!」
慌てて戦いに復帰するミュラーとニア
その姿を横目で見ていたピピは、昔読んだ絵本に出てきた戦いの中で戦いを忘れるどっかの髭親父と一緒だなと思っていた
何とかボスを倒す事に成功した四人。
最後のトドメはミュラーの放つ必殺の技リミットブレイクだった
「やりましたな!」
ふぅ~と息を吐くララフェルの三人
「ささ!館に帰りましょうか!」
にこやかに言うミュラーの横で膝から崩れ落ちそうになるニア
「お嬢様!」
「ニアちゃん!」
「ニアさん!」
ミュラーがニアの身体支え、心配そうに覗き込む三人
「大丈夫、ちょっと疲れただけ」
微笑むニアだが顔色が良くない
「早く、早く館に帰りましょう!」
こうして初めてのダンジョンを攻略した四人ではあったが、課題が残る結果となった
どうしたらお嬢様の負担を軽く出来るのかミュラーは考えた・・・あっさり気が付いた。
出した答えは、自分が盾となりどんな敵が来ようと敵視を維持し、誰もダメージを受けさせない。
一人を回復するだけならお嬢様の負担が軽くなる。はず。
「わたくしミュラーは!今日から戦士を目指します!!」
声高らかに宣言する黄金の執事だった
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初めて行ったダンジョンから数ヶ月経った今、執事筆頭にお嬢様、使用人達皆が冒険者として成長していた
ミュラーは戦士に、ニアは白魔導士に、ケイは黒魔導士に、イアンナはモンクに、ピピは竜騎士になっていた
ニアは以前見たクリスタルの謎も冒険をするうち理解して今では立派に役目をはたしている
ただ一つ、まだ謎が残っていた
あのラリガだ
ニアが勝手に付けた呼び名だが、館の者は皆そう呼んでいる
由来は、どうやら裸にサブリガを付けているので短縮しただけらしい
ニアが新種族を見つけたと言った時、誰も信じなかったのに、最近になって急展開をみせた
今は皆が認知している、それは全員目撃したからなのだ
1ヶ月前に1度、5日前に1度、それも決まってダンジョンの中でと限定された場所で。
最初はミュラー、ニア、イアンナ、ケイで行った時。
次がミュラー、ニア、ケイ、ピピで行った時だった。
ピンチになると決まって黄色い顔にサブリガ一枚のラリガ駆け付け鬼神の如く暴れ、戦斧でモンスターをなぎ倒していく
その姿を見ているとこちらも身震いするよほどだった
そして決まってミュラーが居ない
「30秒耐えて下さい!さっき行った部屋にまだポーションが有るはずです!」
一同が耳を疑うような事を叫びながら走り去っていく
ピピが`1 30!`と言ったら引き返して来て`おい!`と突っ込みを入れてから走り去った
2度目のケイは`また~~~~~~~~?`とつい叫んでしまった
危険を顧みず暴れ回るラリガを見ているとニアはある物語を思い出す
妖魔率いる軍勢と人々が戦いを繰り広げていた
その物語に出てくる怒りの精霊に取り憑かれた悲しき狂戦士
愛する人の危機に遭遇すると怒りの精霊に支配され、守るためにバーサーカーとなり暴れだす、
しかし理性も無くなるため愛する人さえも危険な目に遭わせてしまう
そんな自分がいやで、怒りの精霊を疎ましく思っていた
あることを切っ掛けに怒りの精霊から開放させるが、自分自身と、一緒に旅をしている愛する人に最大の危機が訪れる
このままでは愛する人が絶対死んでしまう、そう思えるほどの絶望的な戦い
戦士は自ら怒りの精霊に呼びかけるのだ
もう1度・・・力を・・・と。
すると戦士は再びバーサーカーとなったのだ、しかし少し違っていた、理性を残したままだった
戦いのさなか狂戦士は傷を負ってしまう、肩から入った剣は胸で止まり致命傷を受けてしまった
それでも戦い続け、愛する人を守り抜いて力尽きた、胸にまで達している剣をそのままに立ったまま絶命してしまう
そんな悲しい物語を思い出してニアは切なくなって来るのだった。
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ミュラー達一行はダンジョンの入り口に立っていた
「今日はあまり難しくないダンジョンですので気楽にいきましょ!」
「ここなら楽勝だね」
ミュラーに続きイアンナが皆に声をかける
今回のメンバーはミュラー、イアンナ、ケイ、ニアである
突入前に言っていた通り難なく進んでいく
時折ミュラーは首をかしげていたがあっさりボス部屋前に到着した一行は一息入れることにした
「今頃ピピさんは何してるんだろうね~」
「つれてけーって騒いでたもんね~」
「庭で木人相手に戦ってるかも」
「たぶん、鼻ほじりながらふて寝してますな!鼻の穴無いくせに!!」
イアンナ、ケイ、ニア、ミュラーは笑いながら武器の手入れをしている
これから自分達に何が起こるかも知らずに・・・
「さて そろそろ行きますか!」
「おおー!」
ミュラーの問いに声を上げる3人
ゆっくりとボス部屋に入っていく 真ん中には緑色の大きな身体に包丁を持ったモンスターが
待ち構えていた
「こいつとやるのは何回目だろうね」
「数え切れない」
イアンナとケイの会話にミュラーとニアもうなずいている
「さあ! 行きますぞ!」
ミュラーのかけ声と主に走り出す4人
ボスにあらん限りの攻撃を仕掛けるミュラーは違和感を抱いていた
(何かおかしい・・・・)
いつもは簡単に取れる敵視がなかなか安定しない
周りにわく雑魚はケイが焼いていく イアンナも攻撃の手を緩めずどんどんボスのHPを削っていく
しかし敵視が安定しない為、時折ボスの大技がイアンナを襲い戦闘不能にする
そのたびにニアは急いで回復を繰り返していた
「ちょっ!ミュラーさんしっかりして!」
ケイの叫び声が聞こえる
イアンナも異常を感じたのだが攻撃を手を止める訳にはいかないとわかっている
最悪自分が死んでもボスを道連れにする覚悟で攻め続ける、イアンナの目がますます光を帯びていく
やってる、ミュラーはボスの敵視を稼ぐ為にあらん限りの技を繰り出している
でもダメなのだ、どうしても安定しない
「どうなってんだ!」
焦るミュラーは魂が震えるほどの叫び声を上げた
どんどん疲弊していく仲間達、全滅の二文字がミュラーの頭に浮かんでくる
(このままでは・・・しかしここはボスの部屋・・・何処にも行けない・・・・本来の自分の姿にさえなれれば・・)
ついに雑魚の周りに雑魚より一回り大きいモンスターがわいてしまった
「まずい これはマジでまずい」
ミュラーはボスに攻撃しながらまだ迷っている
ケイが叫ぶ
「イアンナさん!溜まったよ!!」
その言葉が終わる前にイアンナが必殺技のリミットブレイクを発動させた
「頼む!削りきってくれー!ブレェェェードダァァーーーンス!!!!」
皆が見つめる中目映い光と共に技が決まる
だが削りきる事は出来なかった
イアンナは片膝をつき肩で大きく息をしている
ケイはニアに向かう雑魚を必死に焼いている
ニアはすでにMPが枯渇し迫り来る敵を見ながら後ずさりしている
敵の包囲がじわじわ縮まって行く中、ニアが叫んだ
「ミュラーさん!どうして変身しないの!みんな死んじゃうよ!!!」
ボスに攻撃していたミュラーの手が止まった
「え?!」(しってんのかよ~~~~)
光に包まれていくミュラーの頬に光る物があった
(おおおおおおおおおおおおおおおおお!)
ラリガが3人の目の前に現れた、と同時にボスに襲いかかる
凄まじいの一言では表せないほどの猛攻が始まった
ボスの大技がラリガの腹を直撃するが手を止めない戦斧を振り回し続ける、
ボスが狙いを変えニアに近づき包丁を振るう瞬間、間に入りニアを抱きしめその攻撃を背中で止める
ミュラーは振り向きニアが逃れるまで戦斧を振るうわけにはいかないので防戦一方になり
少しずつ身体が刻まれていく、しかしミュラーはひるまなかった、
ニアが離れたのを確認すると直ぐに攻撃に転じる、正に鬼神が如く攻撃は続いていく
やがてボスは静かに倒れて動かなくなりパット四散して消えていった
「ふっか~」(勝った~)
ミュラーは部屋の天井を見透かし空を見上げるように天を仰いだ
こうして4人は無事ダンジョンから生還出来たのだった
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ニアが歩く後ろを執事のミュラーが歩いている
「ミュラーさん、傷はもう大丈夫なんですか?」
「ええ! あんなの怪我の内に入りませんから!」
答えてからしばしの沈黙が流れる
ミュラーは気になっていること聞こうかやめようか迷っていたが思い切って聞くことにした
「あ、あの~ いつから気が付いていたんですか?」
静かに、もじもじしながらニアに聞いた
「ふふふ 秘密です」
正直なところ、ぼけてるのか、天然なのかニアも返答に困ったのだ
はぁ~っとため息と一つ付くミュラーにニアが言った
「いつも守ってくれてありがとう、私の為にいっぱい無理してきたんだね、
背中の傷はこの前のダンジョンで 肩の傷はその前、腕の傷はその前の前
ミュラーさん体中の傷は全てわかってるよ、ラリガを4回見てるからね フフフ」
「お嬢様・・・・」
ミュラーはここ数ヶ月、執事とお嬢様、仲間という感情の他にある感情をニアに抱いていた
ニアも同じように思っていたのだが、お互い気が付かないふりをしていたのかもしれない
ミュラーが意を決したようにニアの前に回り込んだ
「お、お嬢様!わ、わ、わ、わ」
ニアはきょとんとした表情で首をかしげてミュラーを見上げる
「すみません!私本来の姿になります」
ニアの目の前にあらくれマスク被りサブリガ姿になったミュラーが現れた
「ふがーふが・・・」
「フフフ ミュラーさん何言ってるかわかりませんよ?」
ニアの言葉に慌ててマスクをずらし口を出した
「お嬢様・・・いや、ニアさん!わたぁしとエターナルバンドしてくたさい」
「みゃらーさん声が裏返ってオマケに噛みましたよフフフ」
ミュラーは直立不動のまま動かない
ニアが続ける
「後悔しません?わたしネガティブだし・・・」
「知ってます!」
「はい」
これまで以上に可愛い笑顔で返事をしたニアを優しい眼差しで包み込んでいるミュラー
こうしてミュラーとニアという素敵なカップルが誕生した
一方屋敷では
「このあいだのダンジョン大変だったね~」
「もうダメかと思ったね~」
ケイとイアンナがお茶を飲みながら話しているそこにピピが加わり話し出した
「大変だったみたいだね~、ミュラーさんの装備洗濯してるのに行っちゃうんだもん
よくイダのミラプリ用の装備で皆帰ってこれたよね~、
私が用意してなかったら裸で行くとこだよ」
「ピピさんその話ミュラーさんには内緒にしときな」
イアンナがそう言った後、ケイが笑い出した
イアンナとケイはピピの不思議そうな顔を見てさらに笑い声を上げた
その笑い声はいつまでも館の中に響き渡っていた
完
長くなってしまった Orz
でも結構端折っちゃった、考えてたこと全部詰め込むと終わらない気がしてw
つじつまが合わない所とかあるけど気にしないで!
それと知る人ぞ知るあの物語の一部を出しちゃったけど許して!どうしても使いたかったのです
長々読んで下さった方ありがとう御座いました!
みゅらさんにあさん
おめでとー ヽ(´▽`)ノワッ・ショーーーイ
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